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認知症用薬の低用量長期投与は事実上認められてはいる(副作用防止目的)が、低用量のままで効果が実証されてるわけではない。

 2020年5月現在、日本で使用されている内服の認知症用薬は以下の4種
 【アセチルコリンエステラーゼ阻害薬】
  ・ドネペジル塩酸塩
  ・ガランタミン臭化水素酸塩
  ・リバスチグミン
 【NMDA受容体拮抗薬】
  ・メマンチン塩酸塩

 いずれの薬剤も、副作用発現防止の目的で「低用量から開始し、維持量まで増量する」という飲み方をする。
 下図は各薬剤の添付文書から抜粋した用法用量の記載内容。

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 高用量投与は以前から、興奮や歩行障害、飲み込み障害などの副作用が出て、介護が困難になると医師らのグループから指摘されていた。
 それを受けて2016年6月1日より、副作用軽減の目的で低用量での維持療法が認められ、「使用上の注意」もしくは「用法及び用量に関連する注意」の記載内容として、
 「低用量は有効用量ではないので原則として維持量まで増量すること」
という旨の文言となった(詳細は下図参照)。
 2016年5月まではこの「原則として」という文言がなかった。

【使用上の注意 or 用法及び用量に関連する注意】

<ドネペジル>
 3 mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として 1 ~ 2 週間を超えて使用しないこと。

<リバスチグミン>
 1日1回9mgより投与を開始し、原則として4週後に1日1回18mgまで増量する投与方法については、副作用(特に、消化器系障害(悪心、嘔吐等))の発現を考慮し、本剤の忍容性が良好と考えられる場合に当該漸増法での投与の可否を判断すること。

<ガランタミン>
1日8mg投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として4週間を超えて使用しないこと。

<メマンチン>
1日1回5mgからの漸増投与は、副作用の発現を抑える目的であるので、維持量まで増量すること。

 この「原則として」の文言があるから、低用量で長期間投与を継続しても保険上は問題なくなった。
 ただし、薬歴等に「副作用軽減のため」などの記録は必要だろう。

 メマンチンだけは、2016年6月以降も「原則として」の文言がないので、1日5㎎のまま長期投与すると保険で切られるかもしれない。
 しかし同時に、添付文書には「5㎎は有効用量ではない」という旨の記載も実はない・・・よって、定期的なHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)等で点数が下がらないのを確認していれば、低用量での継続も可能かもしれない。

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。