見出し画像

アダラート“L”と“CR”、なぜ「除放錠」が 2 種類あるのか

 「L錠」の用法は 1 日 2 回。それを改善して分1にしたのが 「CR錠」 なのだが、モーニングサージを抑えるため CR 錠の分 2 服用が定例化してきている。
 ・・・となると、L錠の存在価値は??

 元々、ニフェジピンそのものは代謝が早く、服用後 3~4時間(t1/2=約 2hr)で体内からほぼ消失する。
 それを除放化して t1/2 を約 4hr 弱まで引き伸ばしたのが L 錠、さらに特殊な二層除放製剤にして血中濃度を 24 時間ほぼ一定にした(t1/2 なし)のが CR 錠である。

 ニフェジピン単体や L 錠では腎輸入再動脈は拡張できても輸出再動脈の拡張は出来ず、結果腎うっ血を引き起こしやすかったが、CR は輸出再動脈も拡張することが確認(※1)され、腎保護作用が期待できる。
 また、CR は他の Ca ブロッカーと比して尿中アルブミン排泄量を抑えることも分かっており(※2)、その面からも腎保護作用が期待できる。
    CKD 概念の普及などもあり、臨床ではCR が好まれて使われるようになりつつある。

    腎保護目的でアダラート CR を 2×投与するのは 1 日 40mg までなら可能(添付文書に記載あり)。
    腎性高血圧の用法用量は「1 日 20~40mg を 1 日 1 回」と添付文書に記載されている。“漸次増量”とも書かれているが。本態性高血圧なら、1 回 40mg で 1 日 2 回まで投与可能(添付文書より)(2017/08/17)。モーニングサージにも良く効く。

    メーカー側は特に添付文書に手を加える予定は無いとのこと(2010 年 9 月現在)。

 L錠の利点は・・・?薬価は若干CR錠よりは安い。
 L錠10㎎は13.8円/錠、L錠20㎎は14.5円/錠、CR錠10㎎は14.8円/錠。CR錠20㎎は25.4円/錠なので、CR錠、L錠ともに1日2錠飲むとするとL錠の方が安いが、CR錠を添付文書通り1日1錠とするとL錠の方が高くなってしまう。
 もはや以前から服用している患者のみが使用するという時代に入っているのかもしれない。

※1 Hasebe,N.et al.:J.Hypertens., 23:445-453,2005
※2 Suzuki N.,KimuraK:Ther.Res.,19:2611-2615,1998

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。