見出し画像

透析の基礎知識を分かる範囲でまとめてみる

 まずは略語から
 ・HD(hemodialysis):血液透析
 ・HF(hemofiltration):(加圧)ろ過
 ・RRT(Renal Replacement Therapy):腎代替療法
  〇CRRT(Continuous RRT):持続的(24hr)腎代替療法
   ☆CHD(Continuous HD):持続的血液透析
   ☆CHF(Continuous HF):持続的血液ろ過
   ☆CHDF(Continuous Hemodiafiltration):持続的ろ過透析
   ☆PD(peritoneal dialysis):腹膜透析
  〇IRRT(Intermittent RRT):間歇的腎代替療法(週3回するやつ)
   ☆IHD(Intermittent HD):間歇的血液透析
   ☆IHF(Intermittent HF):間歇的血液ろ過
   ☆HDF(Hemodiafiltration):血液ろ過透析

 HDは物質の拡散(diffusion)現象を利用したもの、HFは加圧もしくは減圧してHDより強めににろ過するイメージ。
 よって、HDは小分子(BUN、クレアチニン、尿酸など)しか除去できないのに対し、HFは小分子に加えて中分子(ミオグロブリン、尿毒素等の蛋白質)の除去可能。
 しかし、逆に言えばFiltrationが関与する透析では、除去したくないアルブミンや一部の抗生物質などまで除去されてしまうデメリットはある。

画像1

画像2

 ただし、HFは加圧によって血中の水分も除去されるから、相当量の補充液が必要になる。
 上図のように、HDでは透析液はダイアライザーの中に入ってる(で、廃液として出ていく)が、HFでは補充液はダイアライザーの後の経路(前の場合もある)に挿入されているのが分かる。HFでは廃液となるのは主に血液中の水分ということになる。

 Intermittentでは1回の透析を3~4hrで終わらすので、体内水分量の増減が激しくなる。しかしContinuousでは24hrかけてゆっくり透析するので、血流量(80~120mL/min)や透析液流量(500~2,000mL/hr)などを低く設定できて、体内循環量への影響が少ない。
 つまり、低血圧体質の人や重度の循環器疾患がある人には、IntermittentよりContinuousな透析の方が適している。

 そして、今はHDとHF双方の利点を生かしたHDFが主流かと思われる(下図参照)。
 この場合も、血圧が低めの患者などには、CHDFが選択されることがおおい。

画像3

 透析中の低血圧を防止するため、高ナトリウム透析(透析液中のNa濃度を145mEq/L以上にする)や低温透析、長時間透析や連日透析というような手法なども用いられることがある。

 ろ過膜(ヘモフィルター)には、下図のような3種類が主に用いられている。
 ※AN69(アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜)はアナフィラキシー発現のためACE阻害薬との併用は禁忌となっている。

画像4

 ヘモフィルターといえば、目詰まりによって起こる「入口圧(動脈圧)」異常・・・(液圧)上限アラームやTMP(膜間圧力差)アラームを知っておく必要がある。
 目詰まりの原因は主にタンパク質なので、主にHFやHDFでの話。
 フィルターが目詰まりすると、ダイアライザー内の血流が滞り始め、ダイアライザーの上流のチャンバーに取り付けられている「入口圧(動脈圧)センサー」のアラームがなる。これが上限アラーム。
 カルテには、「入口圧高め」などと記載されていることあり。

画像5

 フィルターの目詰まり防止のために、ナファモスタット(コアヒビター®)や低分子ヘパリンなどの抗凝固薬をち注入することがある。
 ナファモスタットは膵炎に使われる薬だが、タンパク分解作用を利用してフィルターの目詰まり防止にも使う(保険適応あり)。
 

【参考】透析療法(HDとHDF,CHD,CHDFなど) 岡田 浩一
    重症患者における急性肝不全・急性腎障害・代謝異常
    CRRT回路・血液系圧アラームを理解しよう
    CHDF施行患者の看護

いいなと思ったら応援しよう!

薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志
仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。