PGT-Aの利用: ASRM, SARTの見解


論文

Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine and the Society for Assisted Reproductive Technology. Electronic address: jhayes@asrm.org. The use of preimplantation genetic testing for aneuploidy: a committee opinion. Fertil Steril. 2024 May 18:S0015-0282(24)00241-3.

概要

アメリカではPGT-Aの使用が増加し、全染色体解析技術も進化していますが、全ての体外受精患者に対する一般的なスクリーニング検査としての価値は証明されていません。初期の研究では出生率向上や多胎妊娠の減少が報告されましたが、最近の試験では従来のIVFと同様の結果が報告されています。PGT-Aの効果の検証には、より広範囲な患者選択と経験豊富なセンターでの実施が必要です。またPGT-Aのその他の課題として、PGT-Aによる費用対効果やモザイク胚移植、偽陽性結果、胚損傷リスク、凍結保存の影響、妊娠までの期間、反復流産,着床不全,高齢妊娠など特定のサブグループへの有用性、性別の報告などがあり、さらなる研究が必要です。など多くの課題が残ります。現時点では、すべての不妊治療患者に対するルーチン検査としての使用は推奨されていません。この論文は、2018年に発行された同名の論文の改訂版です。

CLINICAL OUTCOMES IN FAVORABLE-PROGNOSIS PATIENTS: 予後良好な患者

予後良好な患者に対してPGT-Aの効果について検証した報告はいくつかあります。その中で2つの有名なRCT論文を紹介します。2019年のSTAR試験では、34のクリニックで25~40歳の661人(PGT-A : Non-PGT-A = 330 : 331)を対象に行われ、全体の胚移植あたりの妊娠継続率には2群間で差は見られませんでした(PGT-A : Non-PGT-A = 50% : 46%)。
2021年の中国の多施設RCT研究では、良好な胚盤胞を3個以上持つ20~37歳の1212人(PGT-A : Non-PGT-A = 606 : 606)を対象に行われ、1年の間に最大で3回の胚移植の結果、PGT-A群では468例(77.2%)、Non-PGT-A群では496例(81.8%)で生児が誕生し、PGT-Aグループの累積生児出生率がわずかに低い結果となりました。注意すべき事項として、この論文での患者の平均年齢は若く、PGT-A群では29.1歳でした。
結論として、PGT-Aは高齢女性など特定の状況で妊娠率や出産率を改善する可能性がありますが、全ての患者に対して普遍的に有益であるという証拠は限られており、さらなる高品質なRCTと広範なデータが必要です。

Advanced maternal age: 母親の高年齢患者

上述の研究は、若年または良好な卵巣予備能を持つ患者を対象に行われたため、年齢による層別分析はほとんど行われていませんでした。
しかし、上記のSTAR試験を詳細に解析しますと、35~40歳の女性に限定すると、PGT-A群で妊娠継続率が有意に高くなりました(PGT-A : Non-PGT-A = 51% : 37%)。PGT-A群と Non-PGT-A群とで、着床率はそれぞれ <35歳 62.7% : 54%、35-37歳 60.7% : 44.9%、38-40歳 59.5%:30.0%、41-42歳 56.1%:17.9%、>43歳 53.7% : 7.4%でした。また流産率はそれぞれ<35歳 11.2%:15.4%、35-36歳 13.0%:20.3%、38-40歳 13.6%:27.7%、41-42歳 13.9%:37.9%、>43歳 18.3%:51.5%でした。PGT-Aの使用は、特に高年齢層において、着床率の上昇と流産率の低下と関連していることが判明しました。
他にもRCTや後ろ向き研究が行われ、高齢の女性患者に対してPGT-Aが有効である報告が見られますが、サンプルのサイズの問題や、PGT-A群にはPGT-A可能な良好な胚盤胞が得られる患者が集積しているかも、PGT-A群の患者は移植率が低く、そのため結果に影響しているかも、最終的な累積出生率に差は見られなかった、などのデータがあり、PGT-Aは高齢の女性患者、特に良好な卵巣予備能を持つ患者に有益な役割を果たす可能性がありますが、さらなる高品質のRCTと広範なデータが必要です。

Use of donor oocytes: ドナー卵子

日本では、まだ一般的ではなく、ごく限られた環境でしかできませんが(詳細はここを参照してください)、ドナー卵子を用いたPGT-Aの効果は、いくつかの研究で検討されています。先述の通り、PGT-Aは高齢女性に有効である可能性が高いです。そのためドナーの年齢によって、PGT-Aの効果は変わると思いますが、ドナー卵子におけるPGT-Aの使用は、総体的なエビデンスから見て現在は推奨されません。PGT-Aは特定の状況で有益である可能性がありますが、現時点ではその使用を支持する十分なデータはありません。

Advanced paternal age: 父親の高年齢患者

高齢父親の精子パラメータへの影響はよく知られており、平均父親年齢は上昇しています。高齢父親は死産、先天性異常、単一遺伝子欠陥、神経発達障害と関連しています。ダウン症候群の約10%は父親由来ですが、高齢父親が染色体異常の発生率に及ぼす影響については、ほとんどの研究が母親の年齢を制御していないため、議論が続いています。現在までに、いくつかのドナー卵子を用いた報告がありますが、その全ての報告で、卵子提供者を使用した場合、父親年齢と胚の異数性との関連は示されませんでした。しかしながら、一部の報告では、父親の年齢が50歳以上では部分的な染色体構造異常の発生率が増加することが報告されています。これまでの結果からは、高齢父親に対するルーチンのPGT-A検査は推奨されません。

Elective single-embryo transfer: 単一胚移植

予後良好な患者において、単一胚移植と2個胚移植を比較した研究では、染色体正常胚の単一胚移植と、2個の染色体正常胚を移植するで、出生率はほぼ同等であることが示されました(56%対57%)が、多胎妊娠率は2個の染色体正常胚を移植する方で、有意に高い結果となりました(0%対65%)。またNon-PGT-A胚の2個胚移植と染色体正常胚の単一胚移植の出生率には有意な差はありませんでしたが(66%対56%)、多胎妊娠率はNon-PGT-A胚の2個胚移植群で有意に高い結果をなりました(45%対0%)。このような結果から、PGT-A検査による染色体正常胚の単一胚移植は、多胎妊娠を減少させながら高い出生率を維持する効果的な方法です。そのためASRMは、単一の染色体正常胚を移植することを推奨しており、これにより単胎妊娠を促進し、多胎妊娠のリスクを減少させることを目指しています。

RECURRENT PREGNANCY LOSS: 不育症(反復・習慣流産)

妊娠初期の流産の原因の50−70%は染色体異常であり、これに対するPGT-Aの使用には妥当性があります。これまで、不育症(RPL)の患者におけるPGT-Aの効果を評価するため、いくつかの研究が行われています。
その中でも代表的なSociety for Assisted Reproductive Technology Clinic Outcome Reporting System(SART-CORS)データベースから、RPLを経験したカップルを対象に、PGT-A後の凍結胚移植とNon-PGT-A後の凍結胚移植を比較しました。PGT-A群では、出生率が有意に高い結果となりました(<35歳:オッズ比1.31、35-37歳:1.45、38-40歳:1.89、41-42歳:2.62、>42歳:3.8)。流産率には有意な差はありませんでした。
この結果から、RPLの患者におけるPGT-Aは、特に出生率の向上において有益である可能性があります。ただし、現在のエビデンスは主に後ろ向き研究に基づいており、PGT-Aを使用するかの判断にはさらなる研究が必要です。特に、卵巣予備能が低い女性では、染色体正常胚を得る可能性が低いことが示されており、これはRPL患者に特有の現象ではないと考えられます。

FROZEN EMBRYO TRANSFER CYCLES: 凍結胚移植

PGT-Aを行う多くのクリニックでは、PGT-Aの検査を院内で行っていません。PGT-Aのための胚盤胞生検は、培養5-7日目に行われるため、多くの正常胚盤胞は凍結サイクルで移植されます。
これまでの報告から、凍結胚移植は新鮮胚移植に比べて同等または優れた生殖能力を持ち、着床率と出生率が高く、流産率が低いと報告があります。また凍結胚移植の利点として、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠の発生率の低下があります。
凍結胚移植は良好な結果をもたらす可能性が高く、PGT-Aを行う患者にとって有望な選択肢と言えます。

DAY OF EMBRYO BIOPSY: 胚生検日

胚盤胞の生検を5日目(730個)と6日目(441個)で比較した場合、染色体異常率(69.9% vs 61.9%)に有意な差はありませんでした。また移植率、妊娠率、および出産率にも有意な差はありませんでした。この研究は、6日目の胚盤胞が、5日目の胚盤胞と同様に生児出産の可能性があることを示唆しています。一部の施設では、培養を7日目まで延長することにより、移植可能な胚を増やしています。しかし、7日目に胚盤胞段階に達した胚は、染色体異常のリスクが高く、また染色体正常であっても着床率や妊娠率、出産率の低下が見られたとの報告があります。これらのデータは、5日目および6日目の胚盤胞を7日目のものよりも選択することを支持しています。

PGT-A WITH PREIMPLANTATION GENETIC TESTING FOR MONOGENETIC DISORDERS: PGT-M/PGT-A併用とPGT-M単独の比較

PGT-M/PGT-A併用とPGT-M単独の比較については、過去に記事にしており、
着床率はPGT-M/PGT-A併用群で75%、PGT-M単独群で53%
出産率はPGT-M/PGT-A併用群で59.4%、PGT-M単独群で37.5%
流産率はPGT-M/PGT-A併用群で20%、PGT-M単独群で40%、という結果となりました。
PGT-M/PGT-Aを併用すると、検査後に移植可能な胚が減る可能性がありますが、全体的な評価が向上する可能性があります。一方でPGT-M/PGT-Aを併用することで、移植可能な胚が減少することや、モザイクや偽陽性のために有効な胚が廃棄されるリスクも存在します。このため、PGT-Aの使用は慎重に検討され、個別の状況に応じたカウンセリングが必要です。

THAWING AND WARMING, BIOPSY, AND RE-CRYOPRESERVATION FOR PGT-A: 胚の解凍と融解、バイオプシー、および再凍結保存

凍結保存された未検査の胚を解凍・融解して生検やPGT-Aを行い、移植までの間、再度凍結保存することがあります。生検が新鮮な胚で行われるのが理想的ですが、解凍・融解、生検、再凍結、再解凍の一連の操作を行っても、着床率や妊娠率、流産率に大きな影響は見られないとの報告があります。
しかし、PGT-Aの結果が得られない場合、再生検した細胞で再度PGT-Aが必要になることがあります。その際には解凍・生検・再凍結を行います。複数回の凍結保存と生検が臨床結果に与える影響については様々な報告が存在します。一部の研究では、2回の凍結保存と1回の生検を受けた胚の妊娠率はコントロール群と同等という報告もありますが、一方で、2回の凍結保存と2回の生検を受けた胚の妊娠率は低下する傾向が見られました。他の研究でも同様の結果が報告されています。データは一貫していませんが、複数回の凍結保存と生検が胚の着床に影響を与える可能性があり、この点を考慮する必要があります。

MALE FACTOR INFERTILITY: 男性不妊

ある研究では、正常男性と乏精子症の男性の胚盤胞の異数性率を比較し、卵子の年齢に関係なく乏精子症のグループで性染色体異常が3倍に増加することを報告しました。また、ICSIが、精子核の脱凝縮や卵子の紡錘体装置の不安定化によって異数性を増加させると提唱されたこともありましたが、これまでの研究ではその仮説は否定されています。これまでの研究では、男性因子不妊に対するPGT-Aの使用による妊娠率や生産率の改善は示されていません。PGT-Aにより検出される染色体異常の90%程(間違ってるかも)が女性由来だと言われています。男性不妊によって、性染色体異常が3倍に増加したところで、男性女性を合わせた染色体異常率に影響はなさそうだと思います。

USE OF ICSI: ICSIの使用

体が受精では、顆粒膜細胞から溶解したDNAや過剰な精子が透明帯に付着するため、PGT時にコンタミネーションのリスクが高まる可能性があると懸念されていましたが、実際にはコンタミネーションのリスクは実証されていません。

ETHNICITY: 民族性

IVFの結果が人種によって異なるという報告もありますが、現時点では民族性がIVFの結果に影響を与えるという証拠はまだ不十分であり、染色体異常のリスク評価には民族性を考慮する必要はないとされています。

NEONATAL AND CHILDHOOD OUTCOMES: 新生児および幼児期の影響

PGT-MやPGT-Aを受けた子どもと受けていない子どもを対象とした追跡調査では、神経発達や行動、身体的な測定値に差は見られないという報告が多いです。一方で、PGT-Aを受けた子どもで軽度の神経障害の発生率が高いという報告や、妊娠高血圧腎症の発生率が3倍高い報告もあります。
ほとんどの研究ではPGTが産科、新生児、幼児期の結果に対して負の影響を与えないことが示されています。

COST-EFFECTIVENESS: PGTの費用対効果

私はPGT-Aの費用対効果について興味を持っておりまして、これまでに何度か記事にしました(これとかこれこれ)が、PGT-Aの費用対効果を評価するのは困難です。これは、治療費や保険の適用範囲が大きく異なるためです。実際に本論文で紹介している論文でも、PGT-Aの費用対効果は「費用対効果が低い」や、「費用対効果は母体年齢と利用可能な胚盤胞の数に応じて向上」など、結果の異なるものでした。現状では、患者個々の状況や希望に合わせてPGT-Aを推奨すべきです。
不妊治療費は国や地域ごと、もしくはクリニックごとに異なることもあります。またPGT-Aの検査費用も異なるかもしれません。そのため、その地域に合った費用対効果の検証が必要になるかと思われます。

CONCERNS WITH INTERMEDIATE COPY NUMBER (MOSAICISM), TESTING
PLATFORMS, AND ACCURACY: モザイク胚の懸念

モザイク、異なる染色体構成を持つ2つ以上の細胞集団が同じ胚内に存在することです。初期胚で一般的な現象として確認されましたが、胚における正確なモザイク現象の有病率は不明です。
最近では、PGT-Aの検査方法でNGSなどのモザイク感度の高いアッセイを使用することで、胚盤胞生検サンプル内のモザイク胚が一般的になっています。モザイク胚の診断率は、使用するNGSプラットフォーム、モザイクと分類するためのカットオフ値、ソフトウェアの解釈、および各PGT-A試験の分類方法の定義によって異なる場合があります。またモザイク胚の誤診断として、増幅バイアスやコンタミネーション、ノイズなどの原因も考えられます。
モザイク胚は着床し、健常児を出産することができますが、着床成功率は低くなる可能性があります。一方で、低頻度モザイクであれば、染色体正常胚と同等の出生率であるとの報告もあります。モザイク現象の臨床管理については、ASRMESHREなどで報告されています。

Testing platforms: PGT-A解析プラットフォーム

初期のPGT-A検査ではFISH解析によって一部の染色体のみ解析のしていましたが、最近では全24染色体を同時に解析します。以前はaCGHやqPCRなどが用いられていましたが、10年ほど前から、高いスループット、モイザイク感度の高く、微細な染色体異常を検出可能なNGSでの解析が主流となりました。さらに近年では、従来のshallow WGSのみならず、SNPによる遺伝子型情報を調べることにより、3倍体などの倍数体の検出や、PGT-Aと同時にPGT-Mの解析が可能な検査手法が開発されています。
PGT-Aの解析プラットフォームは急速に進化しており、医師や遺伝カウンセラーはは検査手法について理解し、患者のニーズに合った適切なプラットフォームを選択することが重要になります。

Accuracy: 検査精度

PGT-Aの精度に関する課題は、生検した胚の一部をPGT-A検査に使用しますが、その結果が胚全体をどれだけ代表し、臨床結果を正確に予測するかという点にあります。多くの研究が陰性的中率(染色体異常でない胚が正常な妊娠をもたらす確率)を報告している一方で、陽性的中率(染色体異常胚が妊娠しない確率)についての報告は限られています。以前にこちらで記事にしていますので、参考にしていただけたらと思いますが、以前の記事では、PGT-Aの診断結果により異常胚と判定された胚について、98%が着床しない、もしくは流産という結果となりました(346/353: 95%, CI: 96.0%-99.2%)。
この結果から、PGT-Aの目的、すなわち、染色体異常胚の移植を回避することについては、PGT-Aは非常に正確だと考えられます。今後は、モザイク胚やSegemantal aneuploidy(重複・欠失)と判定された胚について、これらの結果を持つ胚の生殖能力を理解することが必要になっています。

EMBRYO DAMAGE: 胚の侵襲性

PGT-Aに用いられる胚生検技術に関するデータは少ないですが、現在主流として用いられています、胚盤胞期のTE生検が割球期の生検よりも胚の生存率に与える影響が少ないとされています。TE生検では割球期の生検より多くの細胞を生検しますが、胚全体の質量に対する割合が小さく、胎児になるICM細胞を除去しないためです。一方、割球期の生検は細胞系譜がまだ確立されていない時期に行われるため、生検する細胞が胚の生存や胎児の運命に影響を与える可能性があります。
しかしながら、TE生検の影響は完全には理解されておらず、着床に重要な役割を果たす胎盤への損傷がこの重要なイベントに影響を与える可能性があります。

Pretest counseling of patients or informed consent regarding clinical policy for abnormal test results: 異常な検査結果に関する臨床方針に対する患者の事前カウンセリングまたはインフォームドコンセント

PGT-Aなど検査前前のインフォームドコンセントには、PGt-Aのメリットだけではなく、デメリットや技術的限界などについても徹底的な説明すべきです。PGT-Aの場合、結果が得られない場合や、モザイク異常、誤診の可能性についても事前に説明することが重要です。また、PGT-Aを実施しない選択肢についても説明する必要があります。さらに、染色体異常胚の処分に関する書面を作成し、検査前に患者に開示するべきです。患者の意思決定プロセスのいかなる時点でも、遺伝カウンセリングへの容易なアクセスを提供することが推奨されます。多くの場合、PGT-A検査前だけではなく、検査後のカウンセリングも必要であり、遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医とのカウンセリングにより、PGT-Aで検査された胚の使用に関する患者の意思決定を支援します。

SEX SELECTION: 性判定

PGT-Aは性染色体のコピー数をも判定することができるため、技術的には選択的な性別選択が可能になります。アメリカでは、このような選択と決定は患者と医療提供者の間に委ねられています。PGT-Aの使用が増加するにつれ、選択的な性別選択が性別の偏りや性比の歪みに繋がる可能性があります。実際に、2014-2016年のアメリカ全体のSARTデータの分析によると、PGT-Aを利用した場合、男性の子供が生まれる可能性がはるかに高いことが示されました。2014-2016年の間、すべてのIVF出産における性比(男性/女性)は107でしたが、アメリカ全体の性比は105と推定されています。しかし、PGT-Aを使用したIVF出産の性比はPGT-Aを使用しないIVF出産の性比よりも有意に高く(115対105、P<.001)、性別選択のためにPGT-Aを使用した場合の性比は164でした。
日本ではPGT-Aの検査結果の開示では性別は伝えないようになっているはずですが、日本においても性比を調べたデータがあれば見てみたいです。

GAPS IN KNOWLEDGE: 知識のギャップ

PGT-Aには利点と欠点があります。
PGT-Aの利点として、PGT-A検査により妊娠中や出生後に染色体異常が検出されるリスクを低減する可能性があります。さらに、染色体正常胚のみを移植することで、妊娠までの時間を短縮できるかもしれません。これは、特に高齢女性、大家族を希望する人、代理母を利用する人に役立つ可能性があります。また、染色体異常胚の判定と廃棄により、余分な胚の凍結保存の負担を軽減できるかもしれません。
PGT-Aの欠点として、モザイク胚の移植に関するジレンマが生じる可能性があります。PGT-A用いないで新鮮胚移植で妊娠した場合、PGT-Aを使用するよりも妊娠までの時間が短くなるかもしれません。PGT-Aの偽陽性結果、およびモザイク胚の診断の正確性に関する不確実性を考慮すると、健康な新生児をもたらす可能性のある胚を廃棄しているかもしれないという懸念があります。またPGT-Aを行うために、凍結や融解、生検、検査などの工程が増えるため、それが治療費に反映されます。

PATIENT PRIORITIES AND INDIVIDUAL CONSIDERATION: 患者の優先事項と個別の考慮事項

アメリカではPGT-Aの使用を支持する証拠が不足しているにもかかわらず、PGT-Aの利用は増加しています。患者や医師がこのPGT-Aを選択するよう要因として、保険の適用範囲として、すべての胚のPGT-Aの使用を義務付けている場合、移植回数に制限がある場合など決められている場合があります。また高齢女性が理想的な家族規模を達成するために出生率の高い胚を保存することや、不育症のため再発防止を目的としてPGT-Aを選択することもあります。特に高齢で異数性妊娠のリスクが高い患者は、流産や異数性妊娠を減らすためにPGT-Aを希望する場合があります。
患者が情報に基づいた意思決定を行えるよう、PGT-Aの成功率や結果、社会的・経済的懸念について十分に説明することが重要です。

まとめ

PGT-Aの利用はアメリカで増加しており、技術も急速に進化していますが、すべてのIVF患者に対する普遍的なスクリーニング検査として、PGT-Aの価値は証明されていません。いくつかの研究では予後良好な患者においてPGT-Aと単一胚移植後の出生率が高いとされていますが、最近の大規模なRCTでは従来のIVFと妊娠結果に差は見られませんでした。PGT-Aの臨床的流産リスク低減効果も不明です。
さらなる研究が必要で、現時点では全ての不妊患者に対するPGT-A検査のルーチン使用は推奨されません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?