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蜷川実花に憧れ続ける夏


数年前、紺地に鮮やかな花柄のワンピースに一目惚れした。


上京したてのいかにも東京な自由が丘のある、セレクトショップ。仕事を初めたばかり、自分が働いた対価がお金として現れる。正直生活費でかつかつなのに、何か形になるものが欲しかった。

そんななかであった、ワンピース。

パッと目をひく、大きな花のプリント。それを見て思ったことが2つ。1つ目はまるで蜷川実花の写真みたいだと。


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大学生の時に蜷川実花著の「オラオラ女子論」を読んだ。

目から鱗とはその事と如く、私はあっけに取られた。

特に父 蜷川幸雄からの教えの1つに「いつでもどこでも男を捨てられる女であれ」と言葉がある。

生まれてこのかた、そんな価値観に出会ったことがなかった。

田舎で生まれ育った私には「男は立てろ」という声がずっと脳内で反響し続けていた。交際する男の人、先輩、ましてや父親は立てなきゃいけないとすり込まれていた私に、世界一周なんかよりも強いメッセージで、違う世界を見せてもらえた。それからずっと蜷川実花ワールドに引き込まれている。


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そのワンピースは蜷川実花さんを彷彿させるが、全然本人のデザインではないのも承知で初めて見た日からずっとずっとずっとワンピースのことを考えていた。

一点物のワンピースで決して安い値段ではない。

どうしようどうしようと考える日々、運命の日がやってきた。

そう、セール!!!

数千円の違いだが、新社会人には大きい値段の違い。

店員さんに「今日来てくれてよかったー!」と言われるくらい通いつめていたからその場で購入した。


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後から考えると。

私が本当に欲しかったのはこのワンピースなのか。

多分一番欲しかったのは、当時付き合いたての彼氏の「可愛い」の一言だったと思う。

容姿に特徴があったり可愛いわけではないし、どちらかというとふくよかだし、何かキラリセンスがあるわけではない。

とてつもなく自信がない自分を、可愛い、憧れの人を彷彿させるようなワンピースで武装してたった一言の「可愛い」と裏付けが取れるような自信が欲しかった。


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30度を超える猛暑が続く夏の今年は、「ダイナー」と見に行った。もちろん監督は蜷川実花さん。

昔から大好きレジェンドな藤原竜也さんが拝みたく観に行ったのに、帰りにはもう真矢みきさんの美しさで頭がいっぱいだった。

映画のシーン各所でのメッセージが強く、全部拾いきれた自信もないが終演後は「ちゃんと自分の人生を生きよう」と背筋が伸びた。

映画をみる前からも物を減らすことにはまっていたが、観終わってからは特にどこにでも何にでもなれる身軽さをさらに身に付けたく、さらに整理整頓が進んだ。

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続く整理整頓。

クローゼットで久しぶりに見かけたワンピースから色んな思いが爆ぜた。

だけど、うん、手放そう。

結局ワンピースを着たのは片手に足りるくらい。

買った直後のデート。初めての下北沢散策と夏が過ぎてからのシーズンにも着れる気がする!と言い張って袖を通した気がする。本当にそのくらい。

クローゼットの中の空気を吸っているくらいなら、もっと日の目に出ていてほしい。

誰かに来て欲しくてフリマを活用しているのに中々、全然値段を下げることができない自分がいる。

物は買った瞬間から価値が落ちているとどこかで目にした。

ワンピースを着て果たしたい目的はなんか呆気なく終わった気がする。空返事みたいな感じで「可愛い」って言われてちょっと虚しくなった気がする。そんなもんだよね。そんなに覚えていないって事はそんなもんだったのだ。

執着するのはやめて、このnoteが書き終わったら値段を下げるぞ。

私がニナミカみたいになれるのはなんか遥か遠い気さえしてきた。

私もワンピースも、残りの夏、次の夏もどうか楽しく過ごせますように。


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22日目の更新

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