やっぱり嫌いになれない『スカイウォーカーの夜明け』の4つの評価点

『スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け』について。

公開直後から評価が真っ二つに割れてしまった問題作。先日、主演のデイジーリドリーが涙ながらにインタビューを受けたことでも話題になりました。

この映画は、前作『最後のジェダイ』と前々作『フォースの覚醒』が持っていた課題をそのまま丸投げされた構成。その結果、物語としての破綻や矛盾、ファンとして理解に苦しむ点やそもそも映画として出来の悪い部分など山のような問題を抱えたまま世に出てしまうこととなりました。

賛否両論、とは言われるものの一般的に「駄作」の烙印を押されてしまった印象です。

しかし1人のスターウォーズファンとして本作を見たとき、大好きなポイントがたくさんあることも事実。ブルーレイも発売され、家庭で『スカイウォーカーの夜明け』が視聴できるようになって1か月。ここで改めてこの作品の好きなところを押さえてみたいと思います。

3人の若者の掛け合い

レイ、フィン、ポーの3人の掛け合いは本作でも最も好きなポイントの一つ。序盤から顔を合わせるなり、かなりの剣幕でいがみ合うレイとポー。少々不穏な気持ちになりますが、「またこれか」と言わんばかりの表情で2人をなだめるフィンを見て一安心したものです。

この場面は、我々が知らない3人の関係性を容易に想像させてくれます。僅か数分の会話ですが、これだけで3人の過ごした時間、これまで築いてきた信頼関係や友情が思い浮かぶ、非常に巧みな場面でした。

劇場で初めてこのやり取りを見たとき、「僕はこれが見たかったんだ!」と強く感じました。最初の3部作以来、長らく心待ちにしていたスターウォーズらしい若者の友情の形。ここからエンドアの海の月までの一行の旅は、僕に幸福な時間を与えてくれました。

レイとベンの最後の決闘

エンドアの海の月、第二デス・スターの残骸の上でレイとカイロ=レン(ベン・ソロ)の対決が行われます。

この場面はスターウォーズの数々のライトセーバーの決闘の中でも、ナンバーワンの出来だと認識しています。(『ジェダイの帰還』の最後の対決と1位2位を争います。)

彼らの決闘は、エピソード1~3までの時代と比較して技術も伴っておらず、ただただ荒々しく剣をぶつけるだけのもの。その中に、ジェダイやシスの戦いの歴史がもはや過去のものになってしまったという悲哀を感じます。

彼らの決闘は、相手を打ち倒そうとする意思のぶつかり合いではなく、なんでこんなことになってしまったんだという慟哭のようにも見えます。

ジェダイもシスも死に絶え、連綿と続いた歴史は途切れ、かつての伝説との繋がりも無い2人。彼女らは本心では戦いたいわけでもなく、過去の負の遺産に振り回され、互いに理由もわからぬまま対峙します。

BGMも無いまま、波の荒れ狂う環境で闘う様を観ながら、虚しさがこみ上げて来たことを覚えています。

壮大でかっこよく見えるのに、何故かカタルシスの無いこのシーン。この不思議な感覚は今までのライトセーバー戦では得られなかった忘れられない体験となりました。

賛否わかれるフォースの拡大解釈について

本作で特に問題視されているのはフォースの使い方。傷を癒やしたり、別の空間の相手と物をやり取りするなど、行き過ぎたフォースの応用が大きな批判を呼びました。

私は個人的には「フォースには何ができて何ができないのか」という、いわゆる「フォースの定義」はそれほど重要ではないと考えています。指先から稲妻が飛び出すのもフォースなのですから、どんなことができても別に不思議ではないとの解釈です。

本当に大事なのは定義では無く、物語上どのような役割を果たすかです。今作では傷を癒やすフォースが効果的に使用されました。レイはこの力を使ってベンの命を救い、その結果彼は善の心を取り戻します。そして、最後の戦いではベンの方が自分の命をなげうってレイを蘇生させることに成功します。

これは、『スター・ウォーズ』シリーズを通して非常に重要なテーマにもなっている「慈愛」と「自己犠牲」を形を変えて表現したことに他なりません。レイとベンの行動は、ルークとダース・ベイダーのそれぞれの行動と全く同じ。フォースの新しい活用法を物語に導入することで、その繰り返しのテーマを新しい切り口で描いたということになります。

新鮮さもあり、効果的であり、そして『スター・ウォーズ』のテーマにもきちんと則った、正しい「フォースの新解釈」だと言えるのではないでしょうか。

3つのそれぞれの舞台で戦う最終決戦

もはや『スター・ウォーズ』のお約束ともなった、複数の場所での戦いがパラレルに進行する手法。『スカイウォーカーの夜明け』でもこれが採用されています。戦闘機で艦隊と戦うポー、地上戦を率いるフィン、そしてフォースの暗黒面との戦いに挑むレイの3視点に別れます。

地上戦はまさかのスター・デストロイヤーの上で戦うという、ちょっと新しい試み。そしてそのフィン達の視界の範囲内でポー達空中戦組が戦いを繰り広げます。互いに戦況が見えるところにいる、というのは過去の『スター・ウォーズ』ではあまり使われていない演出。『フォースの覚醒』のダコタナの戦いでは使われていた手法なので、エイブラムス監督のお得意の手法なのかもしれません。

いずれにしても互いに状況が見え、互いに干渉しあえる環境下にあるという点で、共闘しているという一体感を高めるのに効果を発揮しています。

そこに加わるのは、レイ&ベン対パルパティーン。このフォースの暗黒面との戦いは、過去作では基本的に地上戦や空中戦とは影響し合わないもの。しかし、今作ではパルパティーンがレイとベンの力を吸収。絶大なフォースの力を得て、レジスタンス艦隊を直接攻撃するまでになります。つまりレイ達の戦いが直接全員の戦いに影響する状況に陥ったということ。

これにより、レイ、フィン、ポーのそれぞれの戦いは別の舞台でありながら、互いに影響し合い、共に戦っているという感覚を一層強く持てる演出になっているのです。

パルパティーンのフォース・ライトニングが艦隊にも影響を及ぼすというのは、ちょっとやりすぎだという意見は概ね同意。しかしこの最終決戦の構成自体は正しい方向にあると感じています。『スカイウォーカーの夜明け』の裏テーマにもなっている、チーム感や仲間の大切さ(3人の絆)を反映させようとしたこの演出は評価したいところだと考えています。

光るところがたくさんある 嫌いになれない作品

他にも語りたいことはたくさんありますが、概ねこの4つが私の心を掴んだポイントでした。やっぱり『スカイウォーカーの夜明け』は好きな作品です。ダメなところももちろんあるけれども、それを差し引いても輝く部分がたくさんある一本。

正直なところ、悪い点は友人や家族と語りつくしました。これからはこの『スカイウォーカーの夜明け』を繰り返し観賞して、この作品の持つ良さにもっともっとフォーカスを当てていきたいと思っています。