8万回プレイされたミニゲームは、難易度設定が肝だった。「Daytona Park 16TH RECEPTION PARTY」の制作を振り返る
「FREAK'S STORE ONLINE」から「Daytona Park」へ。デイトナ・インターナショナル(以下、デイトナ)が展開するオンラインECサイトのリニューアルに伴い、キャンペーンサイト「Daytona Park 16TH RECEPTION PARTY」とそれに連動した顧客イベントの企画制作をピラミッドフィルム クアドラ(以下、クアドラ)が担当しました。
なかでも大きな目玉は、キャンペーンサイトで段階的に公開された3つのミニゲーム。SNSでもプレイ結果の画像が多数シェアされ、反響を呼びました。
このプロジェクトがどのように進行したのかをデイトナの林さんをお招きし、プロジェクトに関わったクアドラのメンバー3名とともに振り返ります。
メンバー紹介
キャラクターから逆算してつくり上げたユニークな世界観
━━林さんがクアドラに依頼したきっかけは、「コンテンツ東京(コンテンツビジネス総合展)」だったそうですね。
林_実は僕ではなく、当社のブランディング担当者が情報収集を目的に足を運んでいたんです。そのときに師富さんと名刺を交換させていただいたようで。後日、担当者から僕に「こんなおもしろそうな会社があったよ」と紹介がありました。というのも、デジタルコンテンツを通じて新たな体験を提供したいという話を社内でずっとしていて、協力してくれる企業を探していたんです。それでクアドラさんのWebサイトを拝見したところ雰囲気が良かったので、師富さんに連絡しました。
師富_「コンテンツ東京」が終わってから間もなく林さんと話す機会をいただき、16周年を祝うキャンペーンサイトの制作とそれに紐づくイベントの企画について話を伺いました。
━━その時点で、林さんは具体的に取り組みたいことが決まっていたんですか?
林_そのときはゲームコンテンツをつくりたいというすごく大雑把なことしか考えていませんでした。
阿部_キャンペーンサイトにゲームを3つくらい入れたいという話でしたよね。
林_そうですね。
阿部_その時点で全体を括るテーマがあったほうがいいと考えました。デイトナさんのメイン事業である「アパレル」と「周年イベント」というキーワードを掛け合わせたときに、レセプションパーティーのような設定があれば考えやすいかなと。それが今回の「Daytona Park 16TH RECEPTION PARTY」のコンセプトにつながっています。
━━「Daytona Park 16TH RECEPTION PARTY」キャンペーンサイトはすごくポップでユニークな世界観が特徴的ですが、どのようなプロセスを経てこのスタイルに決まったのでしょうか?
阿部_初期段階では、もともとあるECサイトの雰囲気に寄せようと考えていました。ターニングポイントになったのは、FREAK'S STOREのマスコットキャラクター「フリークさん」の使用許可が降りたことです。それで発想を転換しました。フリークさんはデフォルメ感が漂うポップなテイストが特徴なので、このキャラクターが活きる世界観を構築していくことにしたんです。
師富_ゲームに関しても、フリークさんを主人公に据えることで「レセプションパーティーに向かう」「顔パスで会場に入場する」「フロアを音楽で盛り上げる」ストーリーが浮かび上がってきたんですよね。
阿部_そうそう。それまでは断片的だったゲームのアイデアが、同じ世界線でつながったんです。だから、フリークさんには本当に頭が上がりません!(笑)
サイト制作は会社の顔をつくるのと同義
━━ゲームをつくるうえで苦労したことはありますか?
山口_制作担当としては、ゲームの難易度をデイトナさんが求めるレベルにいかに近づけるかに苦労しました。
阿部_難しすぎて誰もクリアできなかったら意味がないし、かといって簡単すぎてもつまらないですから。めちゃくちゃ頑張れば限定プレゼントをゲットできるかも、という塩梅を考えないといけなくて。
山口_とはいえ、難易度は言葉で表現しにくいので試行錯誤しました。
師富_社内でゲームが得意な人とそうでもない人にプレイしてもらって、バランスを探りました。私のほうからも「もう少し難易度を上げてください」とお願いをしたりして。
阿部_ちなみに、最終的にバランスを調整したものを僕は難しすぎてクリアできていないんですよ。だから、クリアできる人が登場するのか不安だったのですが、Twitterで検索したところ続々とクリアされていて……(笑)。
━━林さんは、ゲームを実際に見たときにどう思いましたか?
林_クアドラさんに仕事を依頼したときから気にかけていたのは、ゲームのクオリティでした。質の低いものをリリースすれば、それだけでブランド価値を下げかねないので。それもあって、デザインの初稿を見たときは安心しました。直感で「これはいけそうだ」と。こちらが要求した高いハードルをうまく飛び越えていただいたように思います。
師富_クアドラとしても、ゲームのクオリティはこだわりましたね。なんと言っても、記念すべき周年を祝うコンテンツですから。社内に在籍しているファッションやゲームに強いデザイナーに協力してもらい、メンバー同士で士気を高めながら完成させました。
━━クアドラ側も気合いが入っていたんですね。
師富_それはもう。ファッションを取り扱う企業の顔になるサイトをつくるわけですから。ご要望にお応えできたので、本当にホッとしています。
2歳児から大人まで。みんなに愛されるゲームコンテンツになった
━━ゲームをプレイした方からの反応はいかがでしたか?
林_すごく好評でした。合計で8万回ほどプレイしていただいています。また、キャンペーン後に実施したユーザーアンケートでも、満足度の平均値が5段階中4.3と高評価で、他のキャンペーンと比較しても1〜2を争うくらい反響があった企画でしたね。
阿部_ゲームで獲得した点数によってTwitterに投稿される画像が変化する仕組みにしているのですが、コメント付きでシェアされているものもあって嬉しかったです。
林_キャンペーンサイトへの流入は会員向けのメルマガを経由するのが通常なのですが、今回のキャンペーンはSNSにシェアされた投稿を経由して訪れた人も多かったようです。非会員の方も多数サイトを訪れてくれたので、そういう意味でも非常に良かったと思います。
━━SNSの反響以外にも何かリアクションはありましたか?
林_印象に残っていることがふたつあります。ひとつは、店舗のスタッフからの声です。たまたまある店舗に立ち寄る機会があり、自分がECの担当だということを伝えずにスタッフと会話していたところ、「会計後のお包みの間に16周年サイトをお客さまにご紹介したら盛り上がって、コミュニケーションのきっかけになっている」と言っていたんです。これは私たちの予想を超えた反響だと思いましたね。
師富_スタッフさんが気に入って勧めてくれたというのは嬉しいですね……!
林_もうひとつはお客さまアンケートに記載してあったものなのですが、2歳になるお子さんが音ゲーを気に入ってくれて、笑い声を上げながらすごく楽しそうにプレイしていたという声がありました。
師富_すごい!
林_画面の上から流れてくる「デ」「イ」「ト」「ナ」の4文字をリズムに合わせてタップするゲームなのですが、「デイトナ」という言葉も覚えてくれたそうで(笑)。UIや音を含めてトータルのデザインが良かったからこそ、小さなお子さんも楽しんでくれたのかなと思います。
阿部_普段Webサイトをつくっていてもユーザーの声を聞く機会は滅多にないので、とてもありがたいです。その子にゲームの成績で負けていないかだけが心配ですが……(笑)。
━━大きな反響があったようなので、今回のキャンペーンだけのゲームにするのはもったいない気もします。
林_実はクアドラさんに制作していただいた3つのゲームは、Daytona Parkのサイト内に常設することが決まりました。それだけでなく、新作ゲームもリリースする予定です。
師富_すでに制作は進行していて。現時点で具体的な内容は明かせませんが、2023年5月から2024年2月までの期間に何本か公開するスケジュールを組んでいます。また、現時点では企画段階ですが、アイテムの検索や似合う服の診断ができる「+PLUS MIRROR」というスマートミラーを活用したゲームコンテンツの提案もしています。
山口_ゲームをメインにした店舗をつくりたいという話もいただいているので、空間設計から関われたらおもしろそうだなと考えています。
林_クアドラさんは、ゲームに限らずおもしろいコンテンツをさまざまに制作している印象なので、リアルイベントなども含めて、今後もご一緒できたら嬉しいです。
阿部_僕らは普段デジタルコンテンツばかり扱っているせいか、リアルに触れられるものに憧れのような気持ちがあるんです。なので、デイトナさんとはモノを媒介にした仕事を増やしていけたらと考えています。なので、これからもよろしくお願いします。
文:瀬口あやこ(アニィ)
取材:村上広大
撮影:武石早苗
(この記事の内容は2023年5月31日時点での情報です)
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