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内緒の関係ちあき奥様のストーリー②

私は、ターミナル駅で降り、ホテルへと向かった。
部屋にカバンを預けて、シャワーで体を軽く流した。
「うむ……」
冷え切った体が温まり、いくらか人心地がついた。
(帰ったときに、石鹸の匂いがしてしまうか……)
一瞬、そんなことが頭をよぎった。
サラリーマン時代、営業をやっていて、それで叱られたことがある。
だがー。
(社長業はしっかりやってるしな……)
頭を痛めるところは、勤め人時代と、はっきり変わった。
とにかく、資金繰りと利益の確保。それが最優先だ。重圧を背負って、20年近くになる。
一人の人間が、生まれてから育つほどの歳月、体を張り続けた。
弱音を吐いてもよく、ありのままを出せる時間も欲しい。
(だから、うちの親父も、飲み屋の女と遊んでたのかな……)
タオルで体を拭きながら、昭和気質な父を思い出し、ふと笑った。
母も気付いてはいただろうがー。土産の寿司折を楽しみにするばかりで。
二人の関係は家族愛に転じ、女として、思うことはなかったのだろう。
たとえばー私の妻がそうであるように。
(嫉妬されるうちが花、なんてこともないが……)
なんだか時折、メランコリックな気分になる時もある。
かすかな憂鬱を、頭を振ってやり過ごし、私は部屋を出た。
ちあきさんを、迎えるために。
(515字)

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