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内緒の関係ちあき奥様のストーリー⑧

シャワールームを出て、ベッドルームに戻っていく。
さすがに、年甲斐というか体面を考えて、自制したがー。
私の後ろをしずしずと歩く、ちあきさんへの衝動は抑えがたい。
並んでベッドに腰を下ろすやいなや、すぐにまた、唇を重ねた。
「んっ……」
まるで、私がそうするのを分っていたかのように、受け入れてくれる。
彼女の上半身に巻かれたバスタオルを解き、抱き寄せる。
火照った肌と肌とが密着し、ちあきさんの体を全身で感じる。
ちあきさんの白い腕が、私の首の後ろに回った。
まるでしがみつくような、情熱的な姿勢ー。
首を傾け、目を閉じて、彼女の舌の感触と香りを愉しむ。
(ああ……)
安らぎと、圧倒的な包容感―。
キスとは、これほどいいものだったかー。
深く深く、私の舌を絡めとられるたび、陶然とした気分になってゆく。
人に向き合ってもらい、深いところで受容されること。
(私は、それに飢えていたんだな……)
今さらのように、そのことに思い至る。
深いところで、完全に満たされはしない孤独があった。
二人でいても、独り―。夫婦には、そういう部分がある。
その孤独は、意外にもずっと一人でいるのと同じほど、深い時もある。
それが、ほどけていくのを感じた。
(もっと、もっと欲しい……)
ちあきさんの体温に溺れたくて、ゆっくりと、彼女をベッドに押し倒した。

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