内緒の関係かすみ奥様のストーリー④
かすみさんの細い腕が、私の腕に絡んでその体を寄せてくる。
こんなに誰かと密着するのはいつぶりだろう。
かすみさんのロングヘアがふわりと風に靡いた拍子に、凄くいい匂いが鼻腔をくすぐった。
「今度新作が出るんですけど、それがまた前作とのギャップがすごくて……」
嬉々として話し続けるかすみさんは、とても自然体だった。
まるでそうするのが必然のように、私に体を寄せて来ている。
これが意識してやっていることだとしたら、なんという見事な振る舞いだろうか。
自然と恋人らしい振る舞いが成されていて、とても気分がいい。
恋人と一緒に街中を歩いているかのような、懐かしい気持ちにさせられた。
(そういえば……そういう感覚も味合わなくなって久しいな……)
淡々と仕事ばかりをこなす毎日で、喜びを感じる時はせいぜい美味しい酒や料理を前にした時くらい。
こんな風に、誰かと歩いて幸せを感じることはあまりなくなっていた。
それを思い出させてくれた彼女には感謝しなければなるまい。
そう思うと彼女が余計に愛しく感じられ、つい組まれた腕に当たる彼女の柔らかい物を意識してしまった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?