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はな奥様ストーリー【1】

土曜の朝、時計は10時を回っていた。
 昨日の飲みが尾を引いたのか、今朝は寝坊だ。休みだし、まあいいかとリビングに向かう。
 そこは無人で、玄関の方からチャリチャリと鍵の揺れる音がした。
「おーい、出かけるのか?」
 声をかけると、少ししてリビングに妻が入ってきた。気合の入ったオシャレをしている……と思われる。
「あ、起きたの。これから遠藤さんと出かけてくるから。お昼も食べててくれる?」
「ん……了解」
 まだぼやける思考の中で、またか、という呟きが聞こえた。
 彼女は特にこちらを気にする様子もなく、上機嫌で出かけていった。最近は”推し”ができたとやらで、近所の友人と一緒にライブだのトークショーだの出かけている。
 息子も大学生になり、春に家を出た。育児にひと段落つき、母としては解放感に溢れているようだ。
「なんだかなあ」
 そして残される自分。ちなみに、妻の”推し”はイケメン俳優である。
 そこはかとない敗北感と寂寥感に、しんとした家の空気は心に迫る。べったりイチャイチャする年齢でもないのだが。
(最近じゃ、すっかりアッチもご無沙汰だ。とはいえ、直美の方が若いんだ、少しぐらい……)
 自分は48歳、妻・直美は42歳。不仲ではないが、セックスはここ数年していない。立派なセックスレスである。
 疲れや予定で先送りにしているうちに、やり方すら忘れそうな有様だ。

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