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しおり奥様ストーリー【4】

「じゃあ、またね」
 ラブホテルでいちゃいちゃしたあとしおりと別れる。
 別れた後、抜いてもらった幸福感を噛みしめながら家へ帰る。
 六十を過ぎて、たまにくる欲求を雑誌や動画で紛らわせていたが、しおりとの時間は刺激があってよかった。
 その日以降、俺の日常が好転した。
 店の果物と野菜を作ったスムージーがヒットし、売り上げが上がった。
 俺はその売り上げで、しおりと濃密な夜を過ごすことが多くなった。
 定期的にしおりと会っているので、ラブホテルに入る前にお洒落な店で軽く食事をしたり、彼女の誕生日には若い娘が好むハイブランドなバックや財布をプレゼントしたりした。
 しおりは律儀な娘で、俺の誕生日のときに三枚の手ぬぐいをくれた。百円ショップで売っているような生地の薄いものではなく、一枚五千円ほどのもの。無地のものから、和柄のものと俺が持っていてもおかしくないデザインだった。
 商売をするとき、頭に手ぬぐいを巻くという雑談の内容を覚えていてくれたらしい。
 手ぬぐいを貰った翌日、すぐにそれを巻いて店の前に立った。
 妻に「そんな柄あったっけ?」とぼやかれたが、最終的には「珍しく似合ってる」と高評価だった。いつも「センスないね」と言われ続けていた俺にとっては嬉しい出来事の一つである。

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