内緒の関係 しょう奥様のストーリー①

 俺は仕事に誇りを持っている。
 営業マンというと欲しくもない商品を美辞麗句で惑わして買わせてくる、なんていう風に思われていることも多いが、本当の営業マンは客と商品をマッチングさせる者だ。
 無理な販売はしないし、不要な物も売りつけない。欲しい者のところに、欲しいだけの物を、適正な価格で、売って買ってもらう。
 それが本来の営業マンだと思っている。
 そんなスタンスでやってるだけに、ひとつひとつの仕事が真剣勝負で気が抜けない。常に全力だ。
 口さがない同僚の中には、もっと手を抜けと言ってくる者もいるが、俺はそんなことはしたくない。
 それ自体は自分で決めたことだからまあいいとして。
 いくら自分で選んだ道とはいえ、ストレスは溜まるのである。
 特に、嫌な顧客に当たった時なんかはそのストレスは倍増だった。
 そこで俺は日々溜まったストレスを癒すべく、とあるデリバリーヘルスを介して、その女性に会いに行く。
 待ち合わせ場所の駅に着くと、彼女は先に来てそこで待ってくれていた。
 俺の姿を認めると、その顔に柔らかな笑顔を浮かべてくれる。見る者を安心させる笑顔だ。
「こんにちは。本日もご指名、ありがとうございます」
 高すぎず、大きすぎない、なんとも落ち着いた声が耳を打つ。
 礼儀正しく真面目。落ち着いた態度は安心する雰囲気を醸し出していた。
 そんな風に挨拶してくれた彼女が、可愛らしく小首を傾げる。
「……おおきに、の方がよかった?」
 彼女は――しょうさんはそう言って、楽しそうに笑うのだった。
 私は関西弁フェチなので、彼女には無理のない範囲で普段通り喋ってもらうようにお願いしていた。
 前のことをちゃんと覚えていてくれたということだ。
 そんな誠実な彼女に、俺は早速癒されていた。

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