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内緒の関係かすみ奥様のストーリー③

かすみさんは最初、人見知りしているような感じがしたが、少し話しているだけでその愛くるしさが輝き始めた。
 事前に映画鑑賞が趣味だということはプロフィール画面で知っていたからその話を振ったのだが、活き活きとした様子で話してくれる。
「あの映画、俳優さんの演技がとっても上手くて……思わずほろりと来ちゃいました」
「へえ……それはぜひ見てみないと。俳優の演技が上手い映画って他に何があるかな?」
「そうですねぇ……有名なところだと……」
 屈託なく笑う彼女の顔を見ながら、話題はそこそこに聞きつつ、私は彼女の表情に惹かれていた。
 元々可愛らしい系の顔立ちをしているとは思っていたけれど、笑顔になるとその魅力がさらに引き出されている感じがする。
 親ほどに歳が離れている私に対しても、特に何の垣根も感じさせることがない。
 穏やかに話しかけた甲斐もあって、すぐに人見知りしなくなってくれたようだ。
(……普通に、話してるだけでも楽しいな)
 普段会社で彼女くらいの若い者と関わり合う機会が全くないわけではない。
 ただ、やはり仕事での関りとなると、若い者との会話はかなり神経を使う。自分の時とは違う常識で生きているので、自分が上にやられたような付き合い方をしていると、セクハラだのパワハラだの言われてしまいかねないからだ。
 良好な関係を築けていると信じてはいるが、常に気を張り続けているのは事実。
 こんな風に、気楽に話せるというだけでも価値がある時間だった。
 少しだけあった距離は、すでに埋まっており、かすみさんはその腕を私の腕に絡めて来てくれた。

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