見出し画像

PET WELL clinic の ワクチン の考え方

院長の水越です

「ワクチンは毎年接種するのが当たり前だ」

「毎年接種しないと怖い感染症にかかるリスクがある」

と思っている飼い主様は少なくないと思います

本当にそうでしょうか?


今日はワクチンの考え方について書きたいと思います


もちろん、ワクチン接種をした方が感染リスクは低くなりますが、毎年の追加接種が必要なケースは限られていると思っています


では、その感染リスクはどの程度なのでしょうか?

その前に、ワクチンで防ごうとしている感染症がどうやって伝染するかを考えてみましょう

例外はありますが、基本的に犬の感染症は犬から犬に、猫の感染症は猫から猫に伝染します

例外の一つとして、犬のレプトスピラ感染症は野ネズミの尿が感染源です

感染動物の便や尿、唾液、咳やくしゃみをした時の飛沫などによってウイルスや細菌が運ばれて他の動物に伝染します

よって、感染動物が近くに居る状況で感染することがほとんどであり、近くにいなければ感染率は非常に低いと言えます


人間は学校、職場、買い物など、人混みの中で生活しています

どこに行くにも電車やバスに乗ったり、不特定多数の人との接触が避けられません

なので、感染症が広がりやすくなります


犬や猫はどうでしょうか? 

現在のペットの生活環境を考えると、ほとんどの時間を家で家族と過ごし、散歩も自宅周りのいつものコースであり、他の犬と接触するとしても、顔見知りの数頭の犬くらい

家猫の場合は他の猫との接触は、誤って脱走した場合や動物病院に連れて行く時くらい

犬猫はペットとして家庭に迎え入れられてからは感染症にかかるリスクは低いと言えます

でも、絶対に感染しない訳ではありません

例えば、窓の近くにいる野良猫のくしゃみで飛沫感染する可能性があります

パルボウイルスは乾燥に強く(ほとんどのウイルスや細菌は乾燥したらすぐに死にます)、感染動物の便が靴に付けて人間が持って帰って感染することもあります(主には動物病院やペットショップのスタッフ)

いずれも非常に稀なケースです


あと、気をつけた方がいいのが散歩時に見かける子犬です

その子犬、排泄した便と接触することは避けましょう

家に来た日は元気だったけど、数日後から調子を崩したという理由で動物病院を受診され、検査をしたらパルボだったというケースは時々あります

ペットショップで感染して、家に来てから発症するいとうパターンです

基本的には3回目のワクチンの後、1〜2週間経ってから外に出すようにと動物病院では説明するのですが、家に来てすぐに散歩に連れて行ってしまい、その子犬がパルボの発症前のキャリアということがあるかもしれません

同様のことが保護犬でも考えられます

もちろん、家に新しいペットを迎える時も要注意です


室内中心の生活では感染リスクは低いですが、生活環境によっては感染症のリスクは高くなります

外に出入りする猫、ペットショップやブリーダーの施設、保護施設などにいる犬猫たちは感染のリスクが高いです


いくつかの特殊なケースを除き、ペットが感染症にかかるリスクは低く、どんなペットに対しても人間のようにワクチンを接種するという考え方に僕は疑問を感じています


次にワクチンの副作用について考えていきます

生死に関わるような強いワクチンアレルギー(アナフィラキシーショック)が起こることは稀です

ある報告では、犬のワクチン後の副反応(アレルギー反応)は 62.7 / 10000 頭、アナフィラキシーショック 7.2 / 10000 頭 ということでした

参考資料はこちらです ↓

強くないワクチンの副作用の発生は皆さんが想像するよりも実際は多いと思います

典型的なアレルギー反応として、ムーンフェイス(顔が腫れる)、蕁麻疹などあります

その他の有害作用として、1〜2日ほど元気がなくなる、嘔吐や下痢、接種部位がはれる、触ると痛がるなどの症状よく見られます

これらの軽度な副作用は、上記の報告でカウントされているかどうかは微妙なところであり、僕の経験上の感覚では、20頭に1頭くらいの頻度で何らかの健康被害が起こっているように思います


また、ワクチンによって免疫介在性疾患が発症することも稀にあります

免疫介在性疾患とは、身体の免疫機能が正常に働かなくなり、自分自身の身体を外敵と認識して攻撃してしまう病気です

例えば、赤血球を外敵と認識して破壊し、貧血になる病気があります


このように、重大な副作用はまれですが、小さな問題が起こることは意外と多く、ワクチン接種におけるデメリットも考えておく必要があります


まとめると、ワクチンを接種するかどうかは、生活環境などを考慮して、メリットとデメリットを比較し判断する必要があるということです


では、どういう生活環境ならワクチンが必要で、どういうプログラムで接種すればいいでしょうか?


室内生活の猫、散歩に行かない、または家の近所の散歩で他の犬との接触が限られている室内生活の犬については、子犬の時期だけワクチンを接種(生後2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月の3回)し、それ以降の追加接種は必要ないというのが僕の考えです

ちなみに、世界小動物獣医師会(WSAVA)が提唱しているワクチンプログラムを参考資料(原本の翻訳版と要約版)として示します

https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

https://confit-fs.atlas.jp/customer/acrf35/pdf/Lc2-8.pdf


もちろん、生活環境が変われば、ワクチン接種のプログラムも変わります

外に出る猫は成猫になってもワクチンを追加接種した方がいいと思います

野良犬がいる地域や不特定多数の犬と接触するような生活スタイルであれば、成犬になっても追加接種をした方がいいかもしれません

 

トリミングやドッグランを利用するためにワクチン接種が必要なこともあると思います

賃貸マンションの契約内容にペットのワクチン接種を義務化していることがあるかもしれません


過去にワクチンアレルギーが起こった場合はワクチンを打つべきではないという証明書を、健康状態が悪い場合はワクチンを延期した方がいいとという証明書を発行することが可能ですので、証明書を見せれば考慮してくれる場合があるかもしれません


追加接種をする場合、コアワクチンについてはWSAVAが提唱する通り、3年以上の間隔を空けて追加接種をするというプログラムを僕も推奨します

コアワクチンとは、犬では、犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬アデノウイルス2型の3種のことです(いずれも5種混合ワクチンで予防が可能です)

日本では狂犬病ワクチンの接種が義務化されているので、毎年1回の接種が必要となります


猫では、汎白血球減少症ウイルス、猫ヘルペスウイルス1型、猫カリシウイルスの3種です(いずれも3種混合ワクチンで予防が可能です)


まとめると、


犬 のワクチンプログラム

・狂犬病ワクチンを毎年1回

・5種混合ワクチン 生後 2、3、4ヶ月に接種 (以降の追加接種なし)


猫のワクチンプログラム

・3種混合ワクチン 生後 2、3、4ヶ月に接種(以降の追加接種なし)


追加接種(感染リスクが高い場合のみ)

・犬は3年以上の間隔を開けて接種

・猫は3年に1回の接種


犬の場合、ライフスタイルによっては、 レプトスピラに対応した8種や10種ワクチンを毎年接種する方がいい場合もあります

例えば、キャンプに連れて行く、野山に近い環境に住んでいて散歩で山に入るなど

レプトスピラについては毎年1回の追加接種が必要です

理由は、レプトスピラワクチンの抗体価が1年ほどで低くなるからです


ちなみに僕の家には小型犬が4頭おり、ほぼ室内生活で、時々庭に出て、月に数回散歩に行くというライフスタイルです

追加接種は4頭ともしていません


「ワクチンは毎年接種するもの」という常識を変えたいと思っています

「常識と思われていることが実は真実ではない」ということは少なくありません

大切な家族であるペットたちの健康は、飼い主様が信頼できる情報を集めて、ご自身の判断で健康管理をしなければなりません

そのためにも、信頼できる動物病院、獣医師を見つけて、なんでも相談できるような関係を気づいておくことが大切だと思います


最後にその他の予防について

ワクチンについては、このような考えですが、フィラリア予防は室内生活の犬でも必要だと考えています

検査をすればフィラリア陽性だったという犬はまだまだいますし、蚊に刺されて寄生するので、室内でもリスクがあります


散歩にいくならば、ノミとマダにの予防も必要です

完全に室内生活ならば、犬も猫もノミとマダニの予防は基本的には必要ないと考えています 

ただし、庭にたくさんノミやダニがいる場合など、環境によっては室内生活でも予防が必要となる場合があると思います


今回の内容は賛否両論あると思います

あくまでも僕の個人的な見解です

ワクチンのことでも、それ以外のことでも、PET WELL clinic に、僕に相談していただければ、一緒に考えてベストのご提案をしたいと思います


今回は以上です




院長 水越 の自己紹介はこちら ↓



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?