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「本のページをめくる音が好き」

亡くなった母が、あるとき言った。
たしか夏だったと思う。
コーヒーだったか。少し背の高いコップに氷が浮かんでた。ミルクとガムシロを混ぜていたときだったと記憶している。曇りガラスのマドラーと氷がぶつかって綺麗な音を奏でてた。
「アイスコーヒーにミルクとガムシロを混ぜたときの氷の音が好きなの。」
そんなことに気を留める人がいるのか。そんなことを思った。でも、聞いたときになるほどたしかにそういう風情もあるよなと感じた。

それから何年が経ったろう。15年いや20年?
長女(5歳年長)がこんなことを言った。唐突に。
「本のページをめくる音が好き」
なんだか、母の言ったことばと繋がりを感じた。
そのことば選びが、感性が素敵だなと思った。

おすわりをした頃から訳も分かってないだろうけど読み聞かせをしてきた。その積み重ねが、今回のことばにつながったのかなと思うと親としての喜びもある。そして、なんとなく遺伝子的な繋がりを感じ、亡き母を想い出し、長女が4ヶ月のときに旅立った彼女の息吹を感じ、感慨深さに浸っている。

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