私の足下にフシギダネがいたのかもしれない
大通りより裏道を通るのが好きだ。
狭くて人がいないからだ。
社会性のなさそうな理由だが、裏道はわくわくしやすいし、考えごとをしながら歩きやすい。
家からちょっとコンビニに行くときも、特に目的のないときも、裏道を歩く。
家と家の間の狭い道を歩いていると、たまに人が立っていることもある。
昼間ならいいが、夜だとビビる。
この前は、夜に軽く賛美しながら狭い道を歩いていると急に人が現れて二重の意味で死にそうになった。
ちなみに賛美というのは、神様を褒めたたえる歌のことだ。
自分のヘロヘロ賛美を人に聞かれていたら恥ずかしすぎて死ぬのと、ふつうにびっくりしすぎて死ぬという意味だ。
こんなときのために、街中で歌う時は保険をかけて、気持ち強目の軽さで歌っている。
いや結構小さい声だったし聞こえてないっしょっと自らを奮い立たせてそのまま進んでゆくと、見えてきたのはスマホをガン見しているおばさんだった。
しかも棒立ちでずっと動かない。RPGにいる村人くらい動かない。彼らは永遠に同じ位置に居続ける。
街中の中途半端な位置でスマホを見て突っ立っている人は、軒並みポケモンGOをしている。
もうポケモンGOの季節は過ぎ去ったと思っていたが、都内ではたびたびゲームをやっている人を見る。
これは確実に私の歌なんか聞いてねえや、と安堵して通り過ぎた。通りすがり、チラッとスマホ画面を見た。やっぱりポケモンGOだった。
おばさんは、全然ポケGOのことしか見てなかった。
わたしはポケGOとポケGOにハマるおばさんによって無駄にカロリーを消費した。
しかも、おばさんが私のことに一切目もくれず、ひたすらポケGOに夢中だったのがくやしい。
私はおばさんに翻弄され、神様のことを忘れていた。私はポケGOおばさんに夢中になってしまった。
もう家で賛美しよって思った。