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はい、はいよ。

えんえんとこまごまと、だれのボールひとつとて取り逃がすまいとキャッチしてきた。

ここにきて、あらゆることばをはいはいよっと受け流しはじめた。

はやく結婚しなさいよ。
はいはい〜。

これやってくれない?
あ〜どうかなあ。

そんなんでどうすんのさ。
まあまあ。

時には、うるせえ今やるよォと思ってやるし
時には、それは誰かがやってくれるのさァと思って手をつけない。

流したことばたちは取りこぼした流しそうめんのようにサラサラと流れてゆく。
最後にとどめてくれるザルはあるのだろうか。

小さい頃の記憶を開くと。
オトナというものはふまじめだなあ、ノロマだなあ、とよく私がわめいている。

ちゃんとしなきゃいけないのに!
こんなにいそいでいるってのに!

そんな過去の私をなだめては、
だれかのあるべき理想は、必ずしも正解の理想ではないのだよ、と封をしておく。

こぶしひとつ分くらいは余裕を残しておかないと、飛んでくるボールが即デッドボールだ。

アワワ、イテテッとこぼすよりは、これだと思ったこの人と一生懸命キャッチボールしたいのだ。