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【映画の中の詩】『恋愛手帖』(1940)

ダンサーから女優へーージンジャー・ロジャース

当時話題になったというクリストファー・モーリーの小説の映画化。サム・ウッド監督。

原作にはかなり露骨なラブシーンもあり主演の打診を受けたジンジャー・ロジャースは当初出演をためらいますが、ダルトン・トランボ(『ローマの休日』『ジョニーは戦場に行った』)の脚本を読んで出演を決めます。
そしてジンジャーはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞することとなります。

キャサリン・ヘップバーン(『フィラデルフィア物語』)、ベティ・デイヴィス(『月光の女』)、ジョーン・フォンテイン(『レベッカ』)、マーサ・スコット(『我等の町』)といった強力な面々を抑えての受賞で、フレッド・アステアのダンスパートナーとしてではなく一人の女優として認められました。

ジンジャーが後半を変えてしまう、ウォルター スコットの「湖上の美人」は元は、

The stag at eve had drunk his fill,
Where danced the moon on Monan's rill,
And deep his midnight lair had made
In lone Glenartney's hazel shade;

夕べ  牡鹿は喉を潤す
月かげ踊る モナンの流れ
深く分け入るのは夜中の隠れ家
寂しいグレナートニーの奥深きハシバミの木陰

指遊びの曲は全てミュージカル絡み(結果的にですが)。
『夜も昼も』は言うまでもなくアステア=ロジャース『コンチネンタル』(1934)の挿入曲。
『ストーミー・ウェザー』(”Stormy Weather”) は、1943年にミュージカル映画化。
『Three Little Words』は後にこの楽曲名で作詞作曲者バート・カルマー/ハリー・ルビーの伝記映画がフレッド・アステア主演で作られます。
邦題は『土曜は貴方に』(1950)。

ジンジャーの演技は多くの人から称賛されますが、彼女が最も嬉しかったのはアステアからの次のような手紙でした。

ハロー・キューティー
きのうの晩『恋愛手帖』を見て、どうしても手紙を書きたくなったんだ。「That's It!(これだよ!)」と言いたくてね。
僕は何千回でもイエスと言おう!君は最高に素晴らしかったよ、ジンジャー ––––とてもソリッドな演技だった––舞台でもスクリーンでもめったに見られないような種類のね。あの演技はきっと君に最高の名誉をもたらすことだろう !!
近々会えることを願いつつ––––
いつもながら君の––––
フレッドより

『ジンジャー・ロジャース自伝』渡瀬 ひとみ訳、キネマ旬報社


参考リンク
『人生詩集』「シャロットの妖姬」 テニスン 帆足理一郎 訳
湖上の美人 』ウオルタ・スコット 著, 藤波水処, 馬場睦夫 共訳
青春の記録』クリストフワー・モーリ 著











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