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【映画の中の詩】光は闇の中で輝く

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映画と詩の交歓にまつわる文章を綴ります。 〈注:引用するのは主に1930〜50年代の映画です。 字幕と翻訳者明記のない引用詩は私の勝手訳(語句の入れ替え、省略有り)であることをご…
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2023年11月の記事一覧

【映画の中の詩】『若草物語』(1949)

ただ憧れを知る人だけが 私の苦しみを知っている! 原作は、現在でも少女小説の枠を超えて多くの女性クリエーター達に影響を与え続けているという(とりわけこの作家志望のジョーのキャラクターがでしょうか)、オルコットの『若草物語』。 ジョーは「人の心に火をつけるようなものが書きたい!」と言っていますが、それが現実となっているわけですね。 曲はチャイコフスキーの「ただ憧れを知る者だけが」。歌詞はゲーテの「ヴィルヘルムマイスターの修行時代」4巻11章より引用されています。 映画では

【映画の中の詩】『生きるべきか死ぬべきか』(1942)

エルンスト・ルビッチ監督。 〈キャスト〉 キャロル・ロンバード:マリア・トゥーラ ジャック・ベニー :ヨーゼフ・トゥーラ ロバート・スタック :ソビンスキー中尉 第二次世界大戦下、ポーランドに侵攻してきたナチスドイツから逃れてイギリスへ脱出するために劇団員たちはヒトラーとその取り巻きに扮装して一芝居うつ。 ユダヤ人であり戦時中はドイツ市民権をナチスによって剥奪されていたルビッチは、コメディタッチながらここで徹底的にヒトラーとナチをコケにしている。 ルビッチは『桃

【映画の中の詩】『ノートルダムのせむし男』(1939)

主演チャールズ・ロートン、モーリン・オハラ エルンスト・ルビッチ監督『桃色の店』で引用されていたヴィクトル・ユゴーの愛と友情に関する言葉のシーンですが、この映画では原作からは少しアレンジされています。 原作は、 水を飲ませるシーンは『あしたのジョー』で白木葉子と丹下段平が慰問劇の出し物として再現! 諸般の事情で日本ではディズニーアニメ版などは『ノートルダムの鐘』表記。 参考リンク: 『ノートルダムの傴僂男』 (トーキー英語研究叢書 ; No.6) https://dl.

【映画の中の詩】『桃色の店』(1940)

エルンスト・ルビッチ監督。原題は『The Shop Around the Corner』。なぜ、この邦題に・・・。 主演マーガレット・サラヴァン、ジェームズ・スチュアート。 お互いが理想化している文通相手だとは知らずにケンカばかりの男女の話。 ジュディ・ガーランド主演『グッド・オールド・サマータイム』(1949)、トム・ハンクス&メグ・ライアンの『ユー・ガット・メール』(1998)はこの映画のリメイク。 最後の引用はヴィクトル・ユゴー『ノートルダムのせむし男』から。

【映画の中の詩】〈リメイクの難しさ~『教授と美女』から『ヒット・パレード』へ 〉

『ヒット・パレード』(1948)監督ハワード・ホークス、脚本ビリー・ワイルダー、一流ミュージシャン豪華共演。それなのに出来はいまいち… 1941年の『教授と美女』の百科事典編纂という設定を音楽史編纂に変えてハワード・ホークス監督自らリメイク。主演はダニー・ケイとヴァージニア・メイヨ。 今作はとにかく出演者が豪華。教授の一人をベニー・グッドマンが演じているのを始めとして当時の一流のジャズメンが演奏を披露してくれます。ジャズ好きの方にはたまらない映画なのではないでしょうか。

【映画の中の詩】『教授と美女』(1941)

ハワード・ホークス監督。 オーシェイ(バーバラ・スタンウィック)は情夫の裁判を有利にするため、百科事典編纂中の浮世離れした8人の教授達を利用しようとする。教授たちは振り回されながらもみんな彼女のことを好きになってしまう。なかでもスラング研究をしている若いポッツ教授(ゲイリー・クーパー)は結婚まで考えるようになり、情夫に利用されているだけだと気づいたオーシェイも純粋なポッツに惹かれていく…。 「スクリューボール・コメディ」といわれるジャンルの傑作の1本と言われているそうです。

【映画の中の詩】『フィラデルフィア物語』(1940)

『フィラデルフィア物語』(1940)ジョージ・キューカー監督。 キャサリン・ヘプバーン。 ケーリー・グラント。 ジェームズ・スチュワート。 この映画は『上流社会』(1956)として、後にミュージカル化されています。 グレース・ケリー、ビング・クロスビー、フランク・シナトラ主演。 登場人物は始終酒を飲んでいるし、プールが重要な舞台装置の役割をしているしで、観ていると溺れそうな気がしてくる映画。 酒に酔って水面の月をつかまえようとして乗っていた船から落ち、溺死した詩人というの

【映画の中の詩】『静かなる男』(1952)

監督のジョン・フォードはアイルランド系。イェイツが故郷アイルランドへの思いを込めて描いた架空の村イニスフリーが映画の舞台に設定されている。 主演の二人、ジョン・ウェインはフォードと同じくアイルランド系、モーリン・オハラはアイルランドのダブリン出身である。 『英米名詩集』稲村松雄, 荒井良雄 編,加藤恭平 訳 https://dl.ndl.go.jp/pid/1672478/1/77  ※ショートバージョンです。

【映画の中の詩】『イースター・パレード』(1948)

フレッド・アステア&ジュディ・ガーランド。 ショー・ダンスの相方女性に去られてしまったアステアがダンスには素人同然のガーランドを仕込んで見返してやろうとする・・・。というピグマリオン風のストーリー。 客の悩みに対し格言や詩を引用してくれるいきつけの店のマスター。 ジョン・ダンの『DEVOTIONS:17』から。「問うなかれ 誰がために鐘は鳴るやと」とヘミングウェイが引用して有名になった句が含まれる詩です。 いっときはほとんど忘れられかけ、詩史の傍流に追いやられていたジョン

【映画の中の詩】『ピグマリオン』(1938)

『マイ・フェア・レディ』の元になったバーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』の映画化。 この映画の脚本にはショーも参加していますが、しばしば問題となる結末の改変がすでに行われています。 ショーの戯曲ではイライザがヒギンズの元を去ったところで終わるのです。結末が変えられていることは試写を見て初めてショーは知ったという。 結局この改変はミュージカル化された『マイ・フェア・レディ』でも引き継がれることとなりました。 監督:アンソニー・アスキス    レスリー・ハワード 脚本:ジョ

【映画の中の詩】『~枯葉~夜の門』(1946)

名曲「枯葉」を生んだ映画『夜の門』(1946)。 マルセル・カルネ監督、ジャック・プレヴェール脚本。主演は当時売出し中だったイヴ・モンタン。 恋人だったエディット・ピアフの強力な後押しもあって抜擢されたとか。でも歌は歌わせてもらえず、ハーモニカに合わせて軽く口ずさむだけでした。 ラストシーンに流れてくる歌声はイレーヌ・ジョアシム。 元々、ジャン・ギャバンとマレーネ・ディートリッヒというスターありきの企画だったのが二人が降りてしまったためにモンタンとナタリー・ナティエという新人