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結論、新卒の就職は【入院施設のある総合病院】一択なのか?

眠い目をこすって、ファイト一択👍論文の査読返しから目を背けるためにnoteを書くことにしました。

さてここ数日twitterの技師クラタイムラインをざわざわさせている命題、「結論、新卒の就職は【入院施設のある総合病院】一択なのか?」について私見を述べます。あくまでも私見なので、元ツイの方への悪意も善意もありませんのであしからず。

1.新卒の就職は〇〇「一択」なのか?

ん?なんか命題ちがくね?と思った方、物事には多角的な視点が重要です。

俗に「他を選ぶ余地がない」「迷わずこれを選ぶ」といった意味で用いられる表現。選択肢が(実質的に)ひとつしかない、と表現することで、「複数の選択肢があっても他を選ぶことなどあり得ない」という意味合いが示される。

実用日本語表現辞典「一択」|Weblio 辞書

そもそも「新卒」に「複数の選択肢がある」ないし「【入院施設のある総合病院】という選択肢がある」という前提を疑ってみましょう。

エクセルのスクショでごめん

このデータソースは何かと言いますと、しばしば放射線技師の年収とかを語られる際に用いられる賃金構造基本統計調査です。このデータは令和3年度データのどれかからの切り抜きです。この統計を取った時期に日本には(従業員が10人以上いる事業所において)診療放射線技師として従事する人の数が約5万8千人いるそうです。そのうち企業規模が1,000人以上の施設で働く技師の数は約2万2千人であると。

企業規模1,000人の病院ってどのくらいなの?と思って検索してみると、石川県立中央病院の職員数が1,200人くらいらしいので(施設課とか設備課的なのは含まれてない?)、だいたい各県の公立病院のメインを張る施設がそれくらい、と見ていいでしょう。なのでここでは【入院施設のある総合病院】をだいたんに【企業規模1,000人以上】と大胆に置き換えます。

単純計算で、全放射線技師における(2214 ÷ 5793 )=38%の技師しか【入院施設のある総合病院】で働くことはできません。


エクセルのデータスクショで
ごめんなさい

こちらのデータは、とあるブログの管理者様が丁寧にまとめていらっしゃった「放射線技師の養成校の偏差値・定員一覧」を転記し、偏差値順に並べ、定員数を偏差値順に積み上げたものになります(ブログの管理者様に感謝)。何がびっくりって、現在5万人ちょいしか技師が居ないのに、今後は3,400人ずつ新卒者が量産されていくということですよね。5万人を勤続年数仮に40年で割っても1,250なので、昔の3倍くらいのペースで技師が量産されているのですが、技師余りについてはまた別の話で。

この記事を書いている山田🥨という人間は学歴差別者なのでアレなのですが、少なくとも「偏差値が高い方が傾向として優秀な放射線技師である可能性が高く、それゆえ就職先を選ぶ際に希望が叶う、自由度が高い」という論は一般論としても受け入れてもらえるとは思います。

積み上げグラフを見て頂ければわかるのですが、技師の偏差値上位38%となると群馬パース大学あたりになりますので、仮に4年制大学を出ていても企業規模1,000人以上(=【入院施設のある総合病院】)に新卒で入職するにはなかなか難しい、という話になってきます。当然例外もありますし、私の周りで例えば国際医療福祉大学卒でもガッツリ大学病院で勤務されている技師諸氏も多数いますのでガバガバ理論になりますが、傾向としてはこのようになります。

この項で私が何を言いたいかと言うと、「新卒の就職は〇〇一択」と言って「う~ん、やっぱり総合病院かなぁ~。でもクリニックでもいいかなぁ~」なんて悩める人間、選択権がある人間はマイノリティですよ、という事です。

2.【入院施設のある総合病院】【一択】なのか?

さて本題の命題に戻ります。今回のtweetの話題に限らず、しばしば「最初の技師の職場は色々経験できて、モダリティが揃っている総合病院の方がいい」「大きい病院から小さい病院へは転職可能だけど、逆は難しいから最初は総合病院がオススメ」という話はよく耳にします。

大学病院勤務技師14年目くらいの一例

さて、自己評価ですがそんなに間違っていないと思います。「大きい病院から小さい病院へは転職可能」は必ずしも当てはまりません。

近年ではスぺシャリスト志向からジェネラリスト志向へと転換期にあるかも知れませんが、大学病院や専門性の強い病院などにおいては放射線技師のモダリティ教育は依然として偏っていることが多いです。特に放射線治療などはそればっかりやっていて、配置の技師は夜勤も外されているということもあります。果たしてこのようなスキルチャートの人間が、他の病院へ簡単に転職できるでしょうか?(いや、できない)。

「総合病院の方が色々経験できる」「大きい病院から小さい病院へは転職が簡単」は誤りで、ことさら”転職”を考えた際には「マーゲン」と「マンモ」の経験がある方がよっぽど強いです。そして往々にして大学病院というところでは検診マーゲンや検診マンモは技師がやらない場合も多いです(マンモに関しては術前精査のみ、とか)。

3.小さい病院から大きい病院への転職は難しいのか?

これも誤りだと思います、というか「大きい病院を受けても受からない技師が、それを言い訳にしている」と思っています。

仮に上記のスキルチャートを持つ私が「少ない技師数で何でもやならきゃいけない中くらいの病院」に急に入った場合は完全にお荷物技師になります。一方、「整形外科単科病院でオープン型MRIを自在に操り医師と2人3脚で戦ってきた整形外科領域つよつよ技師」が、「めちゃめちゃマンパワーがあって技師が特定の部署に固定されがちな大学病院」に入ってきた場合はどうでしょう?そもそもマンパワーがあるので、ぶっちゃけ1人減ろうが増えようがたいして全体に影響が無いし、今すぐ夜勤に入って欲しいわけでも無い。むしろこれまで培ってきた特化型の武器を新しい施設に還元して欲しいと思うくらいです。「小さい病院で働いていたから大きい病院へ転職できない」のではなく、「あなただから、大きな総合病院に転職できない」のです。

4.結局、新卒の就職は何が「最適解」なのか?

そもそも他人の就職先に適だ不適だという事自体がナンセンスですが、せっかく最後まで読んでいただいているので私なりのメッセージを最後に贈らせて頂き、この稿を締めましょう。

【就職先は、「何がやりたいか」ではなく「何がやりたくないか」で決めるべき】

ちなみに私は「マーゲンがやりたくないから大学病院」という理由で職場を選びました。放射線技師という仕事に憧れがあっても、例えば「血とか外傷の患者を目の前にするのが嫌」「カテをやりたくない」「研究とか学会活動とかやりたくない」といった、好みや得手不得手の問題はあると思います。仕事を選ぶんじゃない!と怒られそうですが、嫌いなものは嫌い、苦手なものな苦手です。例えばマンモグラフィが大好きで一生携わりたいという熱意があってもクソみたいなお局に芽を潰され、「好きなことが嫌いになる」ことは多々あっても、「嫌いなことが好きなる」ことはほぼありません。ニンジン嫌いな人間がひたすらニンジンを食べ続ければいずれ好きになるかというとそんなことはありませんし、別にニンジンくらい食べなくたって他の野菜食べればいいだけなのですから。人生の3分の1は仕事であり(3分の1は寝ている)、その時間を「嫌いな事」で占めるのは大きな損失です。

「逆に全員にとっての最適解が同じって思ってる人がいることにびっくり。
」はその通りですが、敢えて1つ、最適なアドバイスとしては「やりたくないことはやらないで生きていった方が、楽しい」と私は思っています。

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