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No.32 1990年 6年生「卒業研究」の試行実践

 初等科6年生の総合的な学習には「卒業研究」があります。この「卒業研究」が時間割に位置付けられたのは1994年度からです。私が定年退職した2020年までの「卒業研究」は、研究課題の設定→研究課題の計画→研究課題の追求→研究課題のまとめ→研究課題のプレゼンテーションという学習過程を経ます。週に1時間担任が総合的な学習の時間に指導すると共に、「学年の時間」という水曜日の6時間目以降にある枠の中で、1回30分年間7回ほど初等科の全ての教員が数名の児童を担当して小人数のゼミ形式で行う「卒研デー」を行っています。フィールドワークは長期の休みや土日を活用して家庭の協力も得て行います。まとめ方は自分で選択した用紙で枚数に制限はありません。プレゼンテーションはポイントとなる資料を実物投影機でスクリーンに映して行います。6年児童と保護者が参加して5分間のプレゼンテーションを一人ずつ行い、その後に質問と答える時間を設定しています。作品は講堂に数日間展示しどの学年の児童、保護者でも参観できます。
 このような「卒業研究」のプログラムですが、正式に始める前に試行的な実践がありました。それは1990年度6年生での「卒業研究」の実践でした。
 ここではその時の3人の児童の作品をご紹介致します。この学年の児童の作品はその後の「卒業研究」を進めるうえで児童が具体的なイメージを描くことに大きな役割を果たしてくれたのです。まだ「卒業研究」が時間割にはないので、学級活動や前記の「学年の時間」をやり繰りして実践をしました。
 
研究テーマ①「あなたはファーストフードで24時間戦えますか?」

 現在では当たり前のファーストフード。30年程前ではまだ目新しい存在でした。そこに注目した児童の先見の明は素晴らしいです。まとめ方も実にユニークです。レポート用紙にまとめるのではなく創造的なプレゼンテーションも実践のねらいの1つでした。
 
研究テーマ②「野鳥ウォッチング」

 自然環境や野生動物を保護する運動もこの頃一般に注目されるようになってきました。野鳥公園で実際に野鳥を観察したり、日本野鳥の会に入会したりして野鳥の実態を探っています。体験を通して多くのことを学んでいることが分かります。
 
研究テーマ③「絵本を作ってみて・・・」

 4つの絵本を創作して「絵本を作ってみて・・・」という研究に発展させています。それぞれの絵本について、「テーマ」「内容のきっかけ」「みどころ」「苦労した所」「絵について」「その他」などについて考察をしています。
 
 1990年度6年生の「卒業研究」の実践が、現在の初等科カリキュラムとして定着している「卒業研究」へ繋がっているのです。
 
参考
聖心女子学院著『聖心の教育―女子校発の4・4・4制―』東洋館出版、2016年。
1997年度6年生「卒業研究」の実践


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