プライスレスなんて、ウソだ。
15,000円。
先日、クソみたいにぐっちゃぐちゃした20代をともにした人たちと飲みに行った。忘れたいのに脳裏にこびりつくイヤな思い出とか、思い出したくても思い出せないあの子の匂いとか、そんな極彩色の20代。
20代前半。銀髪だった、爪を黒く塗っていた、腰から常にジャラジャラ何かをぶら下げていた、両手全部の指にはまったシルバーリングをガチャガチャ鳴らしながらMacを叩いていた。
会社の納会をサボって遊んでいたら、納会の主催者に見つかりものすごく怒られた。20代半ば、なぜかこっぴどく怒られた人の部署に引っこ抜かれた。タンクトップで仕事してたチンピラはスーツを着て広告をつくるようになった。
インターネットという世界を知る。正確に言うと20代前半でMacを買ったのでインターネットは知っていたが、何度目かの思春期のチンピラにとってはインターネットは「エロの道具」でしかなかった。
中村勇吾さんのECOTONOHAだった。
インタラクティブとか、双方向とか、今はもう使われなくなった言葉かもしれないが、パソコンの前に自分がいて、画面にうつるソレを通して、向こう側にいる誰かのことを感じられる。鳥肌とはちょっと違う、ちょっと語彙力がなさすぎて申し訳ないのだけど、衝撃を受けた「インターネット」。
これに出会ってなかったら、きっと僕は腐っていたかもしれない。ようは根がチンピラなので、みんなのように「キャリア」とか「目的」のような「旗」を立てられないその日暮らし人間なので、周囲の成長についていけず、ドロップアウトしていたかもしれない。
違う、今日はインターネットの話じゃない。
そんな時間をともに過ごしていた男ども。オープンマインドで熱くてクレバーで体育会系で変態。さわやかなことなど微塵もない(失礼)。とてもキラキラした極彩色の20代。
20代後半で僕はインターネットに舵を切って転職した。でもことあるごとに集まってバカをする。ここには書けないこともする(法律は守ってます)。
30代に差し掛かるころにひとりふたりと結婚をし、子供持ち、家庭をもち、価値観を少しずつ変え、住む場所も変わり、物理的な距離も広がり、なかなか会うこともなくなった。
先日飲みにいったのは数年ぶりかな。前がいつだったかは覚えていないけど、話す内容はかなり現実的になり、子供の寝かしつけだったり、将来の話だったり、教育の話だったり。当時の僕らが聞いたら「おもんない」で一蹴するような話題かもしれない。
でも中身がほんとに変わってない。僕はみんなよりちょっと人生の引け目を感じながらも、インターネットというちょっと違う畑から彼らの仕事の話を聞いている。楽しい。
終電の1時間前ぐらいかな。腕時計を見て確認をしている。終電いつ?とも聞かれて生返事をした記憶がある。
もう電車で帰るつもりなんて毛頭なかった。
最寄り駅近くのコンビニで運転手さんに15,000円払ってお釣りをもらう。領収証はいらない。お釣りの小銭をもってそのままコンビニに入って、冷たい缶コーヒーを買う。
コンビニから出て缶コーヒーを開けて歩きだして思った。
プライスレスてなんだよ。15,000円かかるじゃねーか。激安だけどな。
んでは。
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