大学職員のキャリアパスを語ってみる

ゼネラリストにはなれない

 大学職員のキャリアにどんなイメージがありますか。一昔前なら国立大学職員は国家公務員、公務員と言えばゼネラリストのイメージが強かったのですが、近年、私の職場では従来のキャリアパス(=ゼネラリスト)から脱却しようと試みています。
 どうして?答えは簡単、ゼネラリストでは仕事が回らないから。大学の業務は教務、財務、入試、人事、総務、研究協力、広報など様々です。その分野ごとに求められる知識や経験も異なっています。参考に東京大学が公開している規則集を見てみてください。これ全部印刷したらいったい何ページになるんでしょうね。
(「気になる大学名+規則集」で検索してみるとだいたい公開されてます。)
この内容を全て把握するなんて無理ですよね。仕事をしていると知らない規則の話が出てくることもあります。
 また、大学の順守すべき規定は国の政策とも密接に関わることもあり、同じ分野にいても常に最新のルールはどうなっているか、自分の知識を更新し続ける必要があります。業務分野ごとに細かい決まりが多くあり、常に知識のアップデートが大切な職場なので、ゼネラリストには決してなれないと考えます。

暗黙の了解で存在していたキャリアパス
 

ゼネラリストでは仕事が回らないのは今も昔も同じこと。明確なキャリアパスは示されていませんでしたが、あの人は財務畑、教務畑などと表現される職員がちらほらと存在します。例えば、財務部で係長だった人が10年ぐらいして同じ部署に副課長として戻ってくることなどがあります。他には課だけ変わって、同じ部署内をぐるぐると移動することも。制度や仕組みとしてキャリアパスが整っているわけではないが、暗黙の了解で分野が固定されている人がいたということです。

暗黙の了解から明確な制度へ
 

 暗黙の了解では表立ってキャリアパスとして示すことができず、職員、特に若手はキャリアパスを描くことは難しいです。上司になると特定の分野をぐるぐるしている人がたまにいるけど、それはあくまでも例外で自分には関係の無い話に感じられます。そのような状態の中、私の職場では近年、キャリアパスを明確にし制度化しようとする動きがあります。明確に制度化することで①若手職員も自分のキャリアを意識しやすくなる、②制度として整っていれば、異動希望調書や人事面談でも発言しやすくなるなどのメリットが生じました。それまでは結果として、財務に強い職員になっただけだったのが、財務に強い職員になる道のりが明確化され、目指せるようになったのです。

人事異動の実状は変化しているのか


 明確な制度化を進めている中、実状は変化しているのでしょうか。この点については、もう少し経過観察が必要と感じています。試作の制度が施行され、その分野のエキスパートへの道はうっすらとでき、学内でも数人はその制度に乗っかって進んでいるのが見受けられます。人事面談でも以前は「将来、こういう分野に進みたい」と言っても、「そうだねー。希望は聞くけど、うちはいつどんなところに異動になるか分からないからねー」とお茶を濁されていましたが、最近は「そっか、専門分野に就く職員の方希望しているんだねー」に変わってきました。まぁ、だからと言って、全員の希望が満たされることはないんですけどね。
 この変化の兆しがしっかりと実るのか、もうしばらく追い続けてみようと思います。

終わりにーゼネラリストは無理だけれども
 

 さて、キャリアパスについて、話してきまして、ゼネラリストにはなれないと伝えましたが、大学のように多種多様な分野の仕事がある場で
私が働いてきた中で大切だと感じていることをお伝えして、今回は終わりにします。
 この職場で大切なのは、「自分の部署での仕事を鎖国状態にしないこと」です。たまにいるんですよ、自分の仕事内容・その仕事をやる必要性などは伝えず、他部署の事情は考慮せず、独自路線で進める人が。部署間を跨ぐ業務はまさに外交が求めれます。自分の立場上、譲れない点は押さえつつ、相手の立場上、譲れない点にも目を向けて、どうにか互いの部署が納得する形で業務を進めていく。ね、外交みたいでしょ。ゼネラリストになるのは無理だけれども、他部署の業務も理解しようとする姿勢、これはキャリアパスが確立されても、大切な心構えだと考えます。

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