猿はロックなんか聴かない
何故かはよくわからないが、ふと20年くらい前に感じた理不尽さを唐突に思い出したので、久しぶりに書き殴ってみることにした。それは私が上京して、とある音楽の専門学校に入学したばかりの頃の話になる。
その学校には週に2回くらい『バンドアンサンブル』という授業があった。ジャンル別のクラスに分かれ、それぞれのクラスで課題曲を決め、ライブでバンド演奏することを目標に、各パートで合わせる的なアレだった。
パートによっては、人数の偏りがあるため、この曲はボーカルとギター2人ずつ…とか、ドラムの〇〇さんはこの曲と、この曲を掛け持ちしてね…みたいな感じになっていた。ここで問題になってくるのが、バンド演奏する『課題曲』をどう決めるのかだった。
そもそもクラス分けがどうなっていたかというと、Aと Bは単なる人数合わせだが、
私は当時、音楽の道を志したにも関わらず、
そんなに多くのアーティストを知っているわけでもなく、好きなジャンルも狭く浅くだった為、このクラス選びにとても悩んでいた。
好きなアーティストを聞かれたら、
だいたいこう答えていた。
同じ日に入学した同期?と呼べるのか、非常に怪しい関係ではあるが、同じボーカル科らしい男子がいたので、人見知りの私は勇気を振り絞って彼がどんなアーティストが好きで、どのクラスに入るのかを質問してみた。
彼は『ポルノグラフィティ』が好きで、
『ポップス』クラスに入るとのこと。
まぁ納得だ。私もそんなに詳しくはないが、
デビュー当時からシングルCDはだいたい買ってるし、好きなアーティストではある。
ただ、バンドでやりたいジャンルかと聞かれると悩ましいところだった。
ここで大きな疑問が湧いた。それは今も尚、解決はしていない私にとっては生涯向き合っていかなければならない課題なのだが、
『ロック』って何?ってこと。
もちろん、『邦楽ロック』と『洋楽ロック』の違いくらいは答えることができる。母国語がJapaneseか否か。語弊はあるだろうが、クレームは受けつけない。それなのにEnglishをふんだんに使用するのも特徴の一つだ。これは完全に偏見だと自覚はしている。
では、『ポップス』との境界線ってどこ?
よく巷で耳にする『J-pop』と同義ですか?
じゃあ、『J-pop』ってなんですか?
『T.M.Revolution』はポップスですか?
『L'Arc〜en〜Ciel』はロックですか?
この問いに対して明確な答えをくれる人に
この歳になるまで出会ったことがない。
仕方なく、ポルノグラフィティ好きな彼と同じ『ポップス』クラスに入るのことにした私だったが、彼に出会うことは二度となかった。
何故なら、彼は入学初日で自主退学したからだ。理由は聞いた気がするが覚えていない。
だが、ボーカルのライバルは1人でも少ないに越したことはない。彼の歌唱力は知らないが。
ちょうど私が入学した翌月にライブをするとのことで、『ポップス』クラスでは、すでに課題曲の練習が行われていた。私は途中参加だったので、課題曲2曲のうち、どちらかのボーカルを増やす方向になり、とても気まずかった。
1曲目の課題曲は、『DEEN』の『JUST ONE』という曲だった。この時はじめて聴く曲だったが、歌いやすそうなバラードだった。
正直、バンドで歌いたい方向性ではなかったのと、すでにアサインされている先輩ボーカリストが元ヤン的なアレで、あまり気が進まなかった。
2曲目の課題曲はなんと、
『B'z』の『BAD COMMUNICATION』
え?アリなの?
『ポップス』クラスでB'z?
というのが第一感ではあったが、本来は『邦楽ロック』クラスでやるのが望ましいが、アコースティックバージョン(正式には(000-18))なのでOKという謎のルールが適用されていた。
これは先輩女性ボーカルがどうしてもやりたいと持ち込んだ曲らしく、ここに参加するのは、さらに気まずいので却下し、消去法でDEENを元ヤンの指導のもと、歌うことになった。
1ヶ月後のライブはなんやかんやでそれなりに成功し、特に歌いたい曲でもなかったし、パートナーとのコンビネーションもイマイチだったが、初ライブを終えた満足感と高揚感は、少なからず感じていた。さっそく次のライブに向けて、課題曲の選定が始まり、やっと私も意見を言えるフェイズに突入した。
『ラルク』か『TMR』を歌いたい…その意見に『ポップス』クラスの面々は猛反対をした。
『ラルク』が歌いたいなら、『ビジュアル』クラスに行けと。しかし私には強い信念があった。
『L'Arc〜en〜Ciel』は
ビジュアル系ではない。
これはラルク好きなら誰もが知っていることだ(と思ってる)そもそも『ビジュアル系』って音楽のジャンルじゃないよね?的な話だ。
仮にL'Arc〜en〜Cielのデビュー曲で女性的なな格好して、クネクネしながらメリーゴーランドで歌っていたとしても、『ビジュアル系』と括られるべきではないのだ。
ならばわかった。では、『TMR』ならどうだ。これはどのクラスで歌うべきなのか?
誰も答えられなかった。が、誰もやりたがらなかったので、最終的に『ミスチル』になった。
そして私はその授業には出なくなった。
決して、『Mr.Children』が嫌いなわけではない。むしろ大好きだし、入りたいくらいある。
それはさすがに嘘だ。私の入る余地はない。
それがきっかけになったのかはわからないが、
しばらくして、その学校を退学することになった。その理由を聞かれたら、その答えはきっと一つしかないだろう。
音楽性の違い
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