SHOEDOG 靴にすべてを。

ランニングシューズやスポーツアパレルで日頃からお世話になっているNIKE創業者PHILL KNIGHT氏の自伝を手に取りました。その名も「SHOE DOG 靴にすべてを」。

内容は、「NIKE」の創業、成長のお話で、世界旅行の際に見つけたオニツカ(=現:ASICS)の靴のアメリカ販売事業からスタートします。彼が如何にして陸上競技の中距離ランナーから、世界的なSHOE DOGに上り詰めたかが事細かに綴られており、ビジネスマンランナーには一見の価値ありです。

”シュードッグとは靴の製造、販売、購入、デザインなどすべてに身をささげる人間のことだ”
本文より抜粋

私が特に印象に残ったのは下記3点。
1. 日本との関わり多し
2. 感情のジェットコースターにのる起業家
3. 著者PHILL KNIGHT氏のビジネスへの向き合い方

1. 日本との関わり多し

冒頭でも触れた通り、この物語は1962年、PHILL KNIGHT氏が26歳の時に世界旅行で日本のオニツカ社を訪問し、ブルーリボン・スポーツ社という(この時は架空の)会社の代表として、アメリカでのオニツカ製シューズの販売権を得る所から始まっています。結果としてオニツカの米国市場への参入を助けた形になりますが、オニツカの幹部社員がブルーリボン社との取引解消を画策していることを突き止めたことで、最終的にはNIKEブランドを立ち上げる運びとなり、1971年にオニツカから独立しています。
また、NIKEブランド立ち上げ時には、九州の日本ゴム(現:アサヒシューズ、ブリヂストンの源流企業)へ生産委託を行っていますし、融資先として日商岩井(現:双日)とのやり取りをスタートしています。特に日商岩井は後にNIKEを窮地から救っており、PHILL KNIGHT氏も「日商という存在がなかったら私たちはどうなっていただろうか」と本文中で述べています。

https://www.sojitz.com/history/jp/era/post-30.php
NIKEとの取引については、双日のHP内「双日歴史館」にも記載があるようでうすね。

画像1


NIKE本社敷地内に造られた日本庭園「日商岩井ガーデン」
https://news.livedoor.com/article/detail/15341938/

NIKEが世界的有名企業になる過程に多くの日本企業が貢献していることは、日本人として誇らしい気持ちになりますね。

2. 感情のジェットコースターにのる起業家

「NIKE」は今でこそ誰もが知る世界的有名企業成長ですが、そこに至るまでに幾度も会社存続の危機を乗り越えてきたようです。「オニツカとの取引解消」「オニツカとの法廷闘争」「銀行口座凍結問題」「競合他社による関税査定法を利用したNIKEへの総攻撃」等、数々の”事件”に遭遇。ポケットモンスターでいう、当たれば一撃必殺、つまり、一歩判断を間違えれば会社が破産、という様な出来事ばかりでした。
また、総資産に占める純資産の割合が非常に小さいビジネスモデル(=資産の大部分が負債)だったので、手元の現金がつきかけて倒産という危機に何度も直面していたようです。(自社の製品を求める声に応え、身の丈を超えた会社の急拡大を続けていたためです。)
PHILL KNIGHT氏は、朝起きて最初に頭をよぎるのは返済しなければならない債務の事だと語っており、企業家として大成した人達の精神力には脱帽するばかりです。

そんな苦境を乗り越えてきたことで、AdidasやPumaといったシューズ業界の巨匠達を超える企業へと成長できたようですね。

3. 著者PHILL KNIGHT氏のビジネスへの向き合い方

PHILL KNIGHT氏は「”ビジネス”という言葉には違和感がある」と述べています。

”ビジネスという言葉には違和感がある。当時の大変な日々と眠れぬ夜を、当時の大勝利と決死の闘いを、ビジネスという無味乾燥で退屈なスローガンに押し込めるには無理がある。当時の私たちはそれ以上のことをしていた。
失敗が許される範囲はどんどん狭くなる一方で、掛け金はどんどん吊り上がっていった。しかし私たちが賭けていたのは金ではない。その信念が揺らぐことはなかった。一部の人間にとって、ビジネスとは利益の追求、それだけだ。私たちにとってビジネスとは、金を稼ぐことではない。
私たちはすべての偉大なビジネスと同様に、創造し、貢献したいと考え、あえてそれを声高に宣言した。何かを作り改善し、何かを伝え、新しいものやサービスを、人々の生活に届けたい。人々により良い幸福、健康、安全、改善をもたらしたい。”
本文より抜粋

ビジネスマンである身として、この文章には大きく心を打たれました。自分の行っているビジネスは世の中の役に立っているんだと、自分の日々の業務が巡り巡って誰かの幸福や健康、安全に繋がっているんだと、再認識させられました。

本書は、548ページから成る大作ですので、他にも感じたこと、学んだことがたくさんあります。(暇な時間があれば)もっと詳細深掘りした記事を書いてみたいと思います。

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