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貧血で倒れた

立て続けに3回も失神してしまった。

朝起きた時点で、今日はおかしい今日はヤバいなと感じていてもよかった気がする。視界が時折アナログテレビのようになるのに加えて、微かに吐き気も感じていた。


しかし私は立ちくらみに慣れすぎていた

私は水分補給を忘れがちだったり低血圧気味だったりするから、中学生くらいから軽い立ちくらみはいつものことになっていた。

冷蔵庫に食べる物がちょうど無くなったタイミングだったので、ほぼ昼食の時間だが外で朝食を食べたあと用事を済ませよう。
ちょっと立ちくらみするけど、店に歩いて行くくらいはできる。
そう思い水を何杯か飲み、着替え、荷物を持って靴を履き、外に出て玄関のドアを閉めた。

その瞬間、私は玄関のドアを見上げる形で地面に倒れていたのである。


気がつくと、倒れて頭を打った衝撃で後頭部に痛みが広がっていた。
朦朧としている意識の中、ドアノブを掴んでやっとの思いで立ち上がり、ついさっき鍵を閉めたドアにまた鍵を差し込んで……

鍵を開けたらまたさっきと同じ景色が広がっていた。再びコンクリートの地面に倒れていたのであった。


バイト中に寒さと立ち仕事の疲労で倒れたという経験は数年前にあったから、今回もしばらく横になって水分補給したら回復するだろう。そう思っていた。

しかし2回連続で倒れた時にこれはやばい、いつもと違うと初めて思ったのである。

冷や汗が止まらない。耳も膜が張っているようで音が遠く聞こえるとりあえずベッドに戻ろう。

散乱した荷物をかき集めてドアを開けて部屋に戻った……

次に気がついた時には洗濯機に寄りかかり、玄関先に置いてある自転車の下敷きになっていた。


動悸に加え、いつもの立ちくらみとは様子が違うことによる緊張と不安。立ち上がるとまたいつ倒れるかわからないし、そもそも吐き気と頭痛で立ち上がることができない。

とりあえずメガネを探し這いつくばってベッドに辿り着くまで、「なんで?」「なんで?」といううわごとを、ただただ虚空に放ち動く物体と化していたような記憶がうっすらとある。

今までの経験から、水分補給をして横になっていればとりあえず歩けるまでには回復するだろう。

なので、せっかくベッドに辿り着き横になったが台所まで戻って水を飲もう。低血糖ってこともあるかもしれないから、とりあえず水に砂糖を溶かして飲んで様子を見よう。

あ、あと玄関先に散らかした荷物と倒れた自転車もどうにかしなきゃ、とか色々始末を付けて、満身創痍で再びベッドに倒れ込んだ。

受け身を取ることができずに倒れて何度も頭を打ったが、なにぶん身動きが取れないため、病院に行くかどうかはしばらく休んでから決めよう。


すーっと眠くなり、夕方になるまで寝ていた。

目が覚めてもまだぶつけた頭が痛い。しかし、貧血や低血糖からくる頭痛との区別がつかないので、自治体の救急相談窓口に電話し、助言を求めた。

そのあと、これから受け付けてくれる開業医を紹介されたので電話をしてみたが、満身創痍のときに診療を断られたり、電話に出た受付だか看護師だかに、「ちゃんと食べなきゃダメじゃないか」と説教口調で言われるのは発狂するかと思うくらいしんどいものがある。

食べ物を切らしていて外で食べるか買ってきて食べようとして明らかな前兆も無く(気づかず)倒れたのだからあんまり責めないでほしい受け答えがちゃんとしているのは横になっているからであって全く大丈夫ではないのである……とか色々言いたいことはあったけれども。

救急車を呼んだ場合のことを考えて、ベッドから降り、這いつくばって部屋を片付けたり、保険証やお金を用意したりしたような記憶もある。

あとから考えたら、これほど満身創痍になりながらまだ体面を気にしていた自分に笑えた


日が沈んだ頃、なんとか歩けるような状態まで回復した。だいぶマシになったし、こんなご時世だし、と病院に行くかどうかかなり迷った。

頭を何度か打ってしまったことや、まだ頭痛が続きぼんやりしていること、数分の間に何度も失神したことなど、今まで経験したことがない症状が複数あったので、タクシーで総合病院に行き救急にかかることにした。

今まで、タクシーなんて自分なんかが乗れるものではないと思っていたので、タクシーのつかまえ方もよくわからなかったが。

ことの顛末を医師に話し、血液検査と心電図検査をしてもらい、点滴に繋がれ、血圧測定をされた時点で、また酷い立ちくらみが起きてしまった。

CTスキャンの順番を待ちながら、救急車で運ばれてくる患者や泣き叫ぶ幼い子供を見送りながら廊下に並ぶ長椅子に寝転がっていた。


結果、頭には何の異常もなかった。しかし、血液検査で失神の原因は貧血にあったことがわかった。ヘモグロビンの量が少ないそうである。

年齢的に、栄養の偏りや食生活の乱れが主たる原因となってこのような結果になったというより、おそらく生理の時に出ていく血の量が多すぎるのではないか、ということだった。

病院から自宅へ帰り、温めたレトルトのハヤシライスと、サラダを食べた。ただでさえハヤシライスは大好物なのだが、この夜ほど美味いと感じたことはない。


何せ、空腹の状態で目が覚め、朝食を食べに行こうとして倒れたものだから、この日一日砂糖水以外ろくに口にしていなかった。
体が食べ物を欲しているという感覚を久々に味わった。

倒れた衝撃でレンズが外れ歪んでしまったメガネを前に、レディース外来のある産婦人科を探しながら、むち打ちのときのような痛みのある首元に湿布を貼った。


ここ数年、月経に悩まされてきた。だからいつか病院でちゃんと診てもらおう診てもらおうと思っていながら先送りしていたことは、今回のことで猛省している。

新型コロナウイルスが未だ猛威を振るう中、私のような患者を診察してくださった病院の方々には感謝しかない。

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