「不登校・ひきこもり」「発達障がい」でも社会で活躍できるんだよ③ ~私が自立支援でかかわった6000人のご利用者さんから学んだこと~
今回は、親御さんからのご相談で、多くの方に共通する内容のものをご紹介したいと思います。相談内容が同じでも、個々の抱える背景などが違うので、同じ対応ですべてが解決するわけではありませんが、少しは胸のつっかえが取れるかなと思います。
子どもの「やる気スイッチ」の探し方を教えてください。
はい。子どもにやる気スイッチなんてありません。
では、お尋ねします。親御さんのやる気スイッチはどこですか?何があればそのスイッチが入りますか?大人でも、恋人ができたり、結婚が決まったり、子どもが産まれたり、または、経済的状況が急変したり、家族に何かお金が入用の出来事が起こったり、仕事がうまくいきそうなチャンスが巡ってきたり、、、長い人生の中でも、そのような限られた時くらいしかスイッチが入ることはなかなかありません。ましてや、外部との接触を断っているお子さんに、何かイベントが起こることはないですし、今現在、お子さんがそのような状態でなくても、そうそう簡単にスイッチが見つかることはありません。小学校低学年くらいまでなら、何か買ってあげるとか、モノで釣れることはあったとしても、それはほんの一時しか効果はありません。
お子さんは今、疲れた心をゆっくり回復しているか、もしくは、もう一度歩き出すためにじっくり力を蓄えている準備期間中なのです。自分には合わない環境を一度体験し、安全圏からじっくりと外部の様子を探っている状態なのです。本能的に、「今はまだ外に出る時期ではない」と感じ取ってるのかもしれません。そういったことに敏感なお子さんは非常にたくさんおられます。いつか必ず外に出ようとする時がやってきますので、焦らすことなく、じっくり温かく見守ってあげてください。あきらめず、信じて、そばで見守っていると、必ずそのタイミングに気づけます。できれば、お子さんを一緒に見守ってくださる方が、お一人でも多いほうがいいですね。
実は、不登校やひきこもり状態の方にとって「やる気スイッチ」はNGワード
自分の部屋、または自宅からも出ることが難しいお子さんにとってはもってのほかですが、ようやく外に出てみよう、どこかに通ってみようと思えるようになったお子さんを横にして、「どのようにすればやる気を出させることができるでしょう?」なんていう質問は絶対にダメです。とにかく、ご家族さんは、お子さんがどのような状態であったとしても、「今の」お子さんを絶対的に受け入れてあげてください。ほんのわずかの変化かもしれませんが、その変化をちゃんと見てあげてください。お子さんが前に踏み出していくためには、「こんな自分でも受け入れてもらえている」という自己有用感なくしては、そのスタートラインに立つことができません。「これでも頑張ろうと思って行動しているのに、親から見れば全然ダメなんだ、、、どうやってやる気を出せばいいのかなんてわからない、、、」と、また自分の殻に戻らさせてしまいます。繰り返しになりますが、「やる気」とかそんなんではなく、日々の、一つひとつの言動や変化をちゃんと受け止めてあげてください。そしてそれを一緒に共有してあげてください。一喜一憂してあげてください。そこから生まれる「きずな」は、お子さんだけでなく、親御さん自身をも楽にしてくれます。
そして、最後に一つ。そもそも「やる気」のないお子さんは決していません。お子さんはやる気の塊です。ただ、知識が少ないだけ。経験が少ないだけです。それを表現するのが不器用なだけです。時間をかけてでも、何か体験する機会をつくってあげてください。居住地域の教育委員会や私たちのところのような支援機関がおこなっている活動など活用されるのもいいと思います。「興味や関心」の芽生えが、かけがえのない始めの一歩となります。
私たちの仕組みだけではまだまだ十分とは言えません。ここ、鹿児島県大隅地域は東京都や大阪府くらいの広さであるにもかかわらず公共交通機関がほとんどなく、家族の送迎が無ければ支援に繋がることができません。特に、一人親や困窮家庭で支援が必要な方のために送迎の仕組みを充実していきたいです。