かるた_

「不登校・ひきこもり」「発達障がい」でも社会で活躍できるんだよ④ ~私が自立支援でかかわった6000人のご利用者さんから学んだこと~

今回も、ご相談に来られる親御さんの多くがお悩みになられていることに対して、お伝えさせていただいていることをご紹介したいと思います。これは、臨床心理など専門的な学びからの言葉ではなく、今まで関わったご利用者さんの姿から学んだことです。だからこそ、自信をもってお伝えさせていただいているお話しです。

「私の子育ての仕方が間違っていたのでしょうか?」

それは決して違います。最初の投稿でもお話ししましたが、こうしてお子さんのことを本当に心配し、相談される親御さんの育て方が悪いなんてはずがありません。もちろん、お金がたくさんあれば十分な教育や習い事をさせてあげることもでき、旅行など色々な経験も積ませてあげることもできます。貧富の格差によってどうしても生じる子育ての手法の違いはありますが、ただ、これだけが子育てのすべてではありません。私たちが取り組んでいる「ものづくりワークショップ」や「職場体験型ワークショップ」のようなものが、身近な施設などで実施されていないか一度調べてみてください。お金をかけずとも、興味や関心の芽生えにつながる「きっかけ」を与えてくださる機会は必ずありますよ。

子育ての中で、親御さんが一番難しいと感じられるのが「怒り方」です。特に、不登校やひきこもりの状態なので、「できるだけ神経を逆なでしたくない」「逆鱗に触れたくない」という思いで、言いたくても我慢されている親御さんが多いようです。

怒りたいときは怒ればいい。言いたいことがあれば遠慮せずに言えばいい。

親も人間です。イライラもしますし、プッツンとなることだってあります。仕事に、家事に、てんてこ舞いの状況で、お子さんが目の前でゴロゴロとゲームされてたら、そりゃ怒鳴りたくもなりますよね。何か手伝ってくれとも言いたくなりますよ。そんなときは、遠慮なく、お子さんに言いたいことを言ってやってください。たまにはガツンと怒ることも大切です。

ただ、怒り方には注意してください。これは一種の「スキル」でもあります。親御さんにも習得していただきたい「怒り方スキル」のお話をここでしておきます。

一番大切なことは、否定しないということ。自分のことを認めてくれない人の言葉は、いいことも悪いことも一切聞き入れてくれなくなります。前回お話した「孤立」につなげてしまうことになります。「だからあんたは学校に行けないのでしょ!」とか、「あんたみたいにイジイジしてたら、そりゃ友だちもできないよ!」などは絶対にダメ。仮に、ゲームやネットばっかりしてて、昼夜逆転してしまってたとしても、ゲームのことや、ネットをしていること自体を否定しないでください。今は唯一の心の拠り所です。その拠り所を否定されたら、自分自身を否定されているのと同じなので、「昼夜逆転してるから、あなたの健康が心配」というように、「親はどんな状況でもあなたの味方」ということが伝わる言い方で話してあげてください。何気なく料理を出すのではなく、「昨日も夜遅かったようだから、消化のしやすいご飯にしたからね」など、普段から体を気遣うような声掛けをしていると、次第に「これ以上心配かけるのはよくないな」と感じてもらえるようになります。

次に大切なことは、親も非があれば必ず謝るということです。手をあげることは絶対にいけませんが、怒り方を配慮しようと考えていても言い方がきつくなってしまうこともあります。親だから完璧に何でもこなせるわけではありません。ここで、一つ心掛けていただきたいことは、「自然体でいい」ということです。不登校やひきこもり状態だからといって、なんにも遠慮することはありません。自然体の親子でいてください。外部との接点がない中で、唯一、対人関係を学ぶ場がそこしかないからです。気づかいや心づかい、感情のコントロールなどを学ぶ場が、親子のやり取りの中でしかない状態で、遠慮して、腫れものに触るような扱いをしていれば、基本的な人格形成が一切できなくなってしまいます。何気ない会話や、テレビを観て一緒に笑ったり、意見が合わなくてケンカしたり、、、そんな自然のやり取りが大切です。ただ、ときには、勢いでキツイことを言ってしまうこともあります。そのときは、あまり時間を空けずに「さっきはゴメンね、言い過ぎたね」と謝ってください。お子さんも始めのうちは、何を言っても「うるさい!」とか「ほっといて!」など言ってくるかもしれません。で、機嫌が悪くなって部屋にこもってしまっても大丈夫です。親が謝る姿(方法)を見せていれば、お子さんからもちゃんと謝ってくれるようになります。思春期なので、なかなか言葉には出せないかもしれませんが、お腹がすけばまた部屋から出てきて、何もなかったかのようにご飯を食べてくれます。「ごちそうさま」が「ゴメンね」の時期もあると思うので、そのときは親御さんも意地を張らずに、「ありがとうね」と返してあげてください。

自然体でいることが「孤立」させない最大の手段

子どもの対応はマニュアル化できるものではありません。子育ては本当に難しいです。でも、この難しいことをやってしまうのが「お母さんの力」です。悲しいことに、いざというときはお母さんの力にはかないません。私たちは、お母さんの支えになることはできても、お子さんの支えの主軸はやっぱりお母さんです。お子さんは、「お母さんに支えてもらってる」「お母さんとつながっている」という感覚があるから、今を生きています。子どもは敏感です。お母さんの「遠慮」は「他人行儀」に感じ、「あれ?僕たちって親子じゃないの?家の中でも僕は『孤立』してるの?」と思わせてしまいます。前回もお話ししましたが、「孤立」は様々な悪い現象を引き起こします。だから、親御さんは常に自然体でいてください。

次のステップに進むためには、「こんなところなら自分は大丈夫」という目安が必要です。それが、不登校やひきこもり状態のお子さんにとって、まずは「家族」や「家の中」となります。学校が合わなかったとしても、初めて勤めた会社が合わなかったとしても、「自分の家族や家の中の雰囲気のところはないかなぁ」って探すことができれば必ず見つけることができます。どこか支援機関を見つけるよりも、まずは、「家族」「家の中」がお子さんにとっての居心地の良い場所の指標となるようにしてあげることから始めてあげてください。

私たちの仕組みだけではまだまだ十分とは言えません。ここ、鹿児島県大隅地域は東京都や大阪府くらいの広さであるにもかかわらず公共交通機関がほとんどなく、家族の送迎が無ければ支援に繋がることができません。特に、一人親や困窮家庭で支援が必要な方のために送迎の仕組みを充実していきたいです。