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【そのキャラ、いぶし銀だねぇ。】vol.1 ガナン=キアシト (『圕の大魔術師』)

こんにちは。図書館で働いたり、「アル」でマンガの記事を書いたりするあごたふと言います。ポケモン金銀は派です。(銀じゃない!?)

そのキャラ、いぶし銀だねぇ。」とは、マンガに登場するキャラクターの中でも「脇役」にスポットライトを当てて紹介してみる偏った愛を綴るあごたふ企画です。「この」ではなく「その」なのは、読んでくださった方にそう感じていただけるようなキャラ紹介を目指していきたいからです。

■「いぶし銀」とは

燻(いぶ)しを銀にかけ、味わい深い灰のような色にさせる技法を言います。転じて、見た目にパッと目を惹くような華やかさはないものの、「いぶし銀」の持つ渋さや奥行きになぞらえて「魅力的な人」の意味を持つようになりました。(時に揶揄する言葉で使用する方もいるようですが、ここではもちろん最高の褒め言葉としての表現です。)そのほかにも、こんな意味で使われることがあります。

・目立たなくても確かな実力がある
・縁の下の力もち
・ベテランと呼べるだけのスキル・能力や確かなキャリアを賞賛する言葉

そのキャラ、いぶし銀だねぇ。」ではマンガのキャラクターを以下の要素にまとめて紹介します。

・作品と「いぶし銀」キャラクターの紹介
・主役との関係性
・いぶし銀ポイント(名言や名エピソード)紹介

(※ネタバレを含むため、気になる方はバックしてくださいね。)

主役のような華やかさはないものの「いぶし銀」の魅力を発揮するあんなヤツやこんなヤツ。今日も今日とて輝く主役を、陰で支えるいぶし銀な彼らに、僕はスポットライトを向けてやりたい。

さて、第1回目のいぶし銀キャラクターはこちらです。

■ガナン=キアシト (『圕の大魔術師』)

記念すべき第1回目に語るいぶし銀キャラクターは『圕の大魔術師』に登場するガナン=キアシトです!

「いぶし銀」という語感からして渋いおじ様や職人をイメージする方も多いのではないでしょうか。そうです、彼こそまさにザ・いぶし銀の名にふさわしいイメージ通りのキャラクターでしょう。シリーズ化したいnoteなのに、いきなりクライマックスなキャラクターを紹介してしまったかもしれません。

それでは、まずこのキャラクターが登場する作品と彼についてご紹介します。

『圕の大魔術師』とは

『圕の大魔術師』とはgood!アフタヌーンにて泉光先生が連載されているビブリオファンタジーです。セドナというカフナ(この世界の司書のこと)との運命的な出会いによって、自らもカフナを目指すことになった本を愛する男の子。様々な困難を乗り越えて自分の運命を切り開いていくだけでなく、世界の命運の鍵を握る存在へと成長していく物語です。

練りに練られた圧巻の物語は数多くの魅力的なキャラクターによって支えられています。その中の一人が彼なのです。

「ガナン=キアシト」とは

主人公のシオ=フミスが働くガナン石工業の親方です。僕は並並ならぬ敬意を込めて「ガナン親方」と呼んでいます。彼、実はかなりの実力者なのです。

▼特筆すべきプロフィール

酒好き(現場でも呑んじゃう豪快な人柄)
礼節は弁えている(実は紳士的で村人からの人望も厚い)
石工業を営むので家の設計もできる(本職の腕は確かなものを持つ)
博識(学者を目指していた名残か)

ガナン=キアシトと主役(シオ=フミス)の関係性

主役を食いかねないスペックとキャラ立ちの彼ですが、真の主人公シオとの関係性はどのようなものなのか。一言で言えば「師弟関係」です。

▼シオから見るガナンとの関係性(時系列)

①司書を目指す

②ガナンに出会う

③ガナンのもとで心身ともに鍛錬してもらう

④ガナンに司書試験会場までの険しい道のりを案内してもらう

⑤カフナに合格、故郷からの旅立ち(ガナンとの別れ)

成長物語に欠かせない存在と言えば、師匠キャラです。『圕の大魔術師』で言えばガナンの存在抜きに主役のシオの成長はありえませんでした。カフナ(司書)という職業の特別さが時代背景とともに語られているのですが、カフナは「都会の金持ちの女性がなるもの」なのに対し、シオは全てが真逆の境遇だったのです。「カフナになりたい」と真剣に語る彼を前に嘲笑ってみせるガナンですが、その真意が冒頭で紹介したこのコマに込められていたのです。

僕は、主人公であるシオがカフナになるという夢を実現できたのは4人の登場人物がいたからだと思っています。

▼シオの夢を実現させた陰の立役者

①セドナ=ブルゥ(カフナ)
②ティファ=フミス(シオの育ての親のような存在)
③サキヤ=メネス(幼馴染のような存在)
④ガナン=キアシト(師匠)

この物語の第二の主人公でもあるキーマン「セドナ」。彼女との運命的な出会いがなければシオがカフナを志す第一歩を踏み出すことはなかったでしょう。(憧れ、希望、きっかけ)

また、育ての親のような存在のティファは、いじめられていたシオに対して本を読むことの大切さを唱え強く生きることを教えてくれました。(挫折を支える存在)

いくら本が好きでも差別的な待遇によって本を読むことができなかったシオと図書館の橋渡し役となったのは幼馴染(って言っていいですよね?)のサキヤちゃんです。(本好きの仲間、強い味方)

そして、カフナの目指し方を具体的に指導してくれたのがガナン親方なのです。(指導者、教育者)ガナン親方なしには司書試験会場までシオが辿り着くことすら叶わなかったのです。「田舎者、貧乏、混血」三重苦を背負ったシオはそれでも人間関係に恵まれていたのです。

本当は全員がいぶし銀キャラクターなのですが、今回はガナン親方に絞ります。

■ガナン=キアシト「いぶし銀だねぇ」ポイント

ガナン親方のいぶし銀なポイントは主役に自信をつけさせる天才だということ。激励の達人と言っても差し支えないでしょう。見込んだ相手には、自分の持っている手段を惜しみなく伝授する、実力を兼ね備えた一流の指導者なのです。

また、『圕の大魔術師』に登場するキャラクターの中でも屈指の名言製造機(いや、人ですが)。主役に語りかける言葉の一つ一つがいぶし銀だからこその説得力を持って主役(シオ)を突き動かし、鍛え上げるのです。その頼もしさと爽快さたるや。

主役(シオ)を這い上がらせた「いぶし銀」な親方の名言をご紹介しましょう。

▼最後尾だからこそ味わえる特権がある

▼本物のかっこよさって何なのか

▼豪快なだけじゃない、論理的な考え方に基づく説得力

▼自分の物語を転がすためには歩み寄ること

▼夢を叶えることがゴールじゃない

いぶし銀の条件を全て兼ね備えた人格です。全てがあくまでも「主役の夢を叶えるため」という一貫性

「このキャラ、いぶし銀だねぇ。」

■僕はこれからも、いぶし銀な奴らにスポットライトを当てていく

いかがでしたでしょうか。

どうしても、物語を楽しむときは華やかな主人公に目を奪われがちですが、魅力的な脇役にも根強いファンがいるのではないでしょうか。そういったあまり掘り下げられていないキャラクターたちにスポットライトを当てて、彼らの生き様を紹介できたらなあと思っています。

今年は、このテーマでnoteの連載に挑戦していこうと思います。不定期にはなりますが、見守っていただけたら嬉しいです。

また、初回は図書館をテーマにしたマンガから紹介させていただきました。何を隠そう僕の本業は図書館員です。その傍ら図書館に関することをnoteやアルの記事やラジオで綴っています。

図書館のお仕事にも興味がある、という方はフォローしていただけたら嬉しいです。それでは、また次回。


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