サニーサイドスリープオーバーの歌詞の超訳解説


導入

前回ばってん少女隊のureshiinoの歌詞の日本神話との関連を中心に解説記事を書きました。

あれから半年して、ばってん少女隊5thフルアルバム「九伝」がリリースされ、前述のureshiinoを含め、さらに日本神話・伝説をモチーフにした曲があったので順に解説していこうと思います。たぶん。

手始めに、サニーサイドスリープオーバーから。

※解説といっても、大学で専攻したわけでもないただの素人がググって出てきた記事で得た知識を牽強付会して書いてる記事です。
あくまでも”超訳”。「解釈に飛躍がある」「トンデモ」ということで。

サニーサイドスリープオーバー

ばってん少女隊のサニーサイドスリープオーバーを聞いたことないって人は、この記事読まなくて良いので とりあえず聴いてください。
ウ山あまね提供曲で、ポップな曲調に対して、寂しげな歌詞と歌い方のコントラストが最高。

で、サニーサイドスリープオーバーの歌詞がこちら。

サニーサイドスリープオーバーの歌詞

サニーサイドスリープオーバーのタイトルの意味ですが、
サニーサイド(sunny side)はそのまま”日の当たる場所”とか、ほかには”望ましい方向”というニュアンスがあるみたい。
スリープオーバー(sleep over)は”外泊”て意味があるみたいです。
ぼくはてっきり”寝過ごした”て意味だと思ってた。

サニーサイドスリープオーバー=”日差しの当たるところでお泊り”?

タイトルだけだと「女の子のお泊り会」てイメージしちゃうけど、それにしたら少し物憂げな歌詞ですね。
第一印象として、女の子が一人で夜を過ごしているって情景を思い浮かべました。

このサニーサイドスリープオーバー(以下サニスリ)のタイトルの意味や歌詞の内容を理解するのに大きなヒントになるのが、日本神話の「天岩戸伝説」です。
これはばってん少女隊のプレスリリースで、この曲が「天岩屋戸伝説」をモチーフにしていることが明記されているからです。

宮崎県高千穂町にルーツがあるとされる「天岩戸伝説」をモチーフに

https://battengirls.com/contents/761196

では「天岩戸伝説」とは一体どんなストーリーなのか?
サニスリの歌詞のどのあたりが関連しているのかを調べてみました。

天岩戸伝説について

せっかくなのでプレスリリースにある宮崎県高千穂町の天岩戸神社、そのHPにこの伝説についての記事があるので、こちらをどうぞ。

ざっとした概要は、以下の感じ


太陽の神様のアマテラスが住む天界に、弟のスサノオが訪ねてきました。
ところがスサノオは天界で大暴れ。
それに姉のアマテラスは心を痛めます。
そしてアマテラスは洞穴に一人籠もり入口を大きな岩の戸で塞いでしまいます。

太陽が隠れてしまって世界はまっくら。
困った天界の神々はいろいろ知恵を出して、アマテラスに出てきて貰うよう工夫します。

岩の戸の前に大きな勾玉を作って置いてみたり、朝を告げるニワトリを鳴かせてみたりしますが上手くいきません。

そこでアメノウズメが舞を披露すると神々は大いに盛り上がります。
その声を聞いたアマテラスが「なにをそんなに盛り上がっているの?」と岩の戸を少し開きました。
そこに鏡をかざすとアマテラスは自分の姿を別の尊い神様と見間違えます。
アマテラスが、もっとよく見ようと更に岩の戸から身を乗り出します。
そこで、すかさず力持ちのタジカラノオが岩の戸を開けきってしまいます。

そしてようやくアマテラスは外に出てきてくれました。
世界はまた明るくなりました。
めでたしめでたし。

日本神話でも一番有名かもしれないこのお話。
これをモチーフしたのならサニスリの歌詞から「一人で夜を過ごしている」て印象を持つのも頷けますね。
つまりサニスリの主人公は日本の最高神である天照大御神ってことです。
サニスリ、なんかすげぇ。

歌詞の中の天岩屋戸伝説

とはいえ歌詞には”天岩屋戸”や”アマテラス”なんて単語は出てきませんね。
じゃ、どのあたりが「天岩戸伝説」なのか見ていきましょう。
ここから牽強付会な部分が多くなります!たのしい!

ちょっとだけ片目だけで

冒頭の「ちょっとだけ片目だけで アイコンタクト」の部分。
アマテラスは、父親のイザナギが顔や体を洗った際、その左眼から生まれた神様です。つまり片目から生まれた神様ってことです。
この「片目」で冒頭からアマテラスのことを暗喩しているんですね。

なお同時に右眼からはツクヨミ、口からはスサノオが生まれています。
なのでスサノオは弟ってことなんですね。

やたら響く鳴き声

一番の「やたら響く鳴き声」の部分。
アマテラスが隠れて困った神々が立てた作戦のなかで、朝を告げる長鳴鶏(ながなきどり)を岩の戸の前で鳴かせるというのがありました。
これが日本の文献で初めて鶏(ニワトリ)が描かれたものだと言われてるそうです。
思春期の女の子のように、そのニワトリの声を疎ましく感じるアマテラス。りるあちゃんがよくするプク顔のような ふくれっ面が目に浮かぶようです。

夜を保つような柱

一番の「夜を保つような柱あふれる部屋で待ち合わせ 」の部分。
神様の数え方は「一人」「二人」ではなく「一柱」「二柱」と数えます。
ここはアマテラスが隠れてまっくらになってしまった世界で神々が集まって困っている情景を描いているんですね。

鏡より照らせたらいい

サビの「鏡より照らせたらいい」は天岩戸伝説のクライマックスであるアマテラスが少し岩の戸を開いた際に鏡をかざしたシーンそのものです。

なお、この鏡がいまも天皇に代々継承される三種の神器のひとつ「八咫鏡(やたのかがみ)」で、いまは伊勢神宮に保管されています(実物あるんかーぃ)。

また”咫”とは親指と人差し指を広げた長さを表す単位で、その八倍の”大きい鏡”て意味だそうです。

当時の鏡は写りが良くないのでアマテラスが鏡に写った自分を別のだれかに見間違えたってのは仕方なかったんですね。
…そもそも鏡が一般的でない時代、自分の容姿をみんなどのくらい把握してたんだろう。ブスもブスて自覚ないまま暮らせていたのかな…可愛く生まれたかったなぁ(ブスのどうでもいい呟きです、無視してください)。

ちょっとだけ鼻歌はもうやめて

二番の冒頭「ちょっとだけ鼻歌はもうやめて」の部分。
これも天岩戸伝説ワンシーン、アマテラスが外の騒ぎが気になっていて顔を覗かせたシーンを、アマテラス側から見た情景なんでしょうね。

逆に一番の「きっと手を叩いても 聞こえないことでしょう」は、アマテラスがなかなか出てきてくれなくて悩む神々の苦労を描いているんでしょうか。

鹿の骨の罅

「眩い日々も 鹿の骨の罅も たぶんあなたの声」の部分。
「罅」は「ヒビ」と読みます(読めなかった)。

天岩戸伝説とは直接関係ないのかもしれませんが、中国や日本の古い時代、動物の骨を焼いて割れたヒビによって吉凶を図る占いが盛んだったようです。
そのヒビの解釈から多くの漢字が生まれたとか。

アマテラスは女性ですが、昔の日本では女性が首長となる例が多かったようです。それは女性が巫女として宗教の象徴であったためで、こういった骨の占いも行っていたんですかね。

天皇は伝統的に「シャーマン」としての機能を担ってきたってだれかが言ってたのをどこかで聞いたことがあるなー。

ここあやふや~

500個もある

二番のサビ前の「500個もあるのに足りないこと 」の部分。

伝説ではアマテラスを出迎える準備として岩の戸の前に常緑樹(一年中葉っぱが緑の木)のサカキが飾られたとあり、そこに同時に勾玉が飾られたとあります。
その勾玉が「八尺瓊勾玉」で、古事記では「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)の五百津之御統珠(いおきつのみすたま)」と表現されています。
「八尺瓊勾玉」は「八咫鏡」と同じように、尺という長さの単位の八倍もある大きな勾玉という意味です。
そのあとの「五百津之御統珠」は「八尺瓊勾玉」を周りを500個の珠で飾ってあるという意味じゃないかと言われているそうです。

つまりこの歌詞はアマテラスに捧げられた「八尺瓊勾玉」のことを暗喩してるんですね。

この「八尺瓊勾玉」も前述の三種の神器のひとつで、いまは皇居の剣璽(けんじ)の間に保管されているそうです。(やっぱり実物あるんかーぃ)

改めてタイトルの意味を考える

では改めてサニーサイドスリープオーバーというタイトルをどう受け取ればいいのか。

サニーサイドは”日の当たる場所”て意味で、これはアマテラスがいる日の当たる世界のこと。
スリープオーバーは、そのアマテラスが岩戸に”籠もった”ことを指す。
つまりサニーサイドスリープオーバーとは、日の当たる世界がアマテラスが岩戸に籠もって失われている状態のことかな。
ん?
というか、なにかの暗喩ではなく「サニーサイドがスリープオーバーする」=「日の当たる世界が(岩戸に)籠もってしまった」と天岩屋戸の状況を端的に言い表した英語になってるんじゃないかな?。

そう!タイトルからずっと「天岩屋戸」て言ってたんですよ。

ええ…「天岩屋戸」を「サニーサイドスリープオーバー」で言うのかっこよすぎない?
しかも言い得て妙というか、たしかにしっくりくる!
もし英語圏の人に「天岩屋戸ってどんなお話なの?」て聞かれたら「一言で言えばサニーサイドスリープオーバーだよ」て・・・いつか使ってみたいわー。

最後に

というわけで超訳解説してきました。
ポップでガーリーな言葉使いで神代のお話を語っているってとこがなんともばってん少女隊らしい曲だなぁと。
そして、個人的にはタイトルの意味にハッとして、壮大なフラグ回収のような感覚を得られたのもすごくテンション上がりました!

話はガラッと変わるんですが、ぼくは数年前からばってん少女隊の課題を天岩屋戸伝説と重ねることがしばしばでした。

ばってん少女隊は同じ時期にデビューしたとき宣や東北産に比べても「売れている」とは言えません。
いろんな要素があるので一概に言えないでしょうが、その一因として地理的な不利を感じているんじゃないかな、と。

東京では2000人超の会場もソールドアウトするのに、地元福岡では1700人程度の会場も埋まりません。
バラエティやいろんな企画も長続きしないのはメンバーの移動のコストや時間の調整が難しいってこともあるんじゃないかな、と。
福岡はたしかに成功した地方都市だと思うし九州という大きな地域のハブであることは間違いないけど、そこでエンタメをビジネスにする難しさは外部から想像する以上のものがあるんじゃないか、と。

パトレイバー劇場版2で東京を描写するこんなセリフがあります(唐突ですね)。

この街では誰もが神様みたいなもんさ。
居ながらにしてその目で見、その手で触れることのできぬあらゆる現実を知る。
・・・何一つしない神様だ。

このセリフは、ばってん少女隊から見たファンの一面を表しているなぁ、と(いちヲタクの個人的な見解です)。

彼女達からしたら、関東やそのほかの地方のファンに九州・福岡に来てもらうように工夫するその苦労が、天岩屋戸の前の神々の苦悩そのままだったんじゃないかと。
ばってん少女隊は、天岩屋戸の前で舞を奉納したアメノウズメそのものだなぁと思ってたんですよね。

サニスリ以外にも、今回のアルバム「九伝」には”旅”や”出掛ける”という心理面・物理面での”移動”、”距離感”に関わる曲や歌詞がすごく多く、きっとそれはもう一つのアルバムのテーマなんだろうと思ってる。
【例】
トライじん:海をわたって来た渡来人
it’s 舞 calling:天孫降臨はニニギの旅のお話
ureshiino:旅に出ます
でんでらりゅーば!:出られるならば出ていくけど
あんたがたどこさ:あなたはどこ・美味しいものを食べに行きたい
BAIKA:お別れの曲

いまのばってん少女隊の状況、移動や宿泊にかかるコストの高騰も併せて考えてみれば、来年2025年から東京”も”活動拠点とすることは当然の結論かもしれない。
でも、だからこそ、このサニスリでは、九州を離れなければならないばってん少女隊の心中の暗く、苦しく、悔しい想いを晒しているようで、ファンとしては力不足や申し訳なさ、後悔の念を禁じ得ない。

来年のばってん少女隊がどうなっているのかいまは全く想像が付かない。
瀬田さん、新メンバー、東京拠点の意味…。

それでもぼくはばってん少女隊の楽曲をはじめ、衣装・振付・MVなどのクリエイティブを楽しみにしているし、ずっと応援しつづけると思っています。

その日が来るまで。

蛇足

蛇足です。

三種の神器

天岩屋戸伝説には「八咫鏡」と「八尺瓊勾玉」の三種の神器のうちのふたつが登場します。
もう一つは?というと「天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)」です。

この剣はスサノオがヤマタノオロチという怪物を退治した際、その尻尾から見つけた剣です。
そしてスサノオはアマテラスとの仲直りの証としてこの剣をアマテラスに献上しました。

三種の神器はその後アマテラスから孫のニニギに渡されます。
このニニギこそがit’s 舞 callingのモチーフである天孫降臨伝説の主人公であり、ureshiinoで登場したトヨタマヒメの伴侶であるホオリの父親です。
サニスリ > it’s 舞 calling > ureshiino は繋がったストーリなんですね。
胸熱展開!

天叢雲剣

「天叢雲剣」は現在は熱田神宮に保管されています(やっぱり実物がある)。
また、その形代=レプリカが「八尺瓊勾玉」と同じ皇居の剣璽の間に保管されています。
だから剣璽の間、というんですね。

「天叢雲剣」は名前のとおり雲を呼び雨を降らせる力があるそうです。
今上天皇の即位の日、即位の儀式のため「天叢雲剣」が剣璽の間から持ち出されると東京では雨が降り始め、儀式が終わると雨が止み虹が掛かりました。
いまだ形代であっても神代の力を宿しているんですかね。

英雄ヤマトタケルが東征=関東から東北までを平定した際に「天叢雲剣」を持っていたとされます。
その際、敵に囲まれ火を放たれて絶対絶命のピンチとなりました。
そのとき「天叢雲剣」を振るって周りの燃える草を薙ぎ払いピンチを脱したことから「草薙剣(クサナギノツルギ)」とも呼ばれます。
ばってん少女隊も来年から東京も活動拠点とするので、ヤマトタケルの東征のような快進撃を期待したい。

そういえば、春乃きいなさんは幼稚園のおゆうぎ会でスサノオのヤマタノオロチ退治の演目して、そこでスサノオと結ばれるクシナダヒメを演じたって話をしていた記憶がありますね。
不思議な縁ですね。

アメノウズメ

天岩屋戸伝説に登場する天之鈿女命(アメノウズメノミコト)は日本最古の踊り子であり、芸能の神様としても信仰されています。
東京だと新橋駅に近い烏森神社に祀られているが有名ですね。
ぼくもばってん少女隊の成功や無事を祈願しにお参りしたことが何度もあります。

アメノウズメは天孫降臨伝説にも登場します。
ニニギが高天原から葦原中つ国に向かう際、その前に猿田彦という神が立ちはだかります。
これを説き伏せ、ついにはその妻となったのがアメノウズメです。
前作の登場人物が再登場するほど燃える展開はないですよね。

さらに、九伝を通して聴いた人はすでにお気づきでしょうが、10曲目でんでらりゅーば!feat.Daokoでは新しいverseのなかで「さながらアメノウズメのようなヴァイブス」とあります。
Daokoさん本人が語るように、この曲はこのアルバムを通した流れと、そのさきを歌った曲になってるんですね。
胸熱!

またDaokoさんが、アメノウズメ・アマテラスなどの神様を演じたムービーがあります。
すごくカッコいい。

タヂカラオ

天岩屋戸伝説に登場する天手力男命(アメノタヂカラオ)は、相撲の起源の神様として知られています。
古代からアメノウズメのダンス、タヂカラオのスポーツというのはエンタメの中心だったんですね。

タヂカラオについてはスタダ界隈の人だったら聞き慣れた神様の名前です。
ももいろクローバーZの「天手力男」でお馴染みですね。
ばってん少女隊ってスタダでは、ももクロとは少し離れたグループなのかなと思ってたけど、こうして見るとその系譜にあると言っていいのかもしれないですね。


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