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毎月リレー投稿 第7回「山と生理」

みなさん、こんにちは。お久しぶりです。
NPO法人お客様がいらっしゃいました.のメンバーがそれぞれ個人的に興味関心のある生理と関わるテーマを設定し、調べ、noteにアップしていくリレー投稿。
第7回は、山野が担当します。
今回のテーマは「山と生理」です。

※本投稿は個人的な視点や経験から書いており、専門的な知識に基づくものではありません。いち大学山岳部員の話として捉えて頂けると幸いです。

【目次】
1テーマ設定の理由
2山におけるトイレ事情
3実際に生理になったら
4生理への対処法
5山岳部における生理の認識
6最後に

1テーマ設定の理由

 私は山岳部に所属しています。生理当事者は、山に登る時、どのように生理を対処しているのか、生理とどのように向き合っているのか、なかなか知る機会はないと思いますので、個人的な視点と経験からではありますが、山と生理について今回は書いていきたいと思います。

2山におけるトイレ事情

 まずは、山におけるトイレ事情についてです。結論から述べると、山にトイレはほとんどありません。下界に近く車道が整備されているような所では、公衆トイレやキャンプ地のトイレを使用します。しかし、アルプスのような山小屋が整備されている山々であったり、ロープウェイなどで気軽に行けるような、登山客の多い山でない限り、山の中にトイレはありません。さらにトイレがあったとしても、仮設トイレや汲み取り式トイレで、トイレットペーパーもそもそも備え付けられてないことの方が多いです。そのため、山の中でお手洗いを済ませる時は、トイレットペーパーを持って、近くの茂みや木陰で済ませることがほとんどです。
 山小屋に整備されているトイレは、本当に貴重で維持費もかなりかかるので、トイレの出入口に集金箱が設置されており、トイレを利用した人が指定された額を寄付するという方式がとられていることもあります。標高の高い山であるとトイレに溜まった汚物は、コンテナに入れられてヘリコプターで回収されているので、維持が大変であることも頷けます。このようなトイレ事情であると、普段のように生理用品をこまめに交換することは難しいことが予想できると思います。実際私が山に行った時には、朝起きてから行動を開始するまでと幕営地に着いてから寝るまでの2回しかナプキンを交換できなかったことがあります。

3実際に生理になったら
 
 では山岳部員は生理になった場合、どのように対処しているのでしょうか。
 生理と山行が被ってしまった場合、山行を休んだりリスケジュールして山に行かないという選択が1つ目に挙げられます。山は普段の生活とは全く違った環境であるので、自分の体調でさえも予測できないことが多いです。また、歩荷(重い荷物を背負い山を登る体力トレーニング)など普段より体力を使う山行であったり、沢登り(水の流れる谷を上流に向かって詰めていく山登りの一種)など全身が濡れて冷えてしまうような山行は、生理中の体にかなりの負担がかかるため、自分の体のために山行を休むという判断は賢明だと考えます。実際、私も生理と被ってしまい、山行を休んだことがあります。その時は生理なのだから、山に行かない選択をしたことは正しいと頭では分かりながらも、自分がどうしようもできないことで、自分のやりたかったことが制限されてしまうことに、もどかしさと悔しさを感じました。
 生理中でも、山に行くという選択肢ももちろんあります。私自身、生理の症状はあまり重くないので、生理が終わりかけの時には山に行ったこともあります。しかし生理用品は長時間変えられないことがほとんどで、お風呂にも入れないので、衛生的な環境はかなり悪いです。さらに1日中動き続けるので生理用品のごわごわ感や不快感をより感じます。また生理による貧血や倦怠感、腹痛、乳房の痛みなど様々な身体的な症状が普段より強まったり、いつもと違う症状が出る懸念があります。私自身も生理中に山に行った時には、お腹の違和感や乳房の痛み、いつもより強い疲労感、メンタルの揺らぎなどを感じました。

4生理への対処法

 漏れが気になる場合は、タンポンを使用したり、ナプキンとタンポンの併用、吸水ショーツとナプキンの併用などが効果的です。私自身は普段と違う山という環境の中で、日常と違うことをすることに抵抗があったので、普段通りナプキンのみ着用していました。ナプキン1枚で対処できないほどの生理だと、生理による負担が大きいので山に行かないほうがよいかなと個人的には思います。また臭いが気になるという方は、デリケートゾーン用のシートで拭いたり、使用済みの生理用品をジップロックにいれて保管するという方法もあります。最近では使い捨てのサニタリーボックスも売られているので、それを使用すれば、見た目への抵抗感は軽減されると思います。
 また、下山するまでお風呂には入れないので、私は生理でない時も、おりものシートを常時着けるなどしてショーツの汚れを防ぐようにしています。

5山岳部における生理の認識

 山岳部において、生理はどのように扱われているのか、ここでは触れていきたいと思います。山岳部では、山に行く際には計画書を作成します。その中に装備という項目があり、女子部員がその山行に参加している場合は、「生理用品(任意)」と書かれています。形式的には、女子部員が参加するということはその部員が生理である可能性があるという認識はあると思います。
 しかし、部員間で大っぴらに生理について話すかというとそうではありません。もちろん個人の性格や人間関係も関わるので一概には言えませんが、生理であることを伝えにくい、聞きにくいのが現状かなと思います。私自身、「女の子の日と被ってる?体調、大丈夫?」と男子部員から聞かれた際には答えたことはありますが、自分から今日は生理だと伝えることはあまりしません。体調不良の女子部員に、男子部員が生理による体調不良かどうか聞く際にも、「聞いていいことか分からないんだけど……」と頭文句がつくことが多いと感じます。また、私自身、生理で山行を休むという連絡も、男子の先輩ではなく女子の先輩に伝えました。
 女子部員の間では、「今日生理じゃない?体調大丈夫??」「生理の症状ってどんな感じ?」など、生理についての話はよく出ますが、男子部員とは、信頼関係が強かったり知り合って長いなど、関係が深くないとなかなか言い出せないように思います。
 
5最後に 

 ここまで、私の経験に基づいて「山と生理」について述べてきました。生理による体調不良であってもなくても、山において1人の体調は隊全体に大きく影響しますし、重大な事故を引き起こしてしまうリスクもあります。生理の時は自分だけで抱えず、自分が言いやすい人にだけであったり、伝えやすい方法で、伝えるようにした方が望ましいと言えます。そのためには、日頃から思ったことや考えを率直に伝えるよう意識付けが必要だなと強く思います。
 このことは、命の危険と隣り合わせの山岳部だからこそ言えるのかもしれません。しかし山岳部でなくても、自分の大切な人や身近な人に自分の素直な思いや考えを伝えることは勇気がいるかもしれませんが、その1つ1つの積み重ねが人間関係を築く上で大切だと私は思います。また、生理について話しにくいという方も、そのようなコミュニケーションを少しずつ積み重ねることで、いつか誰かに生理の悩みや不安を話すことができ、それらが軽減されればと思います。

参考サイト
YAMAHACK 生理中の登山、もう大丈夫。女性スポーツ研究センターに聞いた「生理との正しい付き合い方」2022/12/27
生理中の登山、もう大丈夫。女性スポーツ研究センターに聞いた「生理との正しい付き合い方」 | YAMA HACK[ヤマハック]