将棋がめちゃめちゃ普及すると、実はちょっと困る。

私は将棋が強くなりたい。
が、
どうしても勉強はしたくない。

勉強せずに強くなることはあり得ないことがわかるくらいには大人なのでまあ、強くなることは諦めている。

で。
将棋が強くならないことはわかっているのだが未練がましいのでちょっとプロ棋士の雰囲気を醸し出すために、ちょいちょい日常生活においてプロ棋士の仕草や言葉をモノマネしている。
いや、最後のプライドでもって影響を受けていると言おうかしら。

あるあるだが、コンビニエンスストアで小銭を出す時の仕草が将棋っぽくなる的な、だ。
それは流石に恥ずかしいのでやらんけど。
(といいつつ電気のスイッチを押すときには羽生九段が相手陣で駒を滑らす手つきを意識している。)

ここで数々の恥ずかしい具体例をさらけ出そう。
どうせたいした誰も読んでないし。

用例1:)
「あー。そっかー。そ・お・で・す・ねー(語尾ちょっと上げて)」
出典:
羽生九段
状況:
打ち合わせで相手の言うことに全然同意できないけど立場上あまり全力で反論できない時。または全然話を聞いてなかったのに同意を求められた時。

用例2:)
「・・・・・・・・」(腕組みして左上の虚空をなんとなく見つめながら)
出典:
三浦九段
状況:
なにかを考えてるフリをしている時。

用例3:)
「なんていうかそのー」
「つまりどういうことかって言うとー」
出典:
上:藤井二冠
下:羽生九段
状況:
なにも考えていなかったのに話を振られてとりあえず喋り始めたはいいけど、なにも言いたいことなど無く、着地点を考えてる時の時間稼ぎ。

用例4:)
「とりあえずまぁこのあと色々あるんですけどとにかくうまく行かないんですよ。」
出典:
渡辺名人
状況:
絶望的な提案を受けての反論中にごちゃごちゃ言われた時、または説明が面倒臭くなった時。

用例5:)
「・・・・・」(タバコに火をつける前に指で灰皿の吸い殻を厳かに並べて空間を開ける)
出典:
谷川九段
状況:
吸いたくもないタバコを吸う時。このままでは火事になるかもしれない時。

用例6:)
「あー。はいはい。ええ。ええ。うーん。指しすぎですねぇ」
出典:
羽生九段
状況:
机上の空論で前提を覆さないとどうにもならないほど話が勝手にどこまでも行ってしまったのを咎める時。だいたいこの後に、用例7に続く。

用例7:)
「一目これなんですよ。とりあえず、これしてから考えましょうよっていうのが第一感じゃないですかね。」
出典:
解説者多数
状況:
一旦話を元に戻して現局面に立ち返りたい時。からの用例8

用例8:)
「とりあえず、悪くはならないので。やっておいて損はないんですよ。」
出典:
解説者多数
状況:
用例7に対してリアクションが薄い時の反論。うるせーな。ごちゃごちゃ言うな。まず動けや。をやわらくしたい時。

用例9:)
「えーい負けた負けたーつってこーゆー感じですか?」
出典:
竹部女流四段
状況:
どうあがいても負け戦なのは共通認識な上で一発逆転の無理筋を求められた時の開き直ってやりましょうやの意。

用例10:)
「もうそうなったらお上手ですねっつって投了しますよ。」
出典:
木村九段
状況:
用例9の提案後、正着を指摘された時の反論。

その他、状況に関わらず、
「いやーそれは強い手ですねー」(屋敷九段他)
「こうなってこうなった時の図は・・・」(郷田九段)
「投了に勝る悪手無しですよ。」(森下九段)
「それは、、、センスを問われますねぇ」(木村九段)


などと、誰も知らないのを良いことに、日常会話においてプロ棋士”っぽい”言い回しを混ぜ込んでいるのである。

今後、関係者様のご尽力により、将棋が普及し、世間一般の方々が私と同程度の観る将に成長された場合、おそらく方々で、

「あいつの言い回しっぽくね?」
「あいつモノマネしすぎだろ。」

と思われ非常に恥ずかしい思いをしそうなのである。

何事もほどほどにしてほしいものである。
つまり、将棋仲間は欲しい。
本当に欲しい。
が、本気になって自分勝手にどんどん勉強してあっと言う間に私を追い抜いていくような身勝手な人間には始めて欲しくないというジレンマによく似ているのである。
(ここだけの話私など後手で右四間飛車と先手で筋違い角さえ覚えれば簡単に倒せるぞ)

最後に、遣いたくてチャンスを伺っているものの、どうしても将棋用語を含んでしまい絶対に伝わらないのでまだ遣えていない言い回しをいくつか。
(投了は一般用語だと思ってるのって大丈夫なのかしら。)

「こっちゼットなんで無理やり暴れていいんじゃないですか?」
「とりあえず端歩突く感じでご機嫌を伺ってみます?」
「詰めろ逃れの詰めろみたいな手そんな簡単にあるわけないじゃないですか。」

流行んねーだろうな。




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