キャバクラじゃないよニュークラだよ

目下のコロナ禍で夜のお店から遠ざかって久しいものである。
言い訳がましいが私は接待等でしかそもそも行かないが。

表題の件、私の住んでいる場所では、全国的に言ういわゆる
キャバクラ
のことを
ニュークラと呼称する。
こちらでキャバクラというと一般的になんというかもうちょっと、こう
大人の?なんというか、もうちょっと濃厚接触しがちなお店のことを指す。

さて、以前の記事で触れたが私がこのニュークラでお嬢に全力で将棋の話をお届けする、という地獄とも言える時間について今回は書こうと思う。

前提条件がいくつからある。
まず来店理由が接待と書いたが当然例外なくされる側ではなく、する側である。
また、私は基本的にパーティーの中で一番の下っ端なので主賓メンバーから一番遠い場所に陣取るのでいわゆるご機嫌取りのような接待という形にならない。(そもそもよく行くメンバーはいわゆる"よいしょ"を一切求めてないし単純に親睦会的な雰囲気できれいなお酒である)

さらに私は下っ端なのであまり酔っ払うような飲み方もしないし基本的に自動車通勤の日は代行費用がもったいない(経費削減である)のでウーロン茶をひたすら飲むのだ。完全シラフである。
当然キレイなおねえさんは好きだが、下心を持つような思い上がった性格でも無く。若くてきれいなお嬢さんを楽しませるような小洒落たトークスキルも持ち合わせていないのである。

そこで以前は、
「はじめまして。よろしくね。」
の後は、
「なんか面白い話して。さぁどうぞ。」
という事をしていたのだがある時ある親切なお嬢から
「それは最悪。ただずっと自慢話をしててくれた方が100倍マシ」
と教えて頂きこれは自粛するようになった。

その後しばらく、

「はじめまして。よろしくね。」
の後、
「どうする?将棋の話かアメリカのプロレスの話かテニスの話かサバイバル番組の話を俺が全力でするけどどれがいい?」
という事を始めた。
お嬢のリアクションは様々である。
ベテランっぽいお嬢の中には
「いやどれも興味ねーわ!」
と清々しいリアクションを取る方もいるが
ひとめ新人っぽいお嬢の中には
「え。。。」
と言ったまましばらく絶句する方もいる。

ただいずれのリアクションであろうが私は答えを聞くまでは何度でも同じ質問を繰り返す。

ガジガジ流である。
こんなところまで藤井猛イズムが浸透しているのである。

さて、残念ながら上記の選択肢の中で将棋を選ぶお嬢ははっきり言っていなかった。
嬉々として火起こしの話やロジャーフェデラーの偉業を語るにも飽きた頃、
将棋、アメリカンプロレスに加え、ガンダム、ゾンビ映画、私の高校の時の担任のモノマネ、新撰組などを追加したが、どうも将棋の話の成績が芳しく無いのである。
ここでも昨今の将棋ブームとやらの存在が甚だ疑わしいことが判明しただけである。

誰も知らないO先生のモノマネの技術が上がり始めた頃には、
最初から選択肢など無く、
「はじめまして。よろしくね。今から俺が全力で将棋の話をするね。」
というもはやハラスメント以外の何物でもない挨拶となっていった。

一見ハラスメントとも悪ふざけとも言える行為であるが、

・将棋の普及(夜の普及活動と呼ぶ)
・私のトークスキルの向上(全く興味の無い話題で相手に興味を持たせることができれば私のトークはなかなか捨てたもんじゃないということになる。そういう意味では私のトークスキルは向上が見られない)
・時間つぶし(シラフの状態で興味の無い存在同士が当たり障りの無い会話に終始するのはもっと耐えられない)
・ストレス発散(この勢いで妻に将棋の話題を話し続けたら即離婚問題である。)

などメリットはあるのである。
どうしても耐えられないという方にはB面攻撃として、
「その場合シラフのメガネが延々と、主に、君の性体験の話を質問し続けるタイプの下ネタの話題になるけどどうする?」
を用意しているのでかなり良心的と言って良いと思う。
まさに玉は包むように寄せよ、である。

金銭の授受が発生していない場所で相手の興味の無い話題を一方的にぶつけるよりはマシであろう。
また、これを苦痛だと言うのであれば面白い話聞かせてさぁどうぞが最悪と言ったお嬢が責任を取るべきだ。

結果としては、テニスやサバイバル番組の時は見られた、
「えー面白そう!今度観てみるー。」といった社交辞令すらせず、場内指名のオネダリも無く黒服の時間ですの合図でキッチリお嬢は離席をし、
その度に新しいお嬢に、羽生九段の偉業、藤井猛九段の魅力、角換わり腰掛け銀に対するうんざり感をイチから教育するのである。

地獄のような時間と称したが、地獄のような時間を体感しているのはお嬢だけではない。

なにひとつ意味がわかならいし興味も無い話を立場上そうとも言えず、
愛想笑いをしながら一方で、なにか質問しなきゃ、ちゃんとリアクションしなきゃ、と焦る相手の感情が手に取るように分かる中で、その全てを無視しつつも背中から冷や汗が噴き出すのを感じながら身振り手振りを交えて熱弁を振るう私も等しく、地獄とも言える時間を体感しているのである。

さながら完全に必死(必至?)をかけられた状態で絶対に詰まないのは承知の上でありったけの駒を打ち捨てながら王手ラッシュを掛けている時の惨めさ、無力感、情けなさに似ているとも言える。

稀に、このような状況の後で場内指名やLINE交換を求めてくるお嬢にはこの仕事に掛ける熱意、生活の困窮が透けて見えるなどしてむしろちょっとこっちが引く次第である。

このコロナ禍で夜の普及活動も完全におろそかになってしまっているのが残念である。

つまり何が言いたいかと言うと、
道産子の彼女、妻がいる道外出身の諸兄。
付き合い等で止むを得ずきれいなお姉さんと楽しくおしゃべりをしながらお酒を飲むお店に行ったことを報告する際には、

「ニュークラに行った」
と報告することをお勧めする。
「キャバクラに行った」
と報告すると状況によってはまあまあ面倒臭いモメ方をする場合があるぞ。

という事を念頭に置いてこのコロナ禍を一緒に乗り越えて行こうぜ、ということだ。


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