ハタノサン

フリーライター、3歳男児の母。

ハタノサン

フリーライター、3歳男児の母。

最近の記事

白の呪いを解く魔法

息子のツルンと滑らかな黒髪を撫でていると、キラリと光る一筋の糸を見つけた。ハッとしてその豊かな髪をかき分け指で掬い出すと、それは色素のない一本の髪だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は白髪の生えた子どもだった。物ごころついた頃には、自分が他の子どもたちとは違う、「恥ずべき特徴」を持って生まれた事に深く傷ついていた。 小学校3年生の頃、音楽の授業中に行われた歌のテスト。ピアノの横に立ち、音楽教師の伴奏に合わせ一人ずつ歌を披露する。恥ずかしがりの割には人

    • 時計の針を見る。13:45。おもむろにPCを閉じ、ひとつ大きく伸びをして、椅子をきしませながら立ち上がる。 待ち合わせの場所に向かうときはいつも、高揚感とともに微かな気だるさが沸き起こるが、男は自分の感情に無頓着だ。約束を果たしに向かう。ミッションはそれだけ。 女は今日もそこに立っていた。 洗練されてもいない、野暮ったいというほどでもない。小花柄のスカートとヒールの少しだけ高いサンダルの後ろ姿で、俯くショートカットのうなじを剥き出しにさせている。 男が近づくと女はハッ

      • 男はいつも、鮮やかな黄色の鞄を持って待ち合わせ場所へ現れる。 足取りは軽く、気配もほぼない。スッと女の背後に近寄り、自然と女の横に並び歩みを促す。 女の頭の中には、いつも茫漠とした不安が広がっている。その不安がなんなのか、微かに含まれる悲哀がなんなのか。その正体を知っているのかもしれないが、本能が知らないふりをさせている。 男は軽やかな足取りでいつもの坂道を登っていく。女は少し遅れて、時に足元をもたつかせながらついていく。坂道と細いヒールの相性はすこぶる悪く、歩みをたど

        • スタバでガンダムづくり

          フリーライターを始めていつからか、”ここでしか書けない”という執筆の場所を見つけた。 それは近所のスターバックスコーヒーである。あまりにありふれすぎている。しかしなぜか、そのすぐ近くにあるコメダ珈琲店ではダメなのだ。 ポイントはスタバというよりも、スタバの中央に鎮座する一枚板の重厚な電源机、(私のなかの)通称「勉強机」にあるようだ。 手のひらいっぱい広げても掴めないほどの厚さ、節のないスベスベとした滑らかな木材の手触り、ミルクティー色の優しい色。大きさはおそらく3m×1

        白の呪いを解く魔法

          産んでしまって、思う事

          ずいぶん間が空いてしまったが、男児を出産して2カ月が経った。正直なところ、毎日朝が来るたびに憂鬱な気持ちが押し寄せてくる。 「人生、舐めてたな」36歳、結婚して7年。私が成し遂げてきた事、築いてきたもの、とは……。あれ?いっちょ前にオトナとして生きてきたつもりが、実はフワフワと漂うだけの日々だったようなのだ。 結婚というライフイベントは、思えば大きな変化ではなかった。自営の夫婦、各々仕事の納品に合わせて明け方まで作業をしたり、その後は昼すぎまでベッドで休息したり。炊事洗濯

          産んでしまって、思う事

          信頼しないでください、もっと疑ってください

          ウォームアップも兼ねてnoteを再開。 最近、仕事も含め、あまり書いてなかったもので…。テヘペロ。 タイトルは、最近親しい編集者に言った言葉です。(普通は人から言われた言葉を引用するよな) わたしは自分の仕事に自信を持ったことがない。 物を書いている間は常に道順が正しいのか不安だし、納品してからは編集者の目が恐ろしいし、公開されてからは嗚呼ついに公衆に晒された… みたいな心許ない気持ち。 だから、「信頼しています」なんて編集者に言われた日には、タイトルどおりの言葉が毎回

          信頼しないでください、もっと疑ってください

          34歳9ヶ月 割とアレだ

          35歳を目前に、最近妊娠や出産について悶々と考えたり、ペンネームでコソコソ執筆したりしているんだけど。 少子化の原因、マクロ的視点では、子育てしづらい社会的背景とかなんだろうけれど、ミクロ的には単なる過労なんじゃないかと。 2年だか(なんか曖昧みたい)通常に性交渉がありつつ、子どもが出来ない場合「不妊」らしいけど、そもそも通常な性交渉ってなんやねん。ビシ。 本来、タイミング計らにゃ子どもってできないよね。通常の…ってつまりタイミング法を試みてて、って意味だよね?あれ、違

          34歳9ヶ月 割とアレだ