2024PARIS~クライミング/男子決勝
ついに決勝を迎えたクライミング。
どの選手のパフォーマンスもとても素敵で、かつクライマー全員をリスペクトするような会場の雰囲気にとても胸が熱くなる時間でした。
その中でパフォーマンスビルダーの視点で思ったことを書き記したいと思います。
1.クライミングも若年層が有利?
今回の決勝のメンツ8名のうち10代の選手が2名(優勝したToby ROBERTS選手、2位の安楽選手)、他4名は20歳から22歳、そしてベテランのレジェンド達31歳、33歳と若手選手の台頭が目立っています。
今他の競技でも選手の低年齢化が話題に上がることもありますが、クライミングもそうなのでしょうか?
2.課題の傾向
私が感じることは、年齢の傾向というより課題の傾向なのかということ。
この7~8年特にボルダーの傾向は「耐える」から「動く」へと明らかに変化、進化しつつあります。
壁の中でダイナミックに「動く」ということを求められる場合は肩に力が入ってしまうと動ききれません。肩甲骨の下部、そしてその周囲が多様に動き力を発揮することでダイナミックな動きを可能にするのです。
3.人の体の特性
人の体は普段行っている動きをそのまま表しています。
だからオリンピックで見るアスリートの体は同じ人間の体なのにもかかわらず競技によってその体つきが全く異なります。
約10年前、今ほどダイナミックな動きが多くなかった世代のクライマーの体はやはり耐える仕様であることが多く、今世界のトップシーンで活躍している若い世代のクライマーは自身のクライミングや体ができる時期には動きを多用する課題が多かった、要はスポーツクライミング世代だということです。
「若いから」強いというよりは課題の傾向が異なる中で彼らのクライミング、そして体ができているが故に、若手の活躍が目立っているということかと。
4.体の進化
一度ある程度体が出来上がってしまうと(男子で言えば20代前半以降)、また違う動きに体を適応させていくにはそれなりの苦労が伴うはずです。
一度肩で耐える動きを覚え、その動きを繰り返していると肩の力が強いのでどうしてもそこで運動をまかなってしまいます。
どうしても人の体は自分の中の強い部分で動きを処理するようになります。
だからこそ、以前はもっと腕や肩で耐えながらぐいぐい前進していく印象だった3位のJakob選手の進化、そして強さにはとても偉大さを感じました。彼の強さはそのままに、けれど新しい動きに対応する引き出しも加わり登りのスタイルも変化している。そしてリードではそのすべてを踏まえ元来のルーターとしての強さを発揮する圧巻の登り。やはりJakobはレジェンドなんですね!
5.おわりに
スポーツクライミング複合競技、色々な意見もあるのだと思いますが、私個人的にはとても楽しい時間でした。
耐えるから動くへと進化するということは、
「体の機能が適正に引き出されるようになる」
→「肩で抑え込むクライミングから体全身で動くクライミングへと変化する」
→「怪我の予防に繋がり、パフォーマンスを向上させやすくなる」
という図式です。
だからこそこのオリンピックを心地よい視点で見れたのかと感じています。
何よりも、選手皆さんのパフォーマンスに敬意を!
選手の皆さん、そしてスタッフの皆さん、関係者の皆様本当にお疲れ様でした!
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