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【まちなか図書館×ペルシュ】トークセッショ

本を読む・調べるはもちろんのこと、誰かの話を聴いたり、体験したり。誰もが気軽に“ひとやまちとつながる場”をコンセプトにした、豊橋市の「まちなか図書館」。2022年9月17日、対談企画「館長がいま会いたいひと」のトークゲストとして、ペルシュが登壇しました。お店を始めたきっかけや、作家さんへの想い、器を楽しむアドバイス、さらに、サプライズゲストとして作手窯さんが登場する一幕も!約1時間にわたるトーク内容を凝縮してお届けします。

文:中西沙織(ほとりworks)  撮影:こんどうみか


料理講師から、器ショップのオーナーへ

今回の対談を企画した「まちなか図書館」館長の種田澪(おいだみお)さん(左)と、
ゲストに招かれた「ペルシュ」杉山佳子さん


種田(おいだ)館長:
「この企画は、私が会ってみたい人や、皆さんにぜひ活動を知っていただきたい人をお呼びし、お話しを聞く会です。今日は、器のセレクトショップ『ペルシュ』オーナーの杉山佳子さんにお越しいただきました。簡単にお店の紹介をお願いします」

ペルシュ:
「お店の場所は、大手町にあるヤマヤス本店の隣で、図書館からから歩いて5分くらいになります。去年の7月にオープンして、一年が過ぎたところです」


長年、料理講師として活動してきた杉山佳子さん。
対談に際し、お店のオープン日でもある誕生日が、種田館長と同じことが判明!


館長:
「2階にある隠れ家のような雰囲気で、作家モノの器を扱っていらっしゃいますね。もともと料理講師をされていたそうですが、お店を始めたきっかけは?」

ペルシュ:
「料理には器が必要で、器も料理が乗ってはじめて完成します。料理の次に器というのは、私にとって自然な流れでした。長年温めていた夢でしたが、コロナ禍で時間ができた去年の3月頃、突然“今だ!”と思い立って。オープン日を、50歳の誕生日を迎える7月に決めました」


館長の種田さんは、図書館への就任を機に、東京から豊橋へIターン。
以前はテレビ番組の制作に携わっていた


館長:
「未経験から4か月の準備期間で、物件決めから全部…! お店で販売する器は、どのように仕入れるのですか?」

ペルシュ:
「一般的には仕入れ業者を通じてカタログから発注するのですが、うちで扱うような作家さんの場合は、もちろんカタログなどありません。作家さんお一人おひとりに思いを伝えながら、できる限り工房に足を運び、直接買い付けをしています」


工業製品にはない、作家モノの器の魅力

トークに特別参加した、作手窯の鈴木健史さん(右)。
レストランなどプロの料理人にもファンが多い


館長:
「お店で扱っている作家さんや器について教えてください」

ペルシュ:
「まずは特別ゲストとしてお越しいただいた、作手窯の鈴木健史さんをご紹介します。地元の作手で作陶されているというのはもちろん、薪窯で焼かれた作品は、とても人気があります」


ペルシュが作手窯の工房を訪ねた際のワンシーン。この薪窯自体も鈴木さんの手づくり!

ペルシュ:
「窯の中の置く位置によって、釉薬の出方が全然違うと教えてもらって。それがとても面白いなと」

作手窯:
「窯の手前にあたる“火前(ひまえ)”に置くと、灰をかぶったり炎に当たったりして表情が出ます。中ほどの“火中(ひなか)”に置いたものは、白っぽく。さらに、窯の中で酸素が満ち足りているかどうかでも、色合いが変化します」

館長:
「実は私も、ペルシュさんを知ったのは作手窯さんの器がきっかけでした。自宅でも使っているのですが、和でも洋でも合うのがいいですね」


会場で紹介された器。
(右)藤村佳澄さんのカヌレ茶器、
(中央)藤井博文さんのコーヒーポット&ドリッパーセット
(左)作手窯の器各種

ペルシュ:
「ほかにも今日は、作家モノには珍しい、コーヒーポットとドリッパーもお持ちしました。器を何から揃えたらいいか分からないという方には、使う頻度が高いものから取り入れるようアドバイスしています。コーヒーが好きな方なら、毎日のコーヒータイムがより豊かになるはずです」

「それから、小ぶりなこちらの白い茶器、逆さにすると何かに似ていませんか? 洋菓子のカヌレに見立てたかわいらしいデザインで、多治見市の藤村佳澄さんの作品。ホームページでは、カヌレ茶器の誕生秘話も公開しています」


器のストーリーを発信し、作り手と使い手をつなぐ

館内の中央ステップで開催されたトークセッション。誰もが自由に聞くことができる


館長:
「ホームページのBlogのお話が出ましたが、私もいくつか拝見しました。こちらは、杉山さんが実際に工房に出向いて取材されているんですよね」

ペルシュ:
「滋賀県の『淡海陶芸研究所』は自分で書いたものですが、それ以外は、地元で活動するプロのライターさん、フォトグラファーさん(ほとりworks)に同行してもらい、作品が生まれる背景を記事にしています。新型コロナ関連の補助金を活用したもので、取材を通じて作家さんとより深い信頼関係が築けたのは、思わぬ収穫でした」

館長:
「買う側からしても、作家さんや、制作の想いなどを知ると、印象が全然違ってくると思います。発信には、作家さんを応援する意味合いもあるのでしょうか?」

ペルシュ:
「作家さんに作り続けていただくには、作品が現金化され、それで作家さんが暮らしていけるのって、すごく大事なことで。作り手と使い手をつなぐことが、私のようなお店の役割だと感じています」

館長:
「読み手に届けるという意味で、図書館と重なる部分も多いですね。特に、この『まちなか図書館』は分館で、書庫を持たないこともあり所蔵数が限られています。膨大な数の新刊から何を買って、それをどう伝えていくか、いかに読んでもらうかを常に考えています」


日々の暮らしを心豊かに。器を楽しむアドバイス

ペルシュ店頭のディスプレイ一例。花やカトラリー、時には異なる作家の器を組み合わせ、テーブルコーディネイトを提案


ペルシュ:
「お店の空間づくりのコンセプトは“美意識をもった大人の女性が住む家”。日常よりもワンランク上の、かつ、使うシーンを想像できるような展示を心がけています。器についてひとつ興味深い話があって、銘々の器が決まっているのって、日本固有の文化らしいんです。なぜ日本人はそれだけ器に愛着があるかというと、器を持って食べる文化だから」

館長:
「確かに、うちの子どもも“これぼくの!”って主張します。でも反対に、実家の洋食器なんかはセットで揃っていました。私自身、作家モノの気に入ったお皿を買っても、一枚だけだと、どう組み合わせればいいか難しく感じることも」

ペルシュ:
「まず、作家さんもよく言われることですが、器をどう使うかは使い手の自由です。酒器にデザートを盛ったり、グラスに花をいけたり。また、一人一人おもてなしの器が違うとか、豆皿を一枚ずつ揃えるのも大いにアリ! 皆さんも、自分の“好き”というフィルターを通して器を集めていくと、それぞれの世界観を持ったラインナップができると思います」

館長:
「そういう楽しみ方は新しいし、楽しいですね!」


館長:
「ペルシュのオープンはコロナ禍でのチャレンジとなったわけですが、改めて振り返ってみていかがでしょう」

ペルシュ:
「食や暮らしの大切さが見直され、心の豊かさを求める人が増えたように感じます。このタイミングだったのも、時代の流れに合っていたのかなと。陶芸について、それほど深い知識もないまま始めたのですが、一般の方と同じ目線で提案できるという点で、逆によかったと感じています」

館長:
「私も、コロナ禍で東京からIターンし、司書の資格を持たずに館長に就任しました。そんな自分だからできる、利用者の視点を大切にした図書館づくりなど、共感できる部分がたくさんあります。話はまだまだ尽きませんが、最後に、今後の予定を聞かせてください」

ペルシュ:
「最近は個展に手ごたえを感じていて、精力的に開催していくつもりです。たくさんのラインナップが見られると好評で、作家さんにとっては使い手と交流できる貴重な場であり、店としても売り上げが見込めます。11月はカヌレ茶器の藤村さん、12月は作手窯さん、年明けに豊川市出身の木工作家さんなどを予定しています」

館長:
「今日はありがとうございました。皆さん、ぜひお店にも足を運んでみてください」


【まちなか図書館】
豊橋市駅前大通二丁目81番地 emCAMPUS EAST 2F・3F
0532-21-5518
9:00~21:00
休館:第4金曜(祝日の場合はその前日)、年末年始、特別整理期間


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