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新日本プロレスの現在 オカダカズチカが魅せた世界

3月6日は新日本プロレスの旗揚げ記念日だった。

新日本プロレスは日本で最も大きなプロレス団体。今やその試合のクオリティーは世界に名が知れ渡っているほどのメジャー団体だ。そんな新日本プロレスが始まったのが46年前のこと。アントニオ猪木が作ったこの団体は、闘魂を掲げたストロングスタイルのプロレスを信条としている。本気で熱い、真剣な戦い。レスラーの迫力が観衆の熱を生みゴールデンタイム放送されプロレスブームを巻き起こす。レスラーの迫力、凄みは、やはりアントニオ猪木のオンもオフもなく、いつでもプロレスラーでいる姿で支えられていたのも事実。国会でもプロレスができる男が猪木だ。

引退後も色濃く残ったアントニオ猪木の陰は、引き継いだレスラー達の脅威でもあったと思う。闘魂とは何か?新日本プロレスでの戦いとは?常に猪木の幻影が有り、それでも自分が出来る闘魂を求めたプロレス、それがストロングスタイルだ。

しかし、新日本プロレスの経営母体が変わる事で猪木の影は薄くなっていった。金の切れ目がなんとやら…ということなのか。今、新日本プロレスはゲーム会社のブシロードが経営している。

猪木の呪縛から離れた選手たちは、これまでとは違うプロレスを始める。闘魂というストイックさは持ちながらも、女性をはじめ誰もが楽しめるエンターティメント志向のプロレスが始まった。そんな中にポッと現れたのがオカダカズチカだ。

スタイリッシュでいかにも男前、長身ながら素早い身体能力で華がある男。オカダが新日本プロレスの最高峰のベルトIWGPヘビー級王座になったのが24歳。5年程前の事。プロレスでは若く珍しい。それ以降オカダはずっとトップレスラーとしてリングに上がり続けている。憎たらしい程に強い絶対王者として現在10回連続防衛中だ。

そのオカダカズチカが46周年の旗揚げ記念日に見せた試合。

対戦相手は同門ユニットの弟分、ウィルオスプレイ。オスプレイは体重の軽いジュニアヘビー級のチャンピンオン。世界でもまれな身体能力を持つハイフライヤーとして誰も真似できない華麗な空中殺法が得意。美しく派手な攻撃は闘魂一色ではない魅力、現在の新日本プロレスを象徴とする選手とも言える。

同門であり、階級の違うチャンピオン同士の試合。この試合を言い出したのはオカダだ。体重によるデメリットがあるオスプレイ。オカダの重い攻撃に耐えられるのか?オカダはオスプレイの素早い攻撃とかみ合う試合ができるのか?多少違和感のあるマッチメイクだが旗揚げ記念日、お祭り興行っぽい試合になる気がした。同じユニット同士だし、兄弟みたいな仲間だし。

しかし、そんな想像は微塵も当たらなかった。

オーソドックスな腕の取り合いによる力比べから始まる。クラシカルな動きから組み合ってのイギリスのランカシャースタイル、関節を取り合い投げに至るメキシコのジャベ。お互いが普段見せないようなあらゆるスタイルの動きが続く、まさに引き出しが次々に開かれ、お互いが同じレベルで張り合える動きを繰り出す。一連の動きを仕掛けたのはオカダからだ。このくらいできんだろ!と煽り、スタイルをけしかける。オスプレイは見事に応えてみせる。

次は闘魂、ストロングスタイルのエルボー合戦。体重差のあるオスプレイには厳しい応戦になるも逃げることなく向かい合う。気迫の籠った激しいぶつかり合いが止まらない。オスプレイをぶん投げるオカダ。長身のオカダを激しく蹴り付けるオスプレイ。

試合の終盤は空中でのブツカリ合い。飛び上がるオスプレイを空中、ドロップキックで迎え撃つオカダ。打点が高く素早い。オスプレイが得意の空中戦に応えるオカダ。ここには今、現在の、まさに今最も輝かしい新日本プロレスのスタイルが作り出される。派手で華があり、熱く輝く闘志!プロレスの世界、過去から現代までを表現しきった二人。最後は今現在最高のオカダの最高の必殺技ショートレンジ式のラリアット「レインメーカー」で締めくくる。

旗揚げ記念日にふさわしい、過去から世界、今現在の新日本プロレスを余すところなく発揮した試合。対戦相手にオスプレイを選んだオカダの信頼感が伝わる。階級が違えど、この日の表現豊かなプロレスは、この2人にしか出来ないものだ。こんな試合が観られて良かった。僕の中では早くも年間最高試合と言いたい。オカダがいる限り、新日本プロレスには金の雨が降る。オカダは真のレインメーカーだ。

次々とドラマチックな展開が起きる新日本プロレス。現在はタイトルホルダーへの挑戦権を掛けたニュージャパンカップが開催中だ。トップレスラーの内藤が敗れる波乱があり、こちらのドラマも目が離せない。

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