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太陽の空より vol.5 河村聡人

連載タイトルの「太陽の空」を追いながら地球から太陽へ、そして太陽黒点から磁力線を見上げたの が前回でした。
本来の予定では、ここから太陽風の話へ進むはずだったのですが、太陽の機嫌が良く(悪く?)、急遽路線変更です。

前回の記事の頃から太陽で大きなフレアが頻発し、日本でもオーロラが見られたというニュースが駆け巡りました。僕の研究分野のひとつに太陽活動についての考古天文があります。
オーロラのニュー スに直に関係する分野ですので、今回と次回はこのお話にしたいと思います。

まず世間一般にオーロラというと雪や氷に紐づいたイメージかと思います。ポケモンの技とかです ね。ですが、実際の現象としては高度100kmから500kmあたりで起こるものです。
国際宇宙 ステーションが飛んでいるのが高度400kmあたりなので、時には国際宇宙ステーションがオーロラの中を飛ぶということも起こりえます。この高度には雲も氷もありません。一般的は宇宙と認識される空間です。

ではなぜ雪や氷に紐づいたイメージになったのかというと、あくまで僕の推察ですが、オーロラが良く見える場所と時期とそのイメージを強調する写真によるところが大きいのかと思います。
オーロラを表現する言葉として「光のカーテン」がありますが、この表現があてはまるのはオーロラ の真下、主に北極圏や南極圏で見るときです。
それも極の一点ではなく、極を大きく取り囲む地域が オーロラの真下になります。更に、オーロラの光は太陽の光と比べると淡いので、夜に見られる現象です。本当は昼でも出ているそうなのですが、人がこれに気付くことはかなり難しいのでしょう。

よってオーロラが発見されやすいのは夜。その時間が一番長いのは一日中、太陽が昇らない極夜の季節、つまり冬です。
なので、いつ見えるかもわからないオーロラを根気よく待ち、しかもより絵になる風景を求めて、写真に収めようとするなら、冬を狙おうと思うのだろうと考えます。
実際は真冬(12月・1月)よりもその前(10月・11月)や後(3月・4月)の方がオーロラの観測が多いという研究があるのですが…

さて、今回の日本でのオーロラのニュースで流れた画像や映像は「光のカーテン」とはとても呼べないものでした。ぼんやりと赤色だったり、その下側が少しだけ緑色だったりしているものでした。
これはオーロラを真下ではなく、横から見ているからです。先の国際宇宙ステーションから見たオーロ ラの写真見てもわかるように、高度の低いところは明るく緑色、高度の高いところは薄暗く赤色に光っています。
真下から見ると一番したの明るい部分が目を引きます。しかし離れた地点から見ると、下の方の緑色の部分は地平線に隠れ、赤い部分だけが見えます。

この様に場所によって見え方が変わるオーロラですが、時代や人によっても記録のされ方が異なってきます。次回はその記録のお話です。

河村聡人(かわむら あきと)
アラバマ州立大学ハンツビル校卒(学士・修士)、京都大学大学院退学。太陽・太陽圏物理学が本来の専 門。最近は地球観測も。天文教育普及研究会2023年度若手奨励賞受賞。ちょうど最初の入稿がvol.4までだったので、タイミング良く太陽に振り回されました。

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