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宇宙飛行士選抜試験~ファイナリストの消えない記憶~

ぼくが今、書籍化に向けて絶賛準備中の本だ。

出来立てホヤホヤの表紙


できたてホヤホヤの表紙(12/5発売)


このものがたりは、スペースシャトルにあこがれて宇宙エンジニアになったぼくが、小さいころからの夢「宇宙飛行士」になるために全身全霊を傾けて挑んだ10か月におよぶ『宇宙飛行士選抜試験』への挑戦と、そして、その後の12年の葛藤を描いたものだ。
今年2020年6月16日から、宇宙兄弟Official Websiteで連載中である。

2019年4月。
コルク佐渡島さんとのコラボ企画が立ち上がり、宇宙兄弟サイトでWeb連載をしてから書籍出版するという方向性で活動を開始した。まずは所属会社の社内調整だ。企画書を作り、人事部担当と掛け合った。その名も「未来のヒビト・ムッタを生み出そうプロジェクト」。通常業務とは一切切り離し、ぼくは仕事外の時間で兼業する決断をした。


また、第5期宇宙飛行士選抜でJAXA選抜係事務局長を務め、「宇宙飛行士という仕事 選抜試験からミッションの全容まで」(中公新書)という自身の著書も出された柳川孝二さんにも話を聞きに行った。すでにJAXA OBになられていたので仕事後に御茶ノ水で落ち合って一杯やりながらいろいろなお話を聞かせていただいた。

正直、完全兼業で活動することに不安な気持ちを抱いていたのだが、柳川さんに大きく背中を押してもらった。

2020-11月号-特集記事-内山さん-画像②

柳川孝二著 「宇宙飛行士という仕事 選抜試験からミッションの全容まで」(中央新書)ご本人によるサイン入り


佐渡島さんから興味を持ってくれた出版社の編集担当がいると連絡をもらったのは、2019年6月。コルクで初対面したのが6月28日だった。

SBクリエイティブの坂口惣一さん。そしてコルク側でぼくの本を担当してくれるのが仲山優姫さん。NASA JPLの小野雅裕さんの「宇宙に生命はあるか」(SBクリエイティブ)の大ヒットを手掛けた黄金コンビ。最初に、「ぼくは小野さんのような文章は書けません」と言ったのを覚えている。

意外だったが、2人は特に宇宙に詳しいわけでもなかった。ぼくにとっては、それが逆に新鮮だったし、結果としてぼくのような宇宙野郎が一般向けの本づくりにトライするのにとても良かった。技術や専門に行きがちな、作家業ど素人のぼくを、向かうべき方向に導いてくれることになる。


書籍の方向性や全体構成をあれやこれや相談しつつ、坂口さんがSBクリエイティブさん内で企画の調整をしてくれ、2019年12月3日、晴れてこの3人のチームでの活動開始となる最初で最後(?)の対面での決起集会を執り行った。

20年間、自分の感情などむしろ一切書き入れることのない技術資料しか書いてこなかったぼくがエッセイに挑戦するということで、仲山さんが何冊か著書を紹介してくれた。

そのうちの一冊、山野井泰史さんの「垂直の記憶」(ヤマケイ文庫)をぼくはさっそく読んだ。仲山さんは「内山さんに似ているかも」と勧めてくれたのだが、ぼくは「山野井さんほどはクレイジーではないですよ(とてもとてもそこまで突き抜けてはいないという意)」と感想を返したことを覚えている。


2020年1月8日、Zoomによる編集会議1回目。約月1ペースで4月中旬まで5回行った。2人のプロの厳しくも新鮮なフィードバックは、毎回「そうか、なるほど!」と唸らされるものばかりだった。

特に、「事実ベースの日記のようで感情の動きが書かれていない」「感情の動きのある部分は深く掘り下げ、逆に、ない部分はカット」というコメントで、ぼくの12年間秘めていた内面がさらけ出され、どんどん丸裸にされていく感覚だった。

大体半分を書き上げた4月下旬、仲山さんから提案があった。
「読書会やりませんか?」
「は?何ですか?読書会???」
まず、参加してくれる人がいるのだろうか?というのが疑問だった。
「何か特典がいりますよね?」というぼくの疑問に対し、仲山さんから「そういう利害関係がある関係は長続きしないものです」。


確かにそうかとは思いつつ、やっぱり継続的に参加してくれる人がいるのかどうかはずっと不安だった。正直、1回目をやってみても、まだ不安は残った。途中までリリースし、読んでもらって、感想や質問をもらう。2回目に「なんだか、これはいいぞ!」と気がついた。どこに興味を持ってくれたのか、どこが良かったか、読者の興味が知れるのだ。


読書会に対する見方が大きく変わった。特に、ぼくのような作家業ど素人にとっては超絶素晴らしい機会だった。作品を世に出す前の段階で、本気で興味を持って読んでくれる人からのレビューを直接もらうことができ、それを作品に反映させることができる。そうか、そうか。そう読まれるか。そういうところが刺さるのか。素人のぼくには目から鱗の連続だった。レビューの質があまりに高かった読書会では、編集のプロ2人が「今回はヤバかったですね」と唸った。


また、大きな気づきを得られたこともあった。『ファイナリストの関係性』についてだ。


「ずっと読んできて、バチバチのライバルだったのはずのファイナリスト同志がこんなに仲がいいはずがない、きっときれいごとだろうと思っていたけど、この絆は本当だったんだと分かりました。ごめんなさい。」


当事者としてはこれまで違和感を感じてこなかったので、これはぼくにとって大発見だった。これこそ、NHK本と一線を画すことができる、受験者のぼくだから書けることではないか。実は世間の人たちが知らない/気づいていないこと。この宇宙飛行士選抜が持つ不思議な力を、体験したぼくが伝えるべきではないか!


読書会は全7回。作品の全章を先行リリースして読書会メンバーに読んでいただいた。読書会からWeb連載(そしてきっと書籍になるまで)で作品がどう変わったのかチェックする人まで現れた。それを楽しみにしていると。作品を作るというプロセスを一緒に楽しんでくれている。本当に嬉しいことだ。

2020年6月16日にWeb連載を開始してからこれまで23回を数える。あと、4回ほど続く予定だ。8月25日にはAmazon予約開始!を大々的に宣伝し、発売3か月以上前にベストセラーマークをつけさせてもらった。まだ、作品が仕上がってもいないのに、予約していただいてベストセラーマークがつく、まるで詐欺行為を働いているかのような罪悪感を味わった(笑)

ちょうど「あとがき」を書き終え、気持ちの区切りがついてホッと一息ついた2日後の10月23日、萩生田文科大臣と若田飛行士というダブル光一ペアから来年秋の宇宙飛行士募集の発表が行われた。

これまたぼくにとっては突然のことだった。なんというタイミングだろうか?こんなビッグニュースを外すわけにはいかない。慌てて「あとがき」に追記することにした。
この発表を聞いたとき、2008年の募集発表時に感じた、毛が逆立つような感覚や高揚感、湧き上がる緊張といったものはなかった。その一方で、前回は受験資格がなく待ちに待っていた若者たちは、夜眠れないほどの興奮を覚えていた。そう、リアルなターゲットを目の前にすると緊張が走るよね。
期せずして、ぼくの心は次に向いていることを確信した。

ちなみに、募集開始予定の1年前に公表されるという初のシチュエーション。これまではせいぜい1ヶ月だった。Jしっかりと準備(色々な意味で)していただく期間を取ることで、たくさんの優秀な方に挑戦して欲しいというJAXAの最大限の配慮である。ぜひ有効に有意義に使って欲しい。ぼくも急遽、宇宙飛行士挑戦エバンジェリスト活動を+1年延長することに決めた。

note(プロフィール参照)での情報発信を行っていくので、ぜひこちらにも注目を!

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noteはじめました

こうしてほぼ出来上がった作品を見てみると、とてもぼくが書いたとは思えない出来になっていた。決してひとりで書くことはできなかった。たくさんの人の力をお借りしたその結晶がこの作品だ。ぼくの宇宙飛行士への想いのすべてが詰まった宝物になった。


書籍特典として、4ページの巻頭写真集、新しく書き下ろしたコラムの追加、細部にわたりこだわり抜き、「はじめに」から「おわりに」まで全体を通して、楽しんでいただけるものに仕上がった!と自信を持ってお届けできます。

ぼくの最初で最後の渾身の作品、ぜひ手に取ってみてください!


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◆◆◆プロフィール◆◆◆
内山 崇
1975年新潟生まれ、埼玉育ち。2000年東京大学大学院修士課程修了、同年IHI(株)入社。2008年からJAXA。2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト(10名)。宇宙船「こうのとり」フライトディレクタ。2009年初号機〜2020年最終9号機までフライトディレクタとして、9機連続成功に導く。(全号機フライトディレクタは唯一) 現在は、新型宇宙船開発に携わる。趣味は、バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)、ラーメン。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。


宇宙兄弟Official Webにて『宇宙飛行士選抜試験〜12年間 語ることができなかったファイナリストの記憶〜』2020.6.16より連載中。2020.12.5書籍『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』(SB新書)発売予定。

宇宙兄弟Official Web連載:https://koyamachuya.com/column/column_category/uchiyama/
Amazon(予約受付中, Kindle版あり):https://www.amazon.co.jp/dp/481560522X/
Twitter(有人宇宙情報発信) : https://twitter.com/HTVFD_Uchiyama
note(宇宙飛行士挑戦エバンジェリスト活動) : https://note.com/2008astro_final
(近日こちらに移行予定→https://www.2008astro_final.com)


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