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月面脱出なるか?FFS理論実践ワークショップ with HoSP[石橋 拓真]

ついにエントリーが始まった、宇宙飛行士選抜試験。学歴不問と門戸が大きく広がり、とりわけ「発信力」が求められる今回の募集ですが、国際宇宙ステーション(ISS)でも月面ミッションでも変わらないのは、チームで高い成果を出す重要性です。そのチーム編成に於いて、メンバーごとの「ストレス特性」を組み合わせることに着目した手法である「FFS理論」が、最近多くの注目を集めています。
3号連続でお届けするFFS理論特集、今回は日本の有人宇宙開発を振興する若手による草の根組織Homer Spaceflight Project (HoSP)の方々と共に、「月面遭難脱出」(創造性開発ワーク)のグループワークを行った様子をお届けします。事前にFFS理論による分析を受けたメンバーが、グループディスカッションの中でどのようにそれぞれの個性を発揮するのか。FFS理論実践の第一人者である古野さんに解説いただきながらの実践です。

宇宙兄弟8巻#71「公園におっさん2人」縦 (1)

▲出典:『宇宙兄弟』8巻#71 ©︎宇宙兄弟/講談社

今回取り組む「月面ランデブーゲーム」は、別名「NASAゲーム」とも呼ばれるもので、チームビルディングなどで用いられることの多いコンセンサスゲーム(グループでの合意形成が重要になるゲーム)です。
ゲームでは、自分たちが不時着した月面着陸船の乗組員だと仮定して、不時着地点から320km先のランデブー地点にたどり着く方法を考えます。
そのために、マッチや方位磁石、信号弾、救命ボートなど、「不時着の衝撃に耐えて使用可能な15品目の機器」の優先順位をつけながらが具体的な脱出方法を考案するのが、このグループワークの課題です。
4人全員が生き残るために、与えられたアイテムをどう活用するか、科学的かつクリエイティブにアイデアを出し合い、それをまとめていくことが必要になります。

2022-1月号-SS石橋取材の様子

▲今回ゲームに取り組んだHoSPメンバー
上段中央:SS石橋、右:HoSP江島さん。
下段左:HoSP角谷さん 下段中央:古野さん 下段右:HoSP池田さん

ゲームの進行としては、まず5分間の個人ワークでメンバーそれぞれがアイテムの使い方を考え、それを元に35分のグループワークでチームとしての結論を出します。議論の内容の記録は、今回は江島さんが担当しました。

グループワークは、まず進め方の確認からスタート。

角谷:品目ベースで「要るもの/要らないもの」を分けていきますか?それとも、脱出方法のアイデアから品目に落とし込んでいきますか?
石橋:後者が良さそうですね。ランデブー地点までの移動方法、ランデブー地点からの上昇方法、その間の生命維持、の3つに分けると考えやすそうな気がします。

すると早速角谷さんが具体的なアイデアを提案。ネックである「上昇」をロープを用いてクリアする方法で、議論のベースを築きます。

角谷:歩くのはしんどいと思うので、できるだけ体力を温存した状態でランデブー地点に到達したいですよね。なので移動案としては、ボートに乗って信号弾やピストルなどで飛び、最後の上昇にCO2ボンベを使うのが良さそうかなと。それと上昇で使えそうなものとして、15mのロープを割いて100mにするとかもアリな気がします。一人上がってしまえば、残りの3人がロープで上がれるので。
江島:酸素が5日分とあるけれど、太陽電池を使って水を電気分解すれば増やすこともできるね。

それをベースに、池田さんがアイデアを膨らませていきます。

池田:320kmって見える距離じゃないので、飛んでいく方向を定めるのが難しいですよね。どこに行けばいいのか、位置を正確に定めて最短距離で行けるようにすることが必要ですよね。最短経路を割り出すには、FMを使って母船と通信すれば良さそう。

一方で細かい部分が少し気になり、質問する石橋。それがまた意外なアイデアに発展します。

石橋:位置の把握は、星座表を使えばいけるんでしょうか。
江島:それしかないよね。磁石って使えないよね?
池田:月の磁場よりも電池とかに引っ張られそう(笑)
江島:むしろ、母船にめっちゃ強い磁場を発生させてもらうとか(笑)
石橋:生命維持で気になっているのは、食料があっても宇宙服を脱ぐ場所が無ければ食べられないですよね?
江島:2週間だけなら水だけでやっていけるから、その間なら水だけで頑張るとか。
角谷:栄養素が気になるなら粉ミルクを溶かせば耐えられそうですよね。

記録係として全体を俯瞰する江島さん。細かな部分の整合性も確認しながら、終盤にかけてまとめをリードしました。

江島:何時に話し始めましたっけ?
角谷:あと15分ですね。
江島:今までの話をまとめましょうか。移動方法としては、徒歩か飛ぶか。生命維持の方法としては電気分解で酸素を作り、残った水に粉ミルクを混ぜて飲む。食料は、置いていく。これは徒歩でも飛ぶでも使えますね。
母船の特定方法は磁場か、星座表か。上昇案としては、反作用を用いるか、磁力を用いるか。反作用を使うには、CO2ボンベの噴射と水素-酸素の燃焼と。いずれにせよ、最初の1人がロープを使って残りの3人を引き上げる感じ。複数のプランに対応できるような形でリストを作らないとですよね。

最終的にリストを作る際には、角谷さんがテキパキと割り振り。最後の5分間で、一気に仕上げました。

角谷:二つのプランのどちらでも使うもので言うと、上昇の時のロープと酸素ボンベは必要ですよね。あとは水。
江島:その順位は?
角谷:酸素、水、ロープ。生きなきゃいけないので。あとは移動にはボートと信号弾、ピストルですね。
江島:次は?
角谷:FMと星座表。
江島:上昇にマッチも必要ですよね
角谷:あと電気分解するならAED必須なので、救急セットですね。

以上、グループワークの模様をダイジェストでお届けしました。
NASAゲーム自身とても面白いゲームなのですが、今回はさらに「自分の強み/弱みは何か?」と言うFFS理論での診断を受けた上でのチャレンジだったので、一段違った楽しみ方ができました。
次回の2月号では、今回のワークでの4人の振る舞い方を、FFS理論による分析から事前に作成した「予測シート」と照らし合わせながら古野さんに解説いただきます。

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『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』
古野俊幸 著/日経BP
出典:日経ビジネス

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『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたを引き出す自己分析』
古野俊幸 著/日経BP
出典:日経ビジネス

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古野俊幸(ふるのとしゆき)
株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

新聞社、フリージャーナリスト、出版社を経て、1994年にFFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のための会社を設立して、現在に至る。現在まで約800社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは60万人、約6万チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者。
主な著書:
「宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み」(日経BP)
「ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型」(日経BP)
「宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたを引き出す自己分析」(日経BP)
「本当のリーダーはどこにいる?」共著(ダイヤモンド社)
「組織潜在力」共著(プレジデント社)
「組織を変える!社員を変える!会社が変わる!」共著(中経出版)
「入門チームビルディング」共著(PHP新書) 
「適正配置と組織の最適編成マニュアル」(アーバンプロデュース刊)

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石橋 拓真(いしばし・たくま)

1997年生。東京大学医学部医学科5年。日本宇宙航空環境医学会企画委員。宇宙開発フォーラム実行員会執行部を経て、Space Medicine Japan Youth Communityの立ち上げ、運営に携わる。2019年より、雑誌「宇宙・医学・栄養学」編集委員。2020年より、スペースバルーンで炎を宇宙に掲げるプロジェクトEarth Light Project執行部。2021年より、株式会社dinow宇宙ヘルスケア部門チーフ。

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