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Space Seedlings ロゴ制作秘話[山岸 奏大]

2021年3月、THE VOYAGEの学生部隊Space Seedlingsのロゴが完成いたしました。

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制作を担当したのは、デザイナー・プランナーとして活動している、わたくし山岸奏大と、同じくデザイナーの柄本涼です。今回は、そのロゴにかけられた思いや制作秘話、そしてSpace Seedlingsのこれからについて寄稿させて頂きました。

Space Seedlingsのロゴの意味

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ロゴの中心にあるのは、「苗木の"根"」。そしてその周りに輝くのは、苗を育てる養分であり、星の海でもあります。苗は、正円の枠を越えた先にある「描かれない存在」として表されています。僕たちは、このロゴを通して2つのことを表現しています。

ひとつは、「可能性」。

Space Seedlingsにとっての「苗木」とは何か。僕たちはそれを、「何ものにも縛られずに自由でいて、これからどんな形にでもなれる可能性」と捉えました。では、そんな「可能性」をいかにして表現するのか。試行錯誤の末にたどり着いたのは、あえて「描かない」ということでした。ロゴとして苗を描ききってしまうこと、それはどんな形であれ可能性を制限することになります。枠の外に苗を配置することで、どこまでも成長できる可能性を秘めたロゴに仕上げました。

そしてもうひとつは、「多様性」です。

Space Seedlingsは、天文学・惑星科学・建築・医学・工学・アストロバイオロジー・宇宙ビジネスなどなど、個性豊かな学生、苗木たちの集まりです。一人一人がしっかりと"根"を張り、また異分野との交流を養分に成長していく様子を「描く」ことで様々な分野に根差す団体であることを表現しました。

どのようにしてこのロゴが生まれたのか

僕たちは、いいロゴの定義を「土着的で、シンプルであること」としています。「土着的」とは、その団体にしかない固有値のようなものをみつけ、しっかりと取り入れることを意味します。そしてそれを表現するとき、たくさんの要素で長々と説明するよりは、的を得た表現で簡潔に説明する方がいい。

そんなロゴをつくるには、Space Seedlingsを表す要素をいかに多く引き出せるか、そしていかに幅広くアイデアを検討し、的確な表現をみつけられるかがカギになってきます。そのための取り組みのうち、ここでは2つ紹介したいと思います。

1.「超・個人的ミッション」のロゴをつくるワークショップ

Space Seedlingsを「団体」と捉えて議論を進めると、全体に共通する公約数的な意見しか発言できなくなってしまいます。もしかしたら何の役にも立たないかもしれないけど、Space Seedlingsを構成する「個人」の声にもっと耳を傾けたい。そんな思いから、このワークショップを行いました。Space Seedlingsを通して個人が取り組みたいミッションを、「ロゴをつくる」という方法で表現してもらいました。

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その一部を紹介すると、

高萩さん「Space Seedlingsというフィルターを通してかかわった多くの人をつなげ、その先で宇宙の様々な分野でつながっていきたい」

都村さん「宇宙の面白さを音楽を通して伝えたい。Space Seedlingsでバンドをやりたい!」

久保さん「自分の書くものが好き。ネットに挙げられる文章は消費される。でも、もっと自分は人を絞め殺すくらいの文章をかけたら。」

などなど。みなさん、本当に様々な観点から「宇宙」を熱く語ってくれました。僕個人が好きだったのは、その分野横断的な「宇宙」という対象を一つのキーワードとして「教育」と結び付けた、穂積さんのお話。 実際の提案に繋がった意見もありますが、楽しみながら深い話ができたことが何よりの収穫でした。

2.質よりも量を大事にしたブレスト

ヒアリングやワークショップを通して得た意見をもとに、アイデア出しを行います。このとき重視したのは、「とにかくたくさんの案を出すこと」です。各案の質にはこだわらず、「ひとり30個」という条件でラフ案を作成し、2人あわせて60個ある案をもとに話し合いを深めます。

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「ひとり30個」と個数を決めたのは、発想の幅を広げるための工夫です。 ふつう、すぐに思いつく案だけを書き出すと5個や10個で手が止まってしまいますが、ここでじっくり自分の案をみつめると、なんらかの「偏り」が出ていることがわかります。この偏りに対してあまのじゃくに考えてみたり、そもそも論を掘り下げてみると、アイデアの幅が広がります。 例えば今回の場合、提案の多くには「双葉」の絵が描かれていたり、双葉の下には植木鉢がついたものが多くみられました。

ここでまず、あまのじゃくに「双葉を使わない」という縛りでSpace Seedlingsを表現できないか、と考えてみます。あらためてヒアリングのメモを見返してみると、「中高生に向けた、宇宙への入り口をつくりたい」ことがミッション、とあります。「入り口」を表現するなら、双葉を使う必要はありません。「扉」や「ドアノブ」を用いたほうが適切です。あるいは、入学のイメージから「桜」をモチーフにいれてもいいかもしれません。

つぎに「そもそも」を疑ってみます。そもそも、なんでSpace Seedlingsには「苗木」が必要なんだろう?そうすると、苗木とは「これから伸びていける可能性」だったり、「フレッシュな感じ」の象徴であることに気づきます。では、それを表現するにはそもそも「双葉」なんだろうか?といったように、「そもそも」を何重にも問い続けることで幅を広げていきます。

こうした「偏り」は発想を広げるチャンスでもあるので、提案が多いほど多くの「偏り」が生まれ、議論が活発になるのです。こうしたブレストを繰り返し何度も行い、案同士をかけ合わせたり、提案の中から強力なメッセージを抽出することで、最終的な形へと落とし込んでいきました。

Space Seedlingsのこれから

こうして生まれたSpace Seedlingsのロゴですが、「これからどこまでも伸びていけるSpace Seedlings」という、いま、そしてこれから先もそうあり続けたいというメッセージを形にできた一方で、その時どきで「具体的にどうあるか」について語るものではありません。

だから最後に、ロゴでは語れなかった「Space Seedlingsのこれから」について、僕自身の超・個人的な意見をお話したいと思います。

宇宙についてのお話を聞いている中で、僕はその一つ一つの新鮮さに驚きました。身近にある「トイレ」一つとっても、その機構は全く異なるそうです(地球のように下に落ちていかないから"流し続け"ないといけない)。「重力」の有無、と聞いただけではあまり想像できなかった地上と宇宙の違いが、日常的な風景を引き合いに出して語られるとその解像度がぐっと引き上げられます。

そんな宇宙と地球の「違い」に着目して様々な切り口から表現すると面白くなりそう、と思いました。Space Seedlingsのミッションは「中高生に向けた、宇宙への入り口をつくること」であり、それを担うのは何らかの形で宇宙に関わる個性豊かな学生たちです。多様な切り口も、異なる視点をもった学生たちが集まるSpace Seedlingsならいくらでも生み出せるんじゃないか、と思います。

例えば「宇宙バンド」の話をされていた都村さんのアイデアを少し膨らませて、久保さんがお話されていた「火星では地球よりも音が低く聞こえる」という事実をかけ合わせると、"地球上では可聴領域外にあるヒミツの音声データを組み込んだ楽曲を作成し、火星にもっていくことで初めて「隠されたBパートが聴ける」音楽"、面白いんじゃないでしょうか。いや、同じ音源なのに「火星と地球」という別々の場所で同時に流すことでセッションできる楽曲、とするのもアリかも?

・・・なーんて、そんなことを話していたら、横で聞いていた吉田さんが一言。「君もSpace Seedlingsに入っちゃえば?」

あ、その手があったか。

というわけで。山岸、Space Seedlingsに入りました。
僕自身、「これから」の担い手としていろんな発信をしていきたいと思います!(こんな、ゆるーい感じがいいんだよね。)


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山岸 奏大
東京理科大学 工学部 情報工学科 4年

雑多にものづくり。一日ひとつの「塵」の字をデザインし、Javascriptで特設サイトに降り積もらせる「ChiritsumoChallenge」実施中です。

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