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名字の言 ロバート・キャパ 没後70年 聖教新聞 2024/05/26

 今、彼が生きていたらどんな場面を撮るだろうか。そう思わせる写真家がいる。ロバート・キャパ。数々の戦地に飛び込み、その過酷な実相をカメラに収めた。インドシナ戦線で命を落としたのは、70年前の5月25日である▼その直前、彼は日本にいた。横木安良夫著『ロバート・キャパ最期の日』(東京書籍)には、この来日で静岡の焼津を訪れたことが紹介されている。ビキニ環礁の水爆実験で被ばくした第五福竜丸が入港していると知ったことが、その理由だった▼だがキャパは、第五福竜丸に近づいてシャッターを切ることはなく、漁港の朝の水揚げの様子や漁師たちの姿にカメラを向けていたという▼東京藝術大学の伊藤俊治名誉教授は本紙4月8日付で、キャパの写真には“他者への共感力が内在している”と評していた。キャパは被ばくという出来事を現地の人がどう感じているのかに迫ることで、その本質を伝えようとしたのかもしれない▼東京・八王子市の東京富士美術館では現在、キャパの特別展が開催中だ(6月23日まで)。「二度と戦争の写真は撮らない」と言いつつも、ベトナムへと向かったキャパ。その一枚一枚に込められた不戦への願いを受け止め、平和への歩みを進めていきたい。(聖)

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