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草刈ってたら食の魅惑にブチ落とされた一件

雨期が終わり、それでも新潟らしいいつ降ってもいい良いような薄く雲がかかったような空の日。僕は、ある食べ物への魅惑の渦へ叩き込まれた。

その日は、集落の草刈りをする日だった。かなりの広範囲の草を刈るため大勢の人が集まって作業していた。その日はどうも体が重くて草刈り機が重く感じ、草を刈り払ってはその草の上に座り込んで景色をぼーっと眺めていた。とにかく、なぜかテンションが低く。何ともないことを考えながら作業をしていた。

そんな時に、ヌッと、色黒のじいちゃんが現れた。彼の名前はマモルさん、集落の中でもワイルド属性高めのじいちゃんだ。本業が大工ということもあり、繊細な作業もそつなくこなす。そして、大工だけでなく田んぼのこともやるし、畑もやるような昔ながらの百姓だ。洗礼された古き良き生活の知恵が詰まっている。

だが、この人が面白いのは洗礼された生活の知恵が彼のワイルドさが相まって、「ビュンッ」「ドカッ」「ズドン」と凄まじい勢いで飛んでくるのだ。今回も予想と期待を裏切らない勢いのある飛び方をしてきた。

彼は、あるモノを持って現れた。毒を持ち、噛まれるとジンジン強い痛みに襲われる。その一方、古来から薬やお酒を作る際に使われれる。

そう、マムシだ。

しかも、聞くところによるとマムシを草刈り機で叩き下ろし息の根を止めてきたらしい。ただ、皮を剥ぎ、内臓を綺麗に取り出すなどの綺麗に繊細に処理をされていた。さらに、刈った草で紐を作り、木に吊るしていた。

そこまで綺麗に処理をするということはおそらく食べるのだろうと思い、何にするのか聞いてみた。

蛇を丸焼きにすると鳥のササミのような味になるということを聞いたあったため、何にするのか聞いたが焼いて食うとか言われるのだろうとなんとなく聞いた一言だった。


『出汁を取って、そばで食う。』


判断が遅いッ!

そんないきなりの叱責を受けたような衝撃と共に、エレガントだ。実にエレガントな食し方だと驚嘆と感銘。

安直な答えを期待して期待していた僕に斜め上からの波状攻撃。

マムシの出汁だと...どんな味がするんだ。

マムシの出汁でそば...どんなそばが合うんだ。

出汁ってことはいろんなものに使えるじゃないか...

ことごとく食の魅惑に打ちのめされた。

食べたい。そうか、俺は腹が減ってるから今日はだるいのか...それになんだか、刺激が足りてない。蛇なんて食った人の話はよく聞くけど、食べたことない。今は、里山にいて自分で取って食べることができるのか...

そんな自覚をした。

できれば、譲ってくれと言いたかったが、貴重なため今回は、流石に言えなかった。それに自分でとったマムシはどんな味がするのだろう。できれば、米と食べたい...どんな食べ方で食べれば良いんだろう。期待や疑問が尽きない。

そして、改めてマモルさんの顔を見る。

この顔だ。

色黒の顔。頬に滴る血。よもぎの耳栓。グラサンに、makitaの帽子。不敵な笑い。

情報過多である。見れば見るほど、伝わってくる。とてもiPhoneで撮ったとは思えないクオリティー。生活の知恵がワイルドに飛んでくる。

「ドカッ」


りんたろうみみずはgoogleでマムシの捕まえ方を調べた。

準備はできている。

いつも応援していただきありがとうございます。 多分、山にいくか不思議なものを食べる力になります。