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絵本


 読書感想文指定図書として、「ヒロシマー消えた家族」が紹介されていた。中身はよくわからないが、表紙の猫をおぶった少女の笑顔がかわいらしく、興味をひかれた。

 今年九十四になる母が幼いころ大きな猫を飼っていておぶっていたという話をしていたから、とても気になったのだろう。表題から、原爆投下の後いなくなったのであろうということが想像できる。悲しくなるから読みたくない気持ちも正直あるが、買ってみようと思っている。


 娘を預けていた保育園では毎月、福音館書店の絵本を二冊ずつ購入することになっていた。それを、夫婦で交代しながら毎晩娘に読み聞かせていた。お気に入りの絵本は繰り返しねだられ、面倒でページをとばそうものなら、違うでしょと、厳しく指摘されたものだ。言葉がリズミカルだし、絵も美しく、腕はたしかにだるくなるけれど、私にとっても楽しい時間であった。

 たまに『ハイジ』など長編の物語も読んだりして、話が佳境に入ると私は涙声になり、娘も一緒に泣くこともあった。長じて娘は本好きになり、大学のころは文芸部だった。今はアイパッドでイラストエッセイを書くのが、趣味になっている。


 両親は私に絵本を買って与えたが、毎晩読み聞かせてくれたという記憶はない。だが、なぜか一冊の絵本の思い出だけは残っている。たしか、折り紙の人形の写真の絵本だった。 

 
 母は、ページを広げ「ゆみこちゃん、○○だね」などと、人形が話しているかのように語りかけた。私はその絵本は私のための特別なものだと思った。字は読めなかったが、「ゆみこちゃん」と書いてあると思っていた。ひらがなが読めるようになって、その絵本を見てもどこにも「ゆみこちゃん」とは書いていない。この絵本じゃなかったのかな・・。腑に落ちないまま、その絵本も処分されてしまった。


 まだ字が読めない子どもにとっての絵本の世界は意義深い。想像力をかきたて、いくらでも幸せになることができる。

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