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「高畑勲展」at国立近代美術館

またしても会期末ギリギリの10/1に高畑勲展を見てきました(またか)。

展示は、高畑勲氏の年譜を追う形で進んでいきました。展示を見て思ったところをつらつらと書きます。

第1章

起点となった「やぶにらみの暴君」(海外アニメ)から、「太陽の王子ホルスの大冒険」までの東映動画に在籍した時代。

・年譜のところに、なんと高畑勲氏が書いたアニメ「ドラえもん」の企画書。読んでみると

放送第一回の内容は、原作にもドラえもんが出てきてから周囲がドラえもんに慣れるまでの記述がないので、第一回から淡々とエピソードの羅列にすべき…

という内容があって「高畑節、きたきたきた…!」と中川太志くん演じる「なつぞら」の一久さんの理屈っぽいくだりが、いきなり脳内をかすめる…。

・「ぼくらのかぐや姫」の構想メモ。「かぐや姫の物語」の原型は、すでにこの頃から考えていたんですね。ここでの着想が、晩年の最高傑作「かぐや姫の物語」につながっていくのでなんとも興味深い。

・「太陽の王子 ホルスの大冒険」作成中に大幅な進捗遅れが発生したため、製作部長から高畑氏に出た指示の書類。「演出過剰」「原画多すぎ」「チェックゆるくしろ」「定時出勤しろ」(笑)

・というわけで高畑氏が、遅延見込みと対策について報告している文書。自分も身につまされることがあり泣ける…(笑)

・「太陽の王子 ホルスの大冒険」はアイヌのユーカラに題材を取っている。「わんぱく王子の大蛇退治」はスサノオの話。高畑勲らしい教養を伺わせる題材で、大人があらすじを聞いても魅力的な作品。

・「ホルス」の企画段階でのスタッフのアイデア出しメモ。小田部洋一、奥山玲子、宮崎駿などが名を連ねていて、「なつぞら」のスタジオの空気感が感じられる。

・作品世界をスタッフと共有するために、いろいろな表や図(人物関係図、テンションチャートなど)も高畑氏によって作成されていた。

・「太陽の王子 ホルスの大冒険」の岩男と氷象のアクションの原画が、すでに「あの宮崎駿」の迫力ある原画なのは流石としか言いようがない…!

第2章

「パンダコパンダ」から、世界名作劇場までのAプロ・ズイヨー動画に在籍した時代。

・「パンダコパンダ」の少女は長靴下のピッピが元ネタ。どうりで元気な女子だと。

・高畑勲と宮崎駿が完成させた、レイアウト作画システム。システムを髙畑がつくり、才能ある宮崎が作るレイアウト。優れたレイアウト設計の元では、作画の無駄が出ないというアイデア。

・「赤毛のアン」の設定ノートが細かい。イベント発生時の年齢と月、グリーンゲーブルスの地図まである!

・その他「ハイジ」「母をたずねて三千里」「赤毛のアン」と世界名作劇場のリアタイ世代には本当にたまらない内容。

「ハイジ」の世界のジオラマや、

「赤毛のアン」のフルオープニング映像は最高。特に「赤毛のアン」には、アニメに感化されて初めて絵本を買ってもらって、グリーンゲーブルスでの生活に憧れましたなあ…。イチゴ酒、美味しそうだった…。

第3章

「じゃりんこチエ」から、「平成たぬき合戦ぽんぽこ」までのテレコムアニメーション・スタジオジブリ(初期)に在籍した時代。

・作成するアニメの舞台が日本へ。「日本らしいアニメとは、表現とは何か」を考えた時代。

・「火垂るの墓」の生前と没後の二人の表現のアイデア。リアルすぎてトラウマになる人が続出するのも、さもありなん…。

・「ブラタモリ」の熊野の回の放送で「補陀落渡海」を見て調べたことがあったけれど、「ぽんぽこ」の中でも補陀落渡海を思わせる描写があることに驚いた。アニメではホントに数分のシーンなのに、どれだけ深い設定を入れてくるのかと。

第4章

「となりの山田くん」「かぐや姫の物語」とスタジオジブリ(晩年)に在籍した時代。

・高畑氏の著作本の展示。

実は、私が高畑氏を「ジブリ系の映画の関係者」というぼんやりとした認識から、はっきりと「理論的な表現法を駆使してアニメーションを作成している人」と認識したのは、この本を読んでからだったので、ちょっとうれしかった(笑)

というわけで、この本は「日本ならではの動きやストーリーの絵画表現」に興味を持った方にはかなりのおすすめ本。

※余談ですが、この本は磐梯山温泉ホテルのロビーに置いてありました。面白かったので帰宅してから買っちゃいましたけど。

・「となりの山田くん」「かぐや姫」での挑戦。アニメ独自の均一な線→強弱のある線、あえて余白を残した背景、人間の創造力に委ねた表現などの解説。非常にわかりやすい。

まとめ

高畑氏が抱いていた「日本ならではのアニメーションを作りたい」という昔からの宿願が、いろいろな製作経験を経て「かぐや姫の物語」に結実していく流れがとても詳しく解説されていて、とても感慨深い内容でした。

というわけで「かぐや姫の物語」はまだ見ていないので、早く見なくては…(えーっ)

物販

グッズは、やっぱり「ヒルダとユキちゃんとアメデオかわいい」でセレクト。

図録も買ったので家族で回覧します。

会場の出口の外には、「ハイジ」のおんじの家の中が再現されてました。

アニメでも、チーズ美味しそうだったなあ。ヤギ乳はチーズにすると美味しいことも、現地ロケハンで取材してわかったことらしいですよ!ここにもこだわりの設定!

長くなりましたが、以上です!

記事を読んで「美味しいコンビニスイーツとかアイスをおごってやるか…」というお気持ちになりましたら、よろしくお願いいたします。 すごく美味しいモノに巡り合えたら、こちらで紹介するかもしれません…!