見出し画像

ヘラクレスオオカブトと出会う最高のシチュエーション


ショップに行けば、カブトムシやクワガタなどが買える。小さなケースにはおがくずと小枝が入っており、あと昆虫ゼリーを入れれば不自由はない。
幼少期に森で捕まえた経験のある人は残念に思うかもしれない。カブトムシやクワガタというのは森の中で出会うものだと。

今では日本の甲虫だけではなく、ヘラクレスオオカブトまでホームセンターなどで買える時代になった。世界最大の甲虫、ヘラクレスオオカブトである。(以下、ヘラクレス)

ヘラクレスは中央アメリカから南アメリカの熱帯地域に広く分布している。樹液や腐った果実を求めて移動をし、中には全長が180mmを超えるものもいる。

最近は、ユーチューブでよく動画が上がっている。幼虫から育てたのだと得意になった内容のものもある。そのサイズは大きく、生態を観察するにはいいのかもしれない。だが、なんとも元気が感じられない。ヘラクレスが置物のような静けさでさらされているのだ。

動画には、ヘラクレスをカブトムシやクワガタと闘わせるものもある。大きさからして勝敗に察しはつく。無理な演出も感じられて、今一つ楽しめる気がしない。

ヘラクレスのオス同士は、エサ場やメスを求めて闘いをする。胸角と頭角で挟み込み、相手を持ち上げて投げ飛ばしたりする。

だが、研究によるとカブトムシは体格差があると小さい方は戦わずして逃げてしまうらしい。クワガタにしても同様である。互角なサイズのモノたちが相手の意地に応えて闘っているのだ。だから、多くの闘いは人間が介在して、無理にやっているに他ならない。

昔、NHKでヘラクレスの映像を見たことがあった。コスタリカであったような気がするがよく覚えていない。世界最大のカブトムシとしての表題だったので何気なく見ていた。だが、その映像を見ていて衝撃を受けた。

映像は森の中ではなく、田舎の麦畑だった。夕方、たなびく麦畑の上空で黒い点が浮遊している。その数がどんどん多くなっていく。

麦畑の近くには、小さなレストランが一軒ある。店主が子供を連れてゆっくりと外へ出てくる。その頭にはたっぷりとポマードが塗ってある。

上空を飛んでいた黒い点たちは甘い匂いに誘われて、その店主の頭に飛び乗ってくる。店主は慣れた手つきで髪の毛に絡まったヘラクレスをつかみ上げる。森の中にいたヘラクレスたちが我慢しきれずに飛び出してきたのだ。

子供は夕焼けの中で飛び交うヘラクレスたちをつかもうと飛び跳ねている。夕焼けの中で黒い点と人が戯れているのだ。私はその情景に引き込まれていた。かつて、虫との出会いの中でこれほどのものがあっただろうか。

ヘラクレスとの出会いは、夕陽の中にあったのだ。赤い陽光の中にこそ最高の出会いがあったのだ。決して、日本のデパートなんかではないのだ。



(参考)
カブトムシとクワガタの最新科学 (メディアファクトリー新書) 
著.本郷儀人

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。