【書評】『スマホ脳』ースマホから生じるドーパミンによって私たちの集中力が阻害される話
現代において、スマホは私たちにとって必要不可欠なツールです。
スマホがなければ家族や友人と連絡が取れませんし、仕事の連絡や報告にいも支障を来してしまいます。
パソコンでも連絡や報告はできますが、スマホをメインに使っている人が圧倒的に多いと思います。
今や大人だけでなく、子供もスマホを使用しているので、もはや
スマホなしでの生活はあり得ない
と言えるでしょう。
しかし、スマホにはある種の中毒性があり、そのことがしばしば問題になっています。
そのような状況で書かれたのが、アンデッシュ・ハンセン著『スマホ脳』。
本書ではスマホが引き起こす問題について書かれています。
以下、本書についての書評的なことを書いていきます。
スマホはドーパミンを放出する
ハンセンは、スマホを使用することで私たちの脳内からドーパミンが放出されると主張しています。
ドーパミンとは報酬物質と呼ばれ、私たちを元気にするものです。
人間は新しい情報を欲するので、スマホはその情報を得るための最高のツールなんですよね。
スマホは人間の欲求(つまり情報を得る)を最大限に満たすので、その結果ドーパミンが放出され、人はますますスマホにはまっていくというわけです。
情報を得る→快楽を得る
これだけを聞けば非常に良いように感じます。
しかし、スマホの使用時間が増えることで、勉強や仕事に集中できなかったり、スマホ以外の活動(読書やアウトドアなど)を楽しむ時間が減るという負の面が存在します。
この負の面の効力があまりにも強いため、私たちの日常生活に悪影響を与えるのです。
報酬中枢を煽るSNS
SNSをやっている方は多いと思います。
このSNSもドーパミン放出に影響を与えているのです。
FacebookやTwitter、インスタなど、SNSを使いまくっている人が多いと思いますが、それらのSNSにつく「いいね!」やTwitterのリツイート(自分のツイートがリツイートされテンションが上がる)は私たちの承認欲求を掻き立てます。
承認欲求が掻き立てられまくり、結果としてドーパミンが大量にあふれ出て、ますます私たちをスマホに夢中にさせるのです。
厄介なのは、SNSの開発者が人間の報酬システムを研究していることなんですよね。
どのような機能をつければ人間のドーパミンが放出されるのか、そのメカニズムがわかっているのです。
SNSの開発者側からすれば、消費者がスマホにはまってくれれば、それだけ利益になるので、彼らをスマホに、SNSに夢中にさせない手はありません。
そういうわけで、SNSの開発者はますます人々を魅惑する機能を作り出し、そして人々はスマホの虜になってしまいます。
そして、人々はスマホに夢中になるあまり、集中力が阻害されたり、スマホ以外の活動に費やす時間がなくなってしまうのです。
罪悪感に苛まれるシリコンバレー
シリコンバレーには、有名な企業や大学が数多くあります。
このシリコンバレーで、私たちが知っているスマホやスマホのアプリなどが開発されています。
言い方は悪いですが、私たちの集中力を奪うスマホやSNS、アプリを開発しているのはシリコンバレーにある企業なのです。
企業の人たちは利益を得まくっているので、ニヤニヤウハウハかと思いきや…彼らは人々の集中を削ぐツールを開発してしまったことに罪の意識を感じているそうです。
シリコンバレーで働くジャスティン・ローゼンスタインという男性は、自分自身のフェイスブックの利用時間に制限をかけたり、本来は保護者が子供のスマホ使用を制限するアプリをインストールするなど、スマホの使用に一定の制限をかけているそうです。
衝撃的なのが、彼こそがフェイスブックの「いいね!」の機能を開発した人なんですよね。
人々の集中を阻害するツールを開発した人がスマホに使用に制限をかけている。
開発する側がスマホが引き起こす危険性を理解し、自分はその対策をしているのです。
彼はあるインタビューで、
「製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与えるーそれに気づいたのは後になってからだ」
(『スマホ脳』p.80より引用)
と答えています。
このように罪悪感を感じているのは、ジャスティン・ローゼンスタインだけでなく、他の開発者も同様の思いを抱いているそうです。
最善を尽くした結果、人々に悪影響をもたらしてしまったというのは皮肉なことだと思います。
終わりに
スマホはとても便利であり、私たちの生活を豊かにしているのは間違いのない事実です。
しかし、便利な分使い方を考えなければ、スマホは私たちの集中力・時間を奪うという負の側面があります。
今一度スマホの使い方に向き合わなければいけないように感じます。
以上です。
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