第2章:授業や講義の使い方
学校の授業や塾の講義をうまく活用しよう
今回は学校の授業(塾の講義なども含む。以下まとめて授業と表記)の使い方についてお話したいと思います。学習段階でいうと「概念を学ぶ」に該当します。
※上記の図がわからない方は以下の記事を参考にしてください。
「概念を学ぶ」は新しいテーマについて初めて触れる最も大事な学習段階です。ここで理解できず、わからない内容が積み重なってしまうと、手に負えない状況に陥ってしまいます。すなわち、「概念を学ぶ」段階は勉強が嫌いになるかどうかの大きな分かれ目でもあるのです。これほど重要であるにも関わらず、ここで利用する授業や教材に関心を寄せる人が少ないです。
むしろ「概念を学ぶ」さえ意識して学習の質を高めれば、以降つまずくことは、滅多にありません。したがって、この段階を担う授業や教材の責任は計り知れないほど大きいですし、学ぶ側は厳しく評価すべきなのです。
そこで、まずは学校の授業や塾の講義の使い方についてお話したいと思います。
以下が授業や講義の使い方フローチャートです。
①6割理解できる授業かどうかで、聞く授業を決める
②聞くと決めた授業は、必死に内容の理解に努める
③理解できる内容と理解できない内容に分けて、理解できない内容に印をつける
④印をつけた内容に関し、調べて理解する
⑤理解の助けとなった情報は必ず全てメモしておく
これに沿ってみていきたいと思います。
①6割理解できるかどうかで、聞く授業を決める
授業の活用法として、まず重要なのは、聞くかどうかです。授業は聞くものだと思っていると、落とし穴にはまるので要注意です。なぜなら、わかりにくい授業が苦手科目を作っていくからです。
すでに述べたように、「概念を学ぶ」は新しいテーマについて初めて学ぶ段階です。まだ何も知らない内容なので、わかりやすさが何より大事なのは言うまでもありません。にも関わらず、その学習を支える授業がわかりにくければ、誰でもつまずいてしまいます。勉強は連続的なため、一つ理解できない内容があればドミノ倒しのように倒れ、苦手科目になってしまいます。
でもそれは本当に能力的に苦手なのでしょうか。もし、最初の授業がわかりやすいものであれば、苦手になっていないかもしれません。もちろん好き嫌いはあるものの、中高生レベルで能力的に極端に苦手と感じる内容はあまり多くありません。ではなぜ苦手になるのか。それは根本的に苦手なわけではなく、先入観として苦手意識を植え付けられただけです。そして、それはわかりにくい授業や教材によって後天的に引き起こされます。
だからこそ、「概念を理解する」段階で、聞く授業と聞かない授業を分ける必要があります。苦手意識をもってしまう前に、わかりくい授業から離れたほうがよいのです。基準としては6割理解できるかどうか。6割以上理解できるなら、それは聞く価値があるでしょう。ただし2割程度であれば、授業時間がもったいないです。聞かずに自分で勉強しましょう。最も良くないのは、「わからないのに無理に聞き続けること」。時間ももったいないし、苦手意識も強くなるし、全く意味がありません。「先生に怒られるから」と言う方もいるでしょう。でも、勉強は先生のためにやっているわけじゃないですよね。自分のためです。であれば、自分できちんと勉強をコントロールしましょう。わからないまま聞き続け、後悔するのも被害を受けるのも自分なのです。
ちなみに「3割〜5割理解できる状況」はあまり多くありません。それは6割〜8割理解できる授業で寝ていた時くらいです。理由は2つあります。ひとつは、わかりやすいと感じる授業は基本、半分以上理解できる授業です。さらに、学習とは連続性です。「AがわかるからBがわかり、BがわかるからCがわかる」ように、ABCとそれぞれ関連し合っています。したがって、原則半分以下しか理解できない授業内容の場合、わからない内容がさらに派生して、最終的には2割程度しか理解できない状況になるのです。
以上から、2割と6割を基準にしています。※もちろんこれは、個人差があるため必ず自分の基準をもちましょう。あくまで粘土の型です。
②聞くと決めた授業は、必死に内容の理解に努める
聞かないと決めた授業は自分で勉強するしかありません。これに関しては「新しい内容の学習法」を参考にしてください。一方、聞くと決めた授業はとにかく必死に内容の理解に努めましょう。ここで覚える必要もないし、問題が解けるようにならなくても構いません。「覚える」や「問題が解けるようになる」は「アウトプット」の学習段階です。今、話している内容は「概念を学ぶ」段階です。したがって、つまずきを最小限にするためにも、授業はとにかく理解すること。これを徹底しましょう。
③理解できる内容と理解できない内容に分けて、理解できない内容に印をつける
理解を徹底しても、中には理解できない内容があります。そこには必ず印をつけておきましょう。授業は次々と進みます。新しいテーマもどんどん学ばなければなりません。このスピードの中で、理解できなかった内容に何も印をつけずにいると、ほとんどの場合、忘れてしまいます。そうした忘れられた、理解できていない内容が積み重なり、いつの間にか取り返しのつかないことになってしまうのです。したがって、見逃さないようにするためにも、理解に徹したあとは、理解できなかった内容に対し、印をつけておきましょう。
④印をつけた内容に関し、調べて理解する
理解できなかった内容に印をつける理由は2つあります。ひとつは見逃さないため、忘れないためです。もうひとつはすぐに理解するためです。いくら印をつけても、それを放置していたら、印をつけていないのと同じです。印をつける理由は、それをすぐに調べて、理解するためでもあります。したがって、印をつけた内容に関しては、可能な限り早期に調べ、理解しましょう。
⑤理解の助けとなった情報は必ず全てメモしておく
印をつけた内容もつけなかった内容も、理解の助けになった情報は必ず近くにメモしておきましょう。印をつけた(理解できなかった)内容に関して調べたことをメモするなら納得されるかと思います。しかし、なぜ印をつけなかった、すでに理解した内容もメモする必要があるのでしょうか。それは、理解できたのはあくまで先生の授業を始めとした、補助的な情報があったからです。もちろん何もない真っ白な状態で理解できる内容もあります。しかし多くは先生の解説や参考書の解説を参考にして理解します。ということは、これらの助けとなった情報がなければ、理解できないかもしれません。したがって、すぐに参照できるようにメモとして残しておくことが不可欠です。
またメモがあれば、学んだ直後にいつでも戻ることができます。学生の方は特に、次から次へと新しい内容を学んでいきます。いくら理解した内容でも、それをすぐに頭に定着させることは難しく、多くは一度理解したら、しばらく放置してしまうのが現状かと思います。そこで理解の助けとなった情報を近くにメモしておきましょう。そうすれば、たとえ放置して忘れたとしても、メモを見返せば、学んだ直後の理解度に戻すことができます。
以上が授業の使い方ですが、これらに加え、もうひとつ大切なお話しをします。
授業の評価は常に続ける
一度「聞かないと評価した授業」でも、2つの軸からの評価を繰り返しましょう。なぜなら、「2割しか理解できなかった理由」は単に授業がわかりにくいだけでない可能性もあるからです。
学習者側の問題です。
理解しにくい授業は、単に学習者の新しい内容への理解力や知識が足りないだけかもしれません。こうした現象は特に学び始めに起こりやすいです。ただ、この場合でも授業を聞き続ける必要はありません。一度聞かない判断をし、独学の選択をとるのは妥当です。ただ、その授業は定期的に評価し続ける必要があります。なぜなら、ある程度知識がついてきた段階で聞くと、非常にわかりやすい授業だったパターンも多々あるからです。
人間は新しい情報を把握するとき、トップダウン処理とボトムアップ処理の2つの機能を用います。トップダウン処理とは、すでにもっている背景知識をもとに情報を把握する方法です。一方ボトムアップ処理とは何も知識をもたないまま、目の前にある情報をそのまま把握する方法です。当然トップダウン処理のほうが学習負荷としては低く、スピードも早いです。
さて人間はこの2つの処理を上手に使って、新しい情報を把握します。しかし、まだ知識が浅い人は、トップダウン処理を使えず、ボトムアップ処理のみに依存します。ボトムアップ処理は背景知識を使わないため、学習負荷は重く、スピードも遅いです。これが学び始めに生じる「わかりにくさ」の正体のひとつです。授業がわかりにくいと感じる根底には、ボトムアップ処理しか使えていない学習者側の要因が関係している可能性があるのです。
ただ独学で勉強を進め、ある程度知識がついてくると、トップダウン処理が使えるようになり、学習負荷が下がり情報把握のスピードもあがります。この時点で、授業をもう一度聞くと見違えるほどわかりやすく感じることがあります。この場合、授業を聞かないのは明らかにもったいないため、授業を聞く選択に変更したほうがよいでしょう。
こうしたパターンを見逃さないためにも、「2割しか理解できない授業」は授業側の要因か、学習者側の要因か。この2軸から常に評価を繰り返すことが大事なのです。
以上が学校の使い方+αです。最後にもう一度冒頭の図を見てみましょう。
①6割理解できる授業かどうかで、聞く授業を決める
②聞くと決めた授業は、必死に内容の理解に努める
③理解できる内容と理解できない内容に分けて、理解できない内容に印をつける
④印をつけた内容に関し、調べて理解する
⑤理解の助けとなった情報は必ず全てメモしておく
この繰り返しです。ぜひ参考にしてください🐧
一人でも多くの方にお役にたてたらと思い…ペンペン先生がんばります🐧