生きるかたち

嬉しい出来事があった。
今まで5年間に亘って、叱って怒鳴りちらしていた後輩が、ようやく一人前になってきた。

19歳で自分の元で仕事をするようになってから、たくさんの涙が本人にはあったと思う。実際まだまだではあるが元々の人間性の優しさがあり、本人自身もわかってはいないと思うけれど、本当に良い子だとは思う。もちろん若さゆえの言い訳や、つまらない嘘をつくなど至らない点も目立つままではあるけれど、きっと遠くない将来、いい人間になるだろうと信じている。

そんな可愛い社員が、親会社から移籍してもらえないだろうかと評価をいただいて、二言返事でokをだした。嬉しかった。でも本音を言えば淋しくもある。

しかし、自分が思う一番の希望は本人の成長がみたい。立派になって数年経って頼りにされ、必要とされる姿がみたい。

そんな心境の中、夜に帰ってきた社員が目の前で正座し、「話を聞きました」と伝えてきた。
私は「そうかそうか、まぁええから風呂入ってゆっくり休めよ」と会話をしなかった。
目の前で正座して伝えてきた時点で、社員は涙ぐみながら話しかけてきた事、この一瞬で気持ちは伝わっている。なので、そんなに言葉を交わす必要はなく自分としては充分だった。

タイトルに「生きるかたち」とカッコつけてしまったけれど、実際にみんなそれぞれ生きるかたちは違う。目標があったり、理想の状態、欲しいもの、やりたい事など人それぞれでありいろんな思いがある。

でも個人的な欲望を持たず、今夜みたいにお酒に酔いながら、自分が育てた社員の巣立つ姿、目を赤くして話しかけてくる社員の姿を見るだけで、私は生きてるかたちに満足しています。
個人的な欲望よりも近くにいてくれている仲間が喜ぶ姿や希望を胸に抱く姿は最高のプレゼントです。

社員のA君、私にとってようやく自慢できる社員になりましたよ。ありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?